表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/123

第六話「はぐれ者の少女」.3

 彼女はこの先マフィアに狙われる。その答えに、アナトの顔はだんだん青くなる。


「どーすんのよ! あたし、狙われちゃう? こんな美少女売りに出すも飼殺すも好き放題! いやだぁ! そんな人生いやだぁ!」


 泣きじゃくるアナトだけど、それで問題は解決しない。むしろ、ここに留まっている方が悪化しかねない。

 隣では、マザー・コーエンがため息をつく。


「悪い子じゃないのよ。小さい子の面倒もよく見て、まじめに働いていた時だってあったの。でも昔からちょっと手癖が悪くてね。悪い子じゃないのよ?」

「二回も言わなくていい! 信憑性なくなるじゃない!」


 自称アイドル、と言っていたから、たぶん地域住民には愛されているのだろう。ボクは父さんと母さんしかいなかったから、こうした明るい子がどんな感じなのか、よくはわからない。

 ただ――。


『大丈夫。ボクが守るよ』

「ふぇっ!?」

「あら」


 二人からかなり驚かれた。ハンターナイトが一般市民を守ろうとするのは、そんなに不思議なのだろうか。


『ようやく帝国への繋がりができたんだ。君は誰にもやらない』

「あ、うん、そういうこと」

『ハンターナイトとしても、職務を全うして見せる』

「ああぁ……なんて純粋な狩人。稀に見るほどに潔白! 狩猟の神(エルハ・サイド)・ヴォーダン。狩猟の王(メレハ・サイド)・アイザーン。狩猟の剣士(セイフ・サイド)・ホルガ―。このものに祝福をお与えください」


 急にマザー・コーエンは祈り出した。アナトは少し不満げにしている。

 ともかく、彼女の存在がこれから重要だ。このリアクターコアを取り戻しに来るなら、それが帝国と繋がる情報源になる。彼女を助けた意義は、思った以上に大きい。


「まあ、そりゃ、誰かに『守ってやるよ』とか『お前は渡さない』って言われるのは乙女の願望と言いますか? 夢と言いますか? 妄想した覚えがないわけじゃないけど」

『どうかした、アナト』

「フィオガがその範囲かっていうと微妙なのよねぇ。ていうか君、ずっとスルーしてきたけど本当にどっち? ボクってどっち? 私トキメイていいの? それとも新境地拓いていいの?」

『何の話?』


 若干アナトの目が怖い。その頭をマザー・コーエンがはたく。


「今あなたの性癖を議論している場合じゃないの。さすがにハンターナイト教会に直接ぶっ込んでくる馬鹿はいないと――」

「――ッ! ッガ!」


 文字を打っている暇はない。声が出せないことがこんなに不便だなんて、初めて感じた。コンゴーは助ける必要がなかったし、自分ひとりであれば避ければいい。

 けれど、誰かを守るのは、簡単じゃない。

 教会の窓の外。そこに見えた投擲物。何が投げ込まれようとしているのかはわからないなら、とにかく優先すべきは、二人の安全だ。


 ――レイハガナ、起動(ウェイク)



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ