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第五話「新米ハンター」.2

 端末の前に座り、アナログな物理キーを入力していく。クワハウの技術ではほとんどが投影ディスプレイと電子パネルだったから、なんだか新鮮に思える。


「おいおい、こんなちっちゃなガキが、教会に、一人でお使いか?」

「マザーがここに連れてきたってことは、まだ新人だろ? 俺たちがいろいろ教えてやろうか? 困ってないか、おチビちゃん」


 ボクより頭一つ、二つほど大きな男たちが、左右から覗き込んでくる。呼吸器をつけておけばよかった。汗と脂と血の匂いが鼻につく。


「おいおい無視するなよ。おじさんたちがおチビちゃんに親切にしてあげようって言ってんのにさぁ」


 ちらりと、そちらを見る。

 片方はやせ型、頭二つ分は背が高い。多分顔立ちは整ったほうだろう。父さんほどじゃない。紳士的な風を装っているけれど、ガラの悪さは隠せていない。

 もう一方はボクの二倍はある横幅と、背丈は頭一つ分も差はない。ふくよかな体形で人のよさそうな笑みを浮かべているが、可愛げは足りない。

 二人とも似たようなアーマーを装備し、腰には銃器も携帯している。アーマー内の小型アンブロス・ジェネレーターからエネルギー供給がされる、軍でも正式採用されているもの。

 見た目より、案外儲かっているのか。それとも横流し品でも手に入れたのか。鋭いサングラスから覗く目は、獣の目だ。


「この街の奴らは俺たちほど親切じゃねーぜ。おい聞いてんのかガキ!」

「おうおう、相棒、カッカすんなって。緊張しているだけさ……このお嬢ちゃんも。お嬢ちゃん? お坊ちゃん?」


 はぁ、とため息をつく。左腕のガントレットを、右手で操作する。


『喋れないから文字で失礼するね。これと言って特に困ってもないし手伝ってほしいこともないから、行っていいよ』


 言葉で返せれば手間じゃないんだろうけれど、ボクの場合は腕は二本しかない。この文章を書いてる間、検索が止まってしまう。

 レイハガナと繋がっているときのホチャーみたいに、思考で会話ができればいいのに。


「そんな緊張で声も出せねえ新米ハンターが、一人でなんて余計見捨てちゃおけねぇな」

「まずは礼儀から学ぶもんだぜガキんちょ。社会人の常識ってやつを、教えてやるぜ!」


 後方から迫りくる拳。ホチャーが警戒を発するまでもなかった。


 ――そして。


「「ほ、本当に、すいませんでした!」」

『これからは、新人からお金を奪おうなんて思っちゃだめだよ』

「肝に銘じます!」

「どうか、この辺りで勘弁を!」


 トレードマークであっただろうお揃いのサングラス以外、二人の顔に無事な部分がない。もっとも、そうしたのはボクなのだけれど。

 ハンターナイト教会の庭先に転がった大の男二人が、手足をついて首を垂れた。


『わかった。ところで、二人はこの星には詳しいんだよね?』

「ええっ! もちろんでございます!」

「その……お坊ちゃん、いえ、お嬢ちゃんは、どうしてこの星に?」

『帝国に協力しているスペースパイレーツを探している』

「そいつはまたァ、何ともあぶねェ橋を渡る気で」


 アーマーを装着していたとしても、生身で勝てないわけではない。二人の来ているアーマーは、頭部以外を覆った標準型。ここにヘルメットやマスクを装着することで、正規軍は宇宙空間でも活動できる。

 アーマーガンナーはこの上位版であり、より大型かつ高機能なものとして開発された。


『まだ名乗ってもいなかったね。フィオガ・クワハウ、地球人型だよ』

「俺ァ、ヤージと申します」

「俺はキッハーであります」


 小さい太いほうがヤージ、細く長いほうがキッハーだ。


『そう。よろしく』


 小さく微笑んでみると、二人は震えながら頭を下げた。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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