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第三十三話「獣の狩人」.3


 ドヘネットCの情勢は落ち着いていた。

 行政府区画を占領したアルヴァス人たちではあるけれど、特に何か声明を発表するわけでもなく、ただそこにいるだけ。行政機能や議会は停止してしまっているが、市民に大きな影響があるわけではない。

 デパートも銀行も、電気も水道も問題なく機能してれば、市民は行政が停止していてもすぐに問題が起きるわけではないのだ。


『銀河帝国ドヘネットCドヘイディア行政府へ。惑星オクヌス先住民アルヴァより、そなたらへの要求を伝える。我らは帝国の者たちをここに住まうことを拒みはしない。だがこれ以上の星の開拓を望まない。そして遺跡に触れず、残すのであれば口出しをしない』


 それが、アルヴァス人からドヘネットC行政府へ出された唯一の声明だ。

 アルヴァス人たちが示したものは、現状の維持。住処を追われることさえなければ彼らは決して反撃しない。

 自分たちの住処が帝国によって脅かされかけた現状を鑑みて、ルミスの両親が呼びかけた。そしてガイドーを倒した今、クワハウの遺産を積極的に狙う軍人はこの星系にいない。

 しばらく静かな時を過ごせるだろう。


『けど、クワハウの遺産を狙うのはガイドーだけじゃない。古代文明に詳しければ、誰だって欲しがる力が、今ここに実証されている』


 ドヘネットCの大気圏にスフィナハザークが降りていく。人工ではない重力に体が引っ張られていく。

 森、砂漠、海の広がる星にポツンと存在する首都。わずかに煙が立ち込めており、いまだ吹き飛ばした建物や爆発のあとは残っている。


「……フィオガ! 帝国軍の通信を傍受したわ。惑星の裏側から脱出しているみたい」

『逃げたいのなら逃がしてやればいいよ。ボクは別に帝国軍を壊滅させたいわけじゃないし』

「うん。でも……なんか、言ってることが変なの」


 そう呟いた彼女は、通信をオープンにする。


『こちら派遣艦隊。閣下のシャトルを回収完了』

『地上基地から脱出した部隊も回収完了しました! いつでも離脱可能です』


 ――閣下?


「この星系で閣下と呼ばれるヒトは、ガイドー以外にはいないはずよね。どういうこと?」

〈誰かが視察に来ておったのか?〉

 ――違う。


 全身に血が駆け巡るような気がする。操縦桿のないディスクに手をかざし、船の軌道を変更する。


「フィオガ!?」

『ガイドーだ。あの艦隊に居なかったんだ!』


 まだ、あいつは死んでいない。旗艦に移動した後、治療が必要だと医療船に移って艦隊を離れていたのか。それとも着弾直前で短距離ワープを行ったのか。

 理由はどちらでもいい。

 あいつの首を、この手に掲げる機会がまだ残っていた。


 ――まだ、あいつとの戦いが続けられる!


 溢れ出す闘争本能が、脳裏を支配していた。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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