第三十三話「獣の狩人」.2
惑星ドヘネットC――オクヌスへ向かう時、銀河帝国の広域放送を受信した。
「帝国側も、連邦と似たようなエンタメだったり、スキャンダルだったりでニュースって埋ってるんだね。……どうでもいい話ばかり」
〈そなたらのこの文化は尊重するが、他人の不幸を嘲笑って金を稼ぐのは理解できんの〉
「人って文化が進めば進むほど心が荒むみたいだから。アルヴァス人たちは、そのあたりとは無縁そうだけど」
〈ある程度文明化から離れることは、むしろ楽な生き方なのかもしれんの〉
この星で起こったことが伝わるには、まだ少し時間がかかるはず。いくらワープ航法や量子通信が普及しても、若干のラグは残る。
少なくとも、銀河帝国の提督であるガイドーが襲撃され戦士したのだ。帝国側は連邦側の攻撃と判断するだろう。ガイドーは連邦内では広域指名手配の重罪人だ。
たとえガイドーの死を公表したとしても、連邦側に情勢有利と伝えるだけ。士気を高めてやるだけだ。
「あー、でもガイドーの首がないから、ハンターナイト教会からは報奨金がでないよね?」
『さすがにあの状況で首を確保できないし、別にお金が欲しくてハンターナイトになったわけでもないからね』
「まぁ、最強の戦艦まで手に入れちゃったわけだものね」
ガッソー、ガイドー、クロビアン人のスペースパイレーツを立て続けに倒した。あとは、彼らに協力していた帝国、連邦の政府関係者が残っている。
それでも、ガイドーほど重要な存在じゃない。多くの人間の思惑が重なり、その実行役にガイドーが選ばれた。
彼がそもそもクワハウ文明の研究者だったことも理由だろう。
「あ、ガッソーのことが帝国でもニュースになってる。ガッソーも帝国の軍人だったの?」
『あいつも、ガイドーみたいな扱いだったんだ』
「えっとね、帝国私掠艦隊ガッソー中佐が連邦領内にてクワハウ文明の調査中、ハンターナイトの襲撃を受けて拘束された模様。連邦警察は現在ガッソー中佐の安否を明らかにしておらず、襲撃したハンターナイトについても詳細を公表しておりません……だって」
帝国側からしたら、ガッソーもガイドーもスペースパイレーツではなく、自国の軍人だ。
あのような者たちでも、慕う部下や民衆がいたのだろうか。
私掠船は、戦乱の時代では英雄として扱われるのだと、コンゴーのコレクションで見た。
地球人も、銀河開拓時代の今も、そう言ったヒト種の感性に代わりはないらしい。
「銀河帝国軍はガッソー中佐の引き渡しを要求するものの、現在のところ回答はない……」
――戦火が広がろうとしているのか。
ボクは、これから何をするべきか。
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