第三十一話「艦隊出撃」.4
クワハウ人の機械は、現在では銀河標準規格で造られているものが多く、タウホチャー号も素材や内部の機械こそクワハウの特注だが、操縦桿や一般的な部分は標準規格に合わせてある。
だが、この箱舟はそうではない。
『艦船名:スフィナハザーク、ダブル・アクシャハラ・リアクタージェット。甲板部三連装衝撃砲、二門準備完了。各種攻撃システム、正常』
〈船内には広大な輸送能力を持ち合わせておると同時に、戦闘艦としても遜色ないものになっておるの〉
『うん、ホチャーの分析の意味がよくわかる』
特にレバーはない。代わりに思念伝達システムが完備されており、ボクの生体融合金属と反応している。おそらく、この船の半分は同じ金属だろう。
だからこそ、こちらからのアクセスは、物理的に接触さえすれば容易だった。
『ホチャー、システムの解析は?』
【発進システムの完全掌握完了。そちらへ送っておきます】
ホチャーからシステムの詳細が送られてくると、艦橋の中央の席へ座る。座席の前にある黒曜石のような端末へ触れる。
それはこの地下ドッグのシステムにも繋がっており、地上へ到達するための経路が表示された。
『ルミス、全員に席に着くか、待機所に移動するように伝えて。この船を今から動かす』
〈もう発進できるのか!? 総員席に座れ。席のない者は居住区で待機せよ〉
通信機の向こうにいるアルヴァス人たちが急いで動き出す。ボクは船の全体へエネルギーを行き渡らせる。二つのリアクターを起動させ、同時に船体を固定しているガントリーロックを解除する。
わずかに船体が上方を向き、同時に艦前方のシャッターが開いていく。
地上へ続く道ができた。
〈アナトとの合流はどうする? 彼女はまだ戻ってきてはおらんぞ〉
『地上に出てから拾い上げる。彼女の位地はトレースしているから問題ない。回収しだい、一気に大気圏を突破する』
出発準備、完了。
エンジン出力安定、進路クリア。全武装火器起動完了。
タウホチャー号とは違う、重厚な機動音がノズルを震わせる。ランディングギアを格納。すると同時に左右電子カタパルトにより船体が加速。同時に下方コンベアが稼働する。
最後のシャッターが開くと、差し込んできた西日に目を細める。
〈全員体を固定せよ。ふっ飛ぶぞ!〉
――スフィナハザーク、発進。
展開した翼から反重力フィールドを展開、紫色の光を放ちながら浮かび上がる。
ドヘイディアから数キロ。小高い丘の側面に開けたハッチから、スフィナハザークが飛び立った。
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