第三十一話「艦隊出撃」.3
ドヘネットC首都ドヘイディア。
その地下に広がるクワハウ人の遺跡の中に存在した、高速戦艦。
【こちらでアクセス権限は解析完了しています。後は物理的接触によって接続できれば、起動可能です】
『じゃあ、もう一度地下に潜らないと。急いで』
〈……だが、敵は帝国の艦隊であろう。勝てるのか、クワハウの船とはいえ〉
その質問に、ボクもホチャーも答えられなかった。あの船が、どこまで動くかわからないからだ。
少なくとも、タウホチャー号は逃げ回ることで地上に辿り着けた。だが今度は、艦隊に対して打って出る必要がある。
『とにかく動かしてみてから確かめよう。ルミス、一緒に来て』
簡易ベッドから降りたボクは、ルミスに肩を貸されながら立ち上がる。ディスプレイに地図を表示させる。あの箱舟へと辿り着くための道順がわかる。
〈それと、アナトより預かっておった、リアクターコア。渡し忘れるところであった〉
『あ、これ……父さんたちの……』
受け取ったリアクターコアの耀きは、コンゴーから貰ったものや、見つけた者よりかはあまりよくない。けれど、間違いなく十年前に見た輝きだった。
あの日奪われたものを一つ、取り戻したんだ。
両手で握って、ぎゅっと胸に抱く。
――声は、未だに出ないけれど。
〈どうやら、お目当てのもので間違いないようだの〉
『うん。おかげでさっきよりずっと元気になってきた!』
胸部のレイハガナの発生器の下に、父さんたちのリアクターコアを格納する。エネルギー抽出量はさほど高くないから使っても意味はない。
けれど、これを取り戻したことに意味がある。
〈アナトが戻ってくるまで少々時間が掛かろう。その間に船を動かす手配を付けねばな〉
『うん、ホチャー、アクセス準備を』
【承知しました!】
それからビル周辺のアルヴァス人を全員連れて、ボクらは地下へと向かう。
クワハウと関わりなき者は、遺跡の表層を。
アムリット・エンジンを持つ者は中層を。
そしてアクシャハラ・リアクターを持つ者は箱舟へと辿り着く。
〈皆もこの箱舟には言葉を失っておるようだの。さっそく動かす準備を始めぬとな。お主ら、呆けてないで中へ行くぞ。整備はある程度進んでおろう〉
初めてここへ来た時点で、周囲のメンテナンスロボットたちは起動させておいた。それから数日放置した結果、外見上問題はない。
『準備完了次第。発進だ』
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