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第三十一話「艦隊出撃」.1



 目を覚ました時、ボクは見知らぬ部屋にいた。

 かつては多くの幹部が詰めていたであろう会議場。その机の上にマットが敷かれて、その上に寝かされていた。

 アルヴァス人たちによって制圧されたビルは、今や野戦病院と化していた。

 眼球を左右に動かすと、負傷したアルヴァス人たちが治療を受けているのが見えた。


 ――あれから、どれくらい……。

〈おお、起きたかフィオガ。意外と早く起きたの〉

 ――ルミス。

〈点滴を打つためにガントレットを外した。指が空を泳いでおるぞ〉


 ルミスの差し出したガントレットをボクは装着する。ふと、自分が寝転がっているにしては、ルミスの体が近いように感じた。


〈あまり動くでない。アムリタの恩恵が、そなたを癒しておるのだからな〉

『なんか、顔がひんやりするのと、後頭部があったかい』

〈そなた、倒れた瞬間吐血した上に鼻血を流して倒れおったのだぞ。どれほどわらわたちが焦ったと思うておる〉

『ごめんなさい』


 それほどまでに、大きな負荷を受けたということだろう。血を吐いたのは叫んだせいだとして、思った以上にレイハガナの操作に神経をすり減らしたらしい。


〈アムリタは大地の恩恵。我らもまた大地の賜物。崩れ、壊れかけた体を癒し整える〉

『手に取ったそれが、アムリタだよね』


 ルミスの指に、金色の粘液が付いている。それをそっと花の当たりに塗ると、少し鉄っぽい匂いがする。ザハクという爬虫類から採れる以上、これは血液か体液なのだろう。

 ひんやりとしたそれは鼻から体の中に入り込む。首元にも塗られて、ひりひり痛んでいた喉が和らいでいく。


 ――すごい、楽になった。

〈その様子だと、アムリタのこのような使い方は知らなかったようだの〉

『うん。単なる燃料だと思ってた』


 ボクの顔を覗き込むルミスの顔は、上下がさかさまだ。彼女は後頭部の側にいるのだから当然だ。

 そのことにボクは、あれもしかして、と体を起こしかける。


〈まだ楽にしておれ。精神的疲労も肉体的疲労も、油断すれば命に係わる〉


 強制的に、彼女に枕へ戻された。

 その枕とやらは、彼女の膝、もしくは太ももだ。

 後頭部の感じる暖かさの正体に気づくと、なんだか気恥ずかしくなる。彼女は何も思っていないからこそ、自覚した自分が恥ずかしい。簡単に寝返りも打てない状況では、寝るに寝れない。


〈ガイドーは退け、このビルは制圧した。先ほど下のアナトから、研究所でリアクターコアの確保と、資料の破壊が完了したとも連絡があった〉

『ボクが倒れてから、何時間?』

〈たったほんの一時間程度よ。アナトは逃亡したスペースパイレーツを、他の者たちと一緒に追っておる。心配するな、複数の道を使って監視しておるゆえ、待ち伏せや返り討ちの心配はない〉

『そっか。一時間……』


 もっとレイハガナをうまく扱えないといけない。自分の実力不足を痛感しながら、ボクは指を走らせる。


『街は?』

〈静まり返っておる。民政議会とやらとは、我が父をはじめとした族長たちが交渉を行っておる故、お主は案ずる必要はない〉

『そっか。それなら――』

【フィオガ、起きていますね!】


 大丈夫かな、と書きかけたところで、ホチャーの声が聞こえた。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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