第三十話「地上戦集結」.4
辿り着いた部屋には、多数のアクシャハラ・リアクターの実験機と、多数の研究員たちが存在した。帝国人だけではなく、多種多様な種族の研究員もそこに在籍し、奥の扉の先には輝きが鈍いが、アクシャハラ・リアクターと思われるものがある。
「これが、フィオガのご両親のリアクターコア」
【回収しましょう。フィオガは現在ガイドーと交戦中で、こちらでやるしかありません】
「う、うん。わかった。このケースに入れればいいんだよね?」
【はい。お願いします】
ホチャーからの指示に従い、アナトはリアクターを停止させ、アルヴァス人たちによって斬り捨てられた扉を跨いで燃料室に入る。そしてケースを開いて前に突き出すと、内部のアームが自動でリアクターコアを掴んだ。
「……こんなにあっさりで、いいの?」
【リアクターコアが起動状態ではないので、安全性は担保されています。アンブロス・ジェネレーターの場合は燃料の原石がつねに高熱と微量な放射線を放ちますので、密閉措置が必要です。ですがリアクターコアは異次元からエネルギーを取り出す関係上、起動していなければあなたの持っている石ころと変わりませんよ】
「そっか」
ヴァーグスで手に入れたリアクターコアは、今もアナトが持っている。エネルギーを取り出すには粗悪品で、宝石的価値もない、ガラスの塊のようなもの。ならば、難の危険性もなく回収可能だ。
周りでは警報が鳴り響き、警告灯が輝くが、アルヴァス人たちは知ったこっちゃないと言わんばかりに弓で貫き、剣で切る。頼もしすぎる護衛に、少々拍子抜けしてしまうほどだった。
「ホチャー、フィオガはどう?」
【少々苦戦しています。相手の戦闘経験が培った実力は、確かに本物です。ですが、フィオガの修業の日々だって負けてはいません。高度サポートに入ります】
ホチャーの情報処理がフィオガに集中する。こちらの援護より、フィオガのサポートが必要だと判断したのだろう。
「急いで研究データの破棄を進めないと……」
アナトは自身のフィールド発生装置から端末を施設のコンピュータにつなげると、表示されたディスプレイを操作する。事前に準備していた情報削除用のプログラムを流すと、それが施設全体に一気に広がっていく。
アクシャハラ・リアクターを応用したファイアウォールは、リアクターの停止に伴い消滅。流し込まれたプログラムは一気にアクシャハラ・リアクター関連データを食いつぶしていく。
「人間の脳内は破壊できなくても、これでデータは破壊できたね」
【施設内データの閲覧および特定情報の削除を確認。物理データの破壊に移行してください】
タウホチャー号からの機械的な通信を聞き届けたアナトは、研究室全体を見渡すと、いくつかの爆弾を取り出した。アムリット・エンジンに使われる『黄金の水』をため込んだ液体爆弾。
栄養満点の水は、多少の処理を施すだけで爆炎を撒き散らす。
「これで、終わり!」
燃え盛る黄金の色が、施設のデータを、書類を全て燃やす。
これで、帝国のリアクター研究は止まる。
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