第四話「光の防具」.2
「――ッッ!!」
わずかに、呼吸器から息が漏れる。アーマードガンナーの中でカッと目を見開いたフィオガの中で、撃鉄が降りるイメージが流れた。
それこそが、この収束次元砲発射の合図。
紫の光が空を切り裂き、スペースパイレーツの母艦を掠めた。
――外した。意外と反動でぶれる。
肉食獣の咆哮が、宇宙空間に響く。音として届かなくても、アクシャハラ・リアクターの発するエネルギーを通して、敵船へと到達する。
アクシャハラ・リアクターは、従来の核融合炉のような大型なものとも違い、高重力式縮退炉ほど複雑でもない。
しかし、生成エネルギー量はその小型さに対して後者と同等。
異次元空間へ通じるワームホールから放出されるエネルギーを回収し利用するため、半永久的に稼働することも可能。
――母さんたちが、世界を変える研究だと思ったわけだ。
従来の動力炉の概念を軽く凌駕するこのリアクター。供給されるエネルギーを砲弾へと変えれば、命中個所を――たとえ掠っただけでも――抉り取って消滅させる。
「な、なにが起きた!?」
「左舷に被弾! 被弾箇所のダメージコントロール、不可能! 被弾箇所が……消滅している……」
「対消滅砲弾でも喰らったってのか!? だとしても弾速が速すぎる! 光学フィールド装甲が防げないはずがないだろ!」
「チゲェ、中間子も中性子も反応がない。対消滅なんてレベルじゃねぇ!」
「こんなはぐれ船がなんでこんな火力を持ってんだ!?
スペースパイレーツたちの阿鼻叫喚が聞こえる。けれど、仕掛けてきたのはそちらだ。
恨まれる筋合いもないし、命乞いする権利もない。悔やまれるべきは宇宙海賊自身が選んだ道だ。
【マスター。敵船の後退を確認。追撃しますか?】
『追撃する。プラズマジェットを破壊して機動力を奪う。そのまま、ハンターナイト教会への手土産にしよう』
【承知しました!】
ホチャーが景気よく答えた。これからハンターナイト教会で名を売り、情報を得ていく必要があるなら、派手に狩人デビューを飾りたい。
ただ――。
『《アクハト》はしばらく使わないようにしよう。悪目立ちが過ぎる』
【確認しました。生成弾頭をプラズマビームへ変更しておきます】
『お願い。警戒されたくないから、あの船も適度に壊して隠しておこう』
スペースパイレーツ側からしてみればとんでもなく恐ろしい会話をしているだろうが、こちらの声は届いていない。
クワハウのスペースシップにもアクシャハラ・リアクターは搭載されており、逃げようとしていたスペースパイレーツの後方にすぐに追いついた。
『アンカーを出して。鹵獲して、連れて行こう』
船体に突き刺したアンカーから、接触回線で声が聞こえる。
選んだ道が間違っていたと、今更気づいてももう遅い。
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