第三十話「地上戦集結」.1
立ち上る砂煙が、風に乗って吹き飛んでいく。
倒れたままのクロビアン人ガイドーは、日向ぼっこするワニのように口を若干開いて動かない。アクハトの近距離照射は間違いなくアクシャハラ・リアクターを飽和させ、全身にダメージを与えた。
地面を濡らす赤い流血は、クロビアン人のものだ。
「カッ! ――、――……」
これで、終わる、ようやく……。
声は、あいかわらず出ない。アクハトの放出と、その余波の防御でこちらのアクシャハラ・リアクターもオーバーヒート。
アナトのフィールドにはタウホチャー号からホチャーが供給してくれているはず。
『ホチャー、アナトの様子は?』
返答が来ない。ホチャーとの通信が途切れている。リアクター同士の干渉波が、奇妙な電磁場を形成したのか。それともホチャーに何かあったのか。
いや、それはない。
『まだ生きているか、クロビアン人ガイドー』
「うぅあ、へへへ、生きているさ」
うめき声を上げながら、わずかに体を起こす。装備していたアーマーは焼け焦げ、溶けた装甲材が肉を焼いている。
背部のウィングユニットは崩壊している。先ほどまでの機動力は発揮できない。
もう、逃げることはできないだろう。
『これで、おしまいだ』
左手に握ったプレートブレードを向けながら、文字を入力する。
ガイドーからの答えはない。各所が焼けていて傷の具合はよくわからないが、決して無事というわけではないだろう。
「俺を、やれば、その声が戻るか?」
「――ッ!」
――こいつ!
両腕のアンブロス・ジェネレーターを活性化する。刃に光が宿り、ただの鉄板から溶断の刃へと変わる。
「知りたいか? 連邦の、裏切り者」
「――――!」
振り下ろそうとした刃を、頭上で止める。その様子を見て、ガイドーは笑みを浮かべた。やはり、とでも言いたげだ。
「俺があの日、お前の船を襲えたのは、偶然でも、突発でもない。周到に用意された計画の上さ」
「……ッ、ッ」
予想した通りだった。連邦政府が関わっていなければ、あの船を襲うことはできなかった。その考えに間違いはない。なら、問題はそれが誰だったか。
その情報を持っているのは、こいつだけ。
「――ッ!」
「答えて、やろうか?」
声が出せないのがもどかしくてしょうがなかった。先ほどアクハトの名を叫んだ時のようにはいかない。ただ必死に、焦る心を抑えて指を走らせる。
『答えろ、誰だ? 誰がお前たちに情報を流し、護衛を解かせた』
ただ情報を与えるだけでは、ガイドーは船に近づけない。二人は連邦軍の部隊が護衛に付く、保護対象だった。
いくらスペースパイレーツだからと言っても、船一隻で連邦軍の正規部隊の護衛艦を複数相手にすることはできない。船の能力自体に、さほど大きな差がないからだ。
『なんで、二人が死ななくちゃいけなかった!』
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