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第二十九話「決死の一撃を」.4


 ボクの目の前に、クロビアン人の大きく太い腕が迫る。


「はぁっ!!」

「――ンッ、ゥ……」


 展開した光学防壁越しでも、衝撃が伝わってくる。発勁、ホプキンソン効果(密着爆発)、アクシャハラ・フィールドといえども防ぎきれないものはある。

 光学防壁の圧力を超えられる威力があれば、装甲にまで攻撃は届いてしまう。


「これが、ARMSの真髄だ。フィールドの防御に頼る素人には、ちょっときついかな」

『アクハトを喰らって、フィールドを喪失しているのに、決め手欠いている。ルミスの奇襲も二度目は利かないか』

〈フィオガ、間もなく奴のフィールドが再生成されるはず。ならば今一度アムリットの矢を撃ち込んで動きを阻害してくれよう〉


 跳弾、再加速すら可能なアルヴァスの矢であれば、アクシャハラ・フィールドの特性を逆利用して、動きを阻害できる。


『ホチャー、あいつの動きの解析は?』

【現在九十パーセント。反撃開始、可能!】

「作戦会議は終了か? なら、こちらからやらせてもらうぜ!」


 ガイドーの取り出した二丁拳銃が火を噴いた。展開した光学防壁が受け止め、ドヘネックが飛び立つ時間を稼ぐ。ルミス以外のアルヴァスたちは周囲の帝国兵を抑えてもらっている。

 物量では圧倒的に帝国が勝っている。なら、このわずかな時間で勝つために全力を尽くすのが、ボクの役目なんだ。


『ルミスは接近する援軍の迎撃へ。あとは、ボクの戦いだ!』

〈無理するでないぞ。――と言いたいところだが、うぬの勝利が必要だ。頼むぞ〉


 タウホチャー号が放っている探査ビーコンには、近づきつつある駐留軍の姿があった。航空戦力は、地上で戦うアルヴァス人にとって脅威だ。

 周りを全て任せて、意識をガイドーへ集中する。

 光学防壁を展開したまま、銃口へと突っ込む。


「――ッ!」

「ダッ!」


 突き出した左腕のブレード。その刃を、銃のグリップで両側から挟むことで受け止める。まさかの対応に、ボクの動きが止まる。

 とっさにブレードをパージ。投げ捨てられたブレードは地面を転がり、向けられた銃口の内部でエネルギーが発生し始めた。


【今です!】


 ホチャーの声に合わせて、振り上げた右腕が二つの銃を弾く。直後発射された左肩のプラズマキャノンが、ガイドーの右頬をかすめた。

 送られてくるホチャーからの予測情報に、体が反応する。


「なんだ、動きが……」

『クワハウの技術は、お前が使うためにあるものじゃない』


 振りかぶられた拳に、より速い拳をぶつけて止める。衝撃を逃がすことができない肩をきしませ、クロビアン人特有の牙が並んだ口が歪む。


『礼を言うよ、ガイドー。あんたたちのおかげで、ボクはアーマーガンナーでの戦い方を学んでいる』

「訓練生に毛の生えたド素人が……!」


 ガイドーの蹴り、肘、手刀。ホチャーのアシストが必要な時もあるが、だんだんと反応が追いついていく。レイハガナから送られてくる情報が脳内で駆けまわり、気分が高揚していく。

 クワハウの闘争本能が、ボクの動きを加速する。


『お前を倒し、クワハウの技術は全て取り戻す!』

「見つけた技術を再利用しているだけだっていうのに、ずいぶんと酷い言い草だな!」

『お前が、父さんと母さんから奪った力だ!』

「海賊だからな!」


 突き出したお互いの拳が、お互いの胸部を殴打する。衝撃は中にいるボクにまで届き、レイハガナの中で血を吐き出す。歯を食いしばり、痛みに耐え、動きが止まった状況でなお、最期の一撃を放つ。


「アク、ハ……トォォォッ!!」


 レイハガナの中に声が響く。何年ぶりにかに聞いた、自分の声。

 同時に放たれた紫の光は、ガイドーの体に吸い込まれるように命中する。

 すでに復活していたアクシャハラ・フィールドを貫き、その肉を抉る。

 同時にレイハガナの機能に異常が出た。膝を付き、リアクターの活性化率が落ちる。


 ――理由は後回しだ。今は、ガイドーを……。


 ハッチを開け、地面に降りる。周りの喧騒はまだ止んでいない。視界が少し霞んでいるが、まだ歩ける。

 落ちていたプレートブレードを拾い上げながら、倒れたガイドーの下へと歩き出した。




少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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