第二十九話「決死の一撃を」.1
アクハト――収束次元砲がアクシャハラ・フィールドを吹き飛ばす。防御エネルギーを攻撃に変換して結果発生した光の奔流は、同種のエネルギー以外には防げない。
つまり、それはアクシャハラ・フィールドへの最も有効な武器であることの照明だ。
ガイドーの命中個所に向かって宇宙がわずかに縮小。その勢いで周りの瓦礫や土埃が集まり、ぶつかり合ってはじけ合う。火を伴わない爆発でありながら、周囲のビルのガラスが砕け散った。
『あの日、瓦礫の下にいたボクに、お前は言ったよな』
――がんばれ。
その言葉を、ずっとボクは覚えていた。カラカラと周りに砕けたガラスの音が響く中で、ボクはアクハトの目に言葉を映し続ける。
『がんばったよ。お前を倒すために特訓して、武器の扱いを覚えて、ヴァーグスでお前の友達を捕まえて、ここまで来た』
「これがぁ……真正のクワハウの力か。継承者、ずるいなぁ」
その声は、吹き飛ばしたガイドーがいる土煙の中から聞こえた。
殺せていない。放熱するアクハトに再度射撃エネルギーをチャージする。同時に左腕に装備していたブレードにアンブロス・ジェネレーターからエネルギーを供給すると、まだ立ち込める土煙の中に突撃する。
「同じ土俵で戦ってほしいものだよ」
――ッ!
ガイドーは、ガッソーと同じく対アーマーガンナー戦術を熟知していた。アーマー・リペル・マーシャル・スタイル――通称ARMS。こちらの武器を片手でいなしながらその勢いを利用して投げ飛ばす。
確か、この戦闘方法は地球人も一部関わっているらしい。
生身の地球人でも、アーマーガンナーの弱点を突くことで倒せるようにと。
『それは、学習済みだ』
手足に生身が通っていないからこそできる動きがある。
腰を百八十度回転することで難なく着地し、投げられた勢いで距離をとりつつプラズマキャノンを発射する。高出力アクシャハラ・フィールドに対し、唯一攻撃可能な光学兵器。
光の弾頭が空気を押しのけて飛んでいく。
ARMSはあくまでアーマーガンナーとの格闘を想定している。プラズマキャノンは発射前に移動することで回避されたが、距離が開けばこちらが有利だ。
「いつまでもお前の距離では戦わせんさ!」
『ホチャー、パワーアシスト!』
背中のウィングはまだ健在で、その加速力はボクのプラズマジェットに匹敵する。取っ組み合い状態に持っていかれ、射撃武器を封じられる。アクハトは至近距離にも強い武器だが、近すぎて射角が取れない。
「――ッ、アッ!」
「声はまだ出ない。あの頃と変わらないな、お前は!」
ガイドーの膝が入る。アクシャハラ・フィールド同士が干渉しあい、防御性能が低下していた。手を引き離すがガイドーはすぐに追ってくる。
ブレードの間合いは見切られ、むしろ殴り合おうと思ったら邪魔になる。
戦闘経験でははるかに差があることはわかっていた。だから、それを埋める手立てはただ一つ。
【敵攻撃パターン解析開始。防御に徹してください!】
仲間がいるかどうか。
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