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第2話 一昨日

「えっ、……………………別れる?」


半年間の集大成であるプロジェクトの完了報告を済ませた日の終業後、早耶に呼び出されていきなり告げられた。


「そっ、もう待てないの!」


何を言っているんだ、コイツは?

心底、そう思った。

プロジェクト開始からずっと、機密保持の関係もあって会えないし、会社支給のスマホしか使えずメールやチャットも制限され送信閲覧記録を提出させられるから、社内でも『普通の会話』しか出来ないとと何度も伝えていたのに。


早耶の隣には、同期の『チャラ男』。

名前を呼ぶのさえ汚らわしい男だ。


「……………………念の為に聞くが、どういうことだ?」


「どうもこうも無いわよ、私、関谷君と付き合う事にしたの!」


チャラ男こと関谷はプロジェクトメンバーに選ばれなかった事を逆恨みして、僕に妨害工作を仕掛けてきたほどの無能だ。

たしか、懲戒処分を受けたはずだ。

査問会で、『悪気はなかった、手伝ってやろうとしたのに拒否されたから独自に動いた。』等とほざいたにも関わらず、某重役の遠縁らしく停職処分だけで済んでしまったようだ。


「悪いな、砥部。早耶は貰ってくぞ。」


つまり、早耶を、『寝取った』んだな、コイツは。

ヘラヘラと、薄気味悪い喋り方で、挑発しているのだろう。


「……………………失せろ、関わりたくない。」


低い声で、睨みながら伝えると、


「お〜、怖っ!」


「砥部ちん、じゃあね〜バイバ〜イ?」


手を取りあって立ち去る二人を見送りながら、やっと手元に戻ってきた自分のスマホの電話帳を開いて、同期の桜井を呼び出した。



※※※※※※※※※※



「えっ、……………………別れる?」


半年間の集大成である、依頼作品のプロトタイプを送信して、クラウドと外付けハードディスクドライブにバックアップを済ませて、久しぶりに母と外食でもと思った矢先に、呼び出されて告げられた。


「そう、もう待ってられないよ!」


何を言っているんだ、コイツは?

心底、そう思った。


某大手からの依頼で、秘密保持契約を結んだ仕事をしているから契約期間の半年間は会えないし連絡も制限されると何度も何度もしつこく伝えていたのに!


彼の隣には、後輩の、美穂。

親友だと思っていたのは、私だけのようだ。

彼女は、私の『仕事』が何かを知っている。

友人知人含めて、公にしていない事も。

才能は、彼女の方が有ったと思う。

でも、努力して『仕事』を勝ち取ったのは私だった。


「悪いわね、由紀。俊君は貰ってくね?」


美穂は俊の腕を取り寄りかかりながら、悪い笑顔をしてきた。

そうか、私を妬んで、寝取ったのね。


「……………………消えて!もう顔も見たくないわ。」


「お〜、怖っ!」


「由紀ちん、じゃぁね〜バイバ~イ?」


俊を引き摺るように腕を取って立ち去る後ろ姿を眺めながら、従姉妹で編集者でもある結良に連絡を取るべくメール送信した。

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