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⑬ これからの話

 一連の騒動、その元凶であるゼンゼマン(エリス)一派を捕まえた。これで俺たちの旅は終わり。めでたしめでたし……と言いたいところだが、俺自身の問題は何も解決しなかった。


「おっ……あ、あ、貴方がアンゴ様ですか……何ともおぞまし……いえすごくご立派な方で……」


「ああ、うん……あんまり緊張しないでくれ」


「しっ、失礼しました! 申し訳ありません! 腹を切ってお詫びを!」


「ああもう! そういうのいいから! あとはティンテに任せた!」


「アンゴ!?」


 人魔最大の都市、ヴィン市長(ドラゴンの人魔)との会談もこんな調子で、歓待を受ける前に俺の方が逃げ出してしまう始末だ。

 元々の恐怖を煽る能力に加えて英雄扱いされるせいで、余計にみんなが恐縮してしまうようになってしまったのだ。人生とはままならない。


 街を凱旋し、ティンテから「人魔を救った英雄だ」と紹介されてもみな一様に顔が引きつっている。

 しまいには俺の方が音を上げて、前と同様深々と頭巾を被る生活に戻ってしまった。この能力が治るのと、俺が寿命で死ぬのとどっちが早いんだろうか……

 結局ライン神も俺の能力の消し方は教えてくれなかったが、そもそも消すことができないのかもしれない。


 とはいえこの能力を抱えたまま生きるのは辛すぎるので、能力を消す方法を探る旅を続けるしかない。

 「安住の地を見つける」という当初からの目的を達成するには前途多難のようだ。いっそ遊牧民みたいに旅自体を生活にした方がいいのだろうか……俺が留まるとみんな困るだろうしな。


 なおエリスはドライエード様とその配下、ヴォルフ、喜怒哀楽の勇者のうち、トオルを除いた3人が監視をすることになった。

 戦力としては過剰なくらいだが、また腐り手のような厄介な敵が現れる危険性も考慮してのことだ。

 またエリスの罪状が無期懲役と決まったわけでもなく、偉い人が集まって処遇を合議しているところらしい。最初は俺も合議に参加を求められたが、「恐怖の大王」のせいであまりに会議が進まないので結局辞退してしまった。

 まあ、人の命をどうこうするなんて気が重すぎるので、体よく逃げ出せて有り難いぐらいだが……


 ところで4人の勇者はてっきり元の世界に戻る方法を探したりするのかと思っていたが、案外こっちの世界に永住するつもりらしい。

 俺がライン神と会った話をナギにしたところ、「そんな人間くさい神様やし、元の世界に未練の無い人らを選んで転生させたんちゃう?」とのことだった。

 トオルやノエルのような社会不適合寄りの勇者はともかく、ナギやライトみたいなポジティブ系の人間が元の世界に未練が無いのは意外ではある。

 詳しく聞くことははばかられたが、ナギの口ぶりを聞く限り、彼女も元の世界で苦労していたようだ。


 俺も元の世界に未練は無いので帰るという選択肢は無いし、そもそも帰ったところで死ぬ直前からやり直される可能性もあるし。

 「恐怖の大王」とかいうクソスキルと付き合っていくのは険しい道のりだが、それを鑑みたうえでこの世界で生きていくしかないのだろう。


 そしてエリスが捕まった後の人戻会は改心して人魔への嫌がらせをやめた……かと思えば全然そんなことはなかった。

 「狂躁」で被害に遭った人や、直接被害には遭っていないが暴れる人魔の脅威を目の当たりした人など、人魔排斥派の数はむしろ増えてしまっている。エリス一派は厄介な宿題を残してくれたものだ。

 まあ、エリスたちが何もしてなくても人魔と人間の溝はたやすく埋められるものではない。

 人間だけが住むバント大陸と人魔の多く住むブゼン大陸、そして人間と人魔の融和が見られるナイキー大陸。これらすべてに通用する「国際法」のようなものを制定することができればいいのだが……

 元々この世界の出身でない俺があんまり首を突っ込むのもお節介なような気もするが、異なる視点を持つ俺がこの世界に住む人たちに貢献できれば……とは思っている。


 それが「恐怖の大王」というハズレスキルを持つ俺に優しくしてくれた人たちに対する恩返しに繋がることだろう。


 そんな壮大な恩返し計画も含め、これからのことを考えていきたい。相談する相手は……当然いつものメンバーだ。


「ティンテたちはこれからどうするんだ?」


「ん? そうだね……市長からまた会食に呼ばれてはいるが、アンゴが出席できないなら今夜は静かな小料理屋でゆっくりしようか。私も少し疲れてきたしね」


「いや、そんな直近の話じゃなくて、もっとこう将来的なビジョンをだな……」


「将来? ならわたしは子ども2人欲しいかも。できたらお世話焼いてくれる女の子がいいなあ」


「今度は遠い未来すぎる! しかもエーゲルお前、子どもに介護させるつもりなのか……」


 エーゲルの突拍子もない発言に思わずツッコんでしまったが、どうも話が噛み合わない。俺が言いたいのはそういう事じゃなく……


「じゃなくて、そもそも俺と一緒に来てくれるのかってことをだな……」


「逆にお伺いしたいのですが、わたくしたちにアンゴ様とご一緒しない選択肢があるとお思いですか? それともわたくしたちとは遊びだったということで?」


「いや、そういうわけじゃ……すまん」


 どうやらエーゲルもシャルフも俺と一緒に旅を続けるのは決定事項らしい。

 そしてティンテは……聞くまでもないか。なんか静かに頷いてるし。


「しかしどこへ向かおうかね。こんな能力の詳細を知ってる人間も人魔もほとんどいないだろうし」


「ライン神の神殿とか行ってみるのはどうでしょう?」


「そんなのあるのか!?」


「30箇所くらいはあるんじゃあないかな」


「多くない!?」


「アンゴくんの世界にはあんまり無かった? 神殿とか」


「いや……あったな神社。それこそ数え切れないくらいに」


 さあ目的地は決まった。これからも旅は続くのだ。長い長い旅になることを予感しながら、俺たちは一歩を踏み出した。

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