祖母との攻防戦
両親は私が中学一年生の時に離婚をし、母と私は、母方の実家で暮らすことに
なった。その時私はまだ祖母のことを何も分かっていなかった。数ヶ月経った頃
から認知症の初期症状が見え隠れし始めたのだ。まず、暴言だ。
見境なく暴言を吐く。祖父は大らかな性格のため受け流していたが、
私は今でも心に刻まれている。死ぬまで忘れることは決してないだろう。
そして、時間が経たないうちに被害妄想が始まった。お金が盗まれた、
泥棒がいる、全て挙げるときりがない。何回説明しても理解してもらえない。
数分後にはまた騒ぎの繰り返しで、誰も手に負えなかった。次第に時間感覚も
なくなり、夜中早朝関係なく暴言や被害妄想を吐く。
それと比例して私達の精神もすり減っていった。
行政に度々相談はしたが話が進むことはなかった。
それから年月が経ち、暴言、被害妄想は薄れていったが、祖母との攻防戦が
始まった。祖母はお風呂が大嫌いなので自ら入ろうとは決してしない。一ヶ月
入らないことなんて当たり前だ。祖父が一緒に入ろうと誘うも言葉巧みに
かわされるので無理やり入れるしか方法がなかったが、有り難いことに
暴れることはなかった。
お風呂問題が解決し始めると今度は、私が一番と言ってよい程衝撃を受けた
トイレ問題。水を流さない、使用済みトイレットペーパーを床に放置、
トイレから出て数秒後にまた入るなどがあったが、これらはなんとか許容できた。
いや、無理やり許容させた。解決策を見つけられずにいたある朝、トイレに
行くとびちょびちょに濡れたトイレットペーパーが床に置いてあった。
それは、とても大きく、何かを包んでいるようで嫌な予感がし、勘違いであって
ほしいと願ったがその願いも虚しく消えた…。どうやら汚物をトイレの中から
取り出しトイレットペーパーで包んだようだ。
せめてそのままにしていてくれたら…。この出来事から数日後似たようなことが
また起こった。自室から出ると二階まで異臭が漂っており、一階床に茶色いものが
あちらこちらに見えた。悲劇としか言いようがない。すぐ家族総出で大掃除。
汚れも匂いも消えたと思った矢先、匂いが再来し、匂いの元を辿るとなんと祖母のズボンと下着。
それは見るに絶えないほど酷かった。すぐさまお風呂へ連行。
これ以上のことは未だ起こっていなく安堵しているが解決には至っていない。
止まることを知らないので次の冷蔵庫開けっぱなし問題へ。
用がなくても冷蔵庫を開けてそのままだったり、冷蔵庫内の食材を
食べ散らかしたりも始まった。食材が駄目になってしまうので、気づいたらすぐに
閉めるようにしていたが祖父の耳には警告音は届かない。そして冷蔵庫の構造上、
冷蔵庫を斜めにすることはできない。そこで取っ手と隣にある家電置きの柱を
pp紐で結んでみると、冷蔵庫は開けられなくなったが冷凍庫の箱アイスを
食べ散らかされてしまった。
まさか隠していた季節限定アイスを食べられるとは…。次の日にはハサミで
pp紐を切られたので作戦を変更してストッパーをつけると開かないと分かった
ようで諦めてくれた。冷蔵庫の食材を守ることができた。
後、水道、電気、ガスや炊飯器問題も。炊飯器は今実験中で成功するか
失敗するか結果が楽しみであるが、その他は未だ解決策が思いつかないでいる。
早急に対策を考えることが今の課題だ。
そして、いつまで続くか分からないこの攻防戦に全力で挑んでいきたいと思う。
さあ、明日は何をするだろうか。