生前の罪
カジュアルファッションな青年に腕を捕まれた状態にて、いわゆるあの世に連行された。
三途の川や奪衣婆なんかは無かった。
大きい体育館みたいな場所に連れて行かれた。
奥の方にいくつか窓口的な場所があり、列が出来ていた。
小さめな窓口が5カ所、手前にゲートがある大きめな窓口が2カ所。
小さめな窓口の列は長く、大きめな窓口は比較的空いていた。
俺は腕を捕まれたまま大きめな窓口に並ばされた。
小さめな窓口に並んでいる人は一人づつだが、大きめな窓口の列は俺みたいに二人づつの列だ。
多分、小さめな窓口はお迎えさんに連れてこられた人達だ。
大きめは問題児用なんだと思う。
しばらく待っていると俺の番が来た。
手前のゲートを潜る。金属探知機みたいな奴だ。
ゲートを抜けた時、俺を捕まえた追手が小さくガッツポーズをしていた。
そのまま窓口に行くと受付のお姉さんに利き腕を聞かれたので素直に答える。
利き腕じゃない左腕に腕輪を嵌められた。
腕輪のサイズが俺の手首ぴったりになる。
自動サイズ調整機能付きとか、それってなんてファンタジー。
腕輪が抜けないようになると追手が俺の腕を離した。
「んじゃ、いろいろ頑張れよ。」
追手がいい笑顔で去って行く。
腕輪が一瞬光った後、腕輪から矢印のフォログラムが浮かび上がってきた。
ファンタジーじゃなかった、ハイテクだった。
「後ろの通路からそのナビゲーションに沿って進んで下さい。
ナビから外れた場合、アラートが鳴りますので注意して下さいね。」
受付のお姉さんがいい笑顔で言う。
そして、窓口横から行ける後ろの通路を指さす。
はい、さっさと行きます。
ナビの通りに進み、体育館を出る。
連絡通路を通り、隣の建物に入る。
廊下を進むと広い待合室に出た。
矢印が消え、「順番までここで待機」とのメッセージウィンドウが出て消える。
マジ無駄にハイテク。
大きな病院の待合室みたいだ。
殆どの椅子が埋まっている。
空いてる椅子を見つけたので座る。
周りの奴ら全員腕輪を嵌めている。
問題児とか関係なく着用するものらしい。
そう言えば俺を捕まえた追手も付けていたような気がする。
順番が来たようで腕輪から「16番解析室に入れ」とメッセージ。
どこだよ。
思うと同時に矢印でナビされた。
ホント、ハイテク。
ナビされた部屋に入るとしっかりしたデスクに座ったおっさんがいた。
部長クラスの貫禄がある。
デスクの前にぽつんと椅子が置いてある。
面接でもするんですかい。
「まず、部屋の隅にある丸い台座の上に立ってもらえるかい。」
おっさんが指さす方向に近未来型ダンジョンにでもあるようなワープ装置みたいな台座があった。
何アレ、怖いんですけど。
まあ、乗りましたけどね。
ワープはしなかった。けど、めっちゃチカチカ光ってるんですけど。
「ご苦労様、椅子に座ってしばらく待っててくれるかな。」
光が収まるとおっさんから指示があったので椅子に座る。
暇なので、おっさんがPCのモニターとにらめっこしているのを眺める。
しばらくするとおっさんが頷いた。
「眞家瀬 実央君」
忘れてたけど、俺の名前だ。
「君、生前は主立った罪は犯していないけど、嘘が多いね。」
まあ、仕事の失敗を誤魔化したりする為に小さい嘘を並べまくったことがしょっちゅうだった。
「この量だと軽罰を数回受けてもらう事になるね。
回数多いけど軽罰だけで生前の罪が無くなるなら安いものだよ。」
また腕輪から矢印が出る。
「バスに乗って軽罰執行所に移動して下さい。」
ナビに従っておっさんの後ろのドアから部屋を出る。
ナビが建物の外にあるバスの1台を示している。
あれに乗るんだな。
建物を出てロータリーに行くと俺が乗るバスとは違ったバスに無理矢理押し込められている奴がいた。
俺が乗るバスは普通の巡回バスっぽいけど、あれ護送車じゃね。
・・・うん、軽罰頑張ろっと。