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0話 2度目の終わり

短編小説で先にアーサー王の話とリラの兄の話を書いていましたが、やっと長編小説です!

よろしくお願いします!


森林の中を息を切らしながら走る。

このどんよりとした苦しい気持ちを終わらせる為と、何をすればいいのか分からなくなって絶望してしまったから。


理由は色々あれど、私が何も持たずにこんな鬱蒼とした森に来たのは"自殺するため"に他ならなかった。


「っ、はぁ、っゲホッ」


普段走らないせいか耳元で直接心臓の音を聞いているのではないかと思うほどに、胸の奥の鼓動が激しくなる。


足を止めて息を整えていると、自然の雄大さが目に付いた。

草の匂い、薄らと香る雨の後の匂い。少し冷たい空気が紅潮した頬には心地よい。

長い間この街に住んだ私と言えど、この森に来たのは初めてだ。

木々の清純な香り、雄大さ。


私がここで死んでこの森を穢すのはなんだかいけないことのように思えた。

……いや、なんだかっていうか本当にダメなことだと思うけどね。ここ私有地かもしれないし!


「……どうしよ」


かといって家で死ぬ気にもなれない。

お母さんが家で首を吊っていたのに絶望したから丁度いい崖とかで身を投げようと思ったのに、わざわざ家に帰って隣で同じことをしようとか思うものだろうか?絶対ないね!!

しかし大学生のこの身、お先真っ暗だし。


それに、高校時代突如失踪して私以外の人々に忘れ去られてしまった親友のこともある。

それ以外にも何か、大切なことを忘れているような気がして_____


今の私は言うなればプリンのカップの底に掬い損ねて、カラメルソースの下で見えずらく微妙に残っている残りカスみたいな気持ちだ。


……うん、やっぱりここで死ぬのはやめよう。

もうちょっとうまい死に方があるはず。

なんかこうババッと終わって痛くない感じの、いや流石にないか……


結構深くまで来てしまったようなので森の中から出るために適当に歩く。

そうして悩みながらも神社が見えてきた。

よかった、やっと帰れる目処が立った。


「帰る……帰らなきゃ、なのか。あの家に」


嫌だと思った。それは当たり前の思考だ。

唯一の拠り所だった家が人の死によって居たくない場所へと早変わりした。

どうすればいい?

私はこの後、どうすればいい?


「そ、そうだ。普通なら警察に相談するんだ」


でも何故か警察に通報する気にもなれなくて、というかそもそもスマホは家に忘れてしまったし。

何をすればいいのか分からなくて、なんとなく神社の階段を登った。


なんだか肌がゾワゾワしてここにいてはいけない気がするけれど、気にしないようにしてポケットに入っていた十円玉をお賽銭にした。


何を願えばいいんだろう。

いっぱいいっぱいで迷うけど、そうだな。



「なんとかしたいです」


「今の状況を、なんとかしたいです」



これじゃただの願い事だ。流れ星にでも願った方が合理的な気さえする。

でも私の心境そのままを吐露できて少し楽になった気がしてホッとした。



「さて、帰るか」



突然視線がズレて曇り空が目に入る。

数秒経って首が飛んだと気がついた。


ころころと首が転がりグルグルと回っていた眼前がピタリと止まり、目の前にワニのような蜥蜴のような生物が現れた。


何も出来ず大きな口でバクりと食べられて……私の意識はそこで途切れた。



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