表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
萌ぷらむ  作者: タクヲ
9/20

9.彩葉萌の暴走(1)

 イライラする。


 昨夜はよく眠れなかった。

 寝不足と余計な思考が頭を占めてるせいで、先生の言葉も黒板の文字もよく頭に入ってこない。

 今は数学の時間。授業の内容はすでに自主的に完璧にマスターしているところなので余計にだ。


 いろいろあり過ぎた上に、全ての問題が解決もそこへ至る道筋も見えない・・・

 と言うか受け身の対応しか思いつかない。


 日々のややこしい問題も私の能力(ギフト)であれば解決できる事が多いし、そうしてる。

 やや安易に能力に頼り過ぎてるのは認識しているつもりだよ。

 でもね、変質能力というものに疑問はあっても、長年自身の手足のように使ってきた能力自体には愛着があるし、使って問題ない場合は使用をためらわない。

 もちろん、所構わずと言うわけではないし、前にも言ったけど大きすぎる問題にはそもそも使えないので、活躍の場は限られてるけどね。


 そして、一昨日からずっとこの能力も私自身もポンコツだ。

 カンジンな時には使えないというシチュエーションばっかりだったし、ムダだと分かっているけど、その場から離れたところで能力様にお伺いしても、目の前に対象が見えてないとダメなのは前に言ったとおり、答えは漠然としたものしか返ってこない。

 でもまあ、仮に使えていたところで、やっぱり間違いなくキャパオーバーでぶっ倒れれる事になったんだろうな。

 あとね、私、別に自分がそんな優れた人間だなんてひとっつも思ってないけどね、ここまでポンコツだとは思わなかったよ。

 正直ナンデコウナッタ感がないではない。けど、ああまで恥をかくことも、私がポンコツじゃなければなかったんじゃあないかな。


 だけどなぁ、だけどだよ?私に落ち度はなかったと思いたい。

 そりゃあ、最初におトイレ借りに駆け込んだのは、私だった。でも、あの広世家の二人も相当迂闊な人たちだと思う。

 今思えば、私が何か広世ぷらむにとって特別な存在なのかも知れない、ということで彼女たちも慌ててたみたいだし、あれが芝居だったとはとても思えない。

 あ、ちなみに私が万全の状態なら、メガネかけたままで全く消耗もせず目の前の人が嘘ついたり芝居を打ったりしてたら大体分かるよ。あくまで大体だけどな。すごかろう?

 わりとよくある特技だけど、私ぐらいの年の経験でわりと精度の高いこういった見抜く目があるのは当然私の能力のおかげだ。こいつのおかげで能力発動ぬきでも経験則で物事がよく分かる。

 だからね、普段なら結構余裕を持って行動できるわけですよ、色々ダメなところがある私でも、ね。

 ところが、広世家でのあれこれについては、私の考察は何一つ当てにならないというていたらく。

 ・・・話を戻す、ね。

 一昨日、私の主観としては全くの偶然にトイレを借りに入ったあとの出来事。そして一応あちらに乞われての再びの訪問の昨日にも、なぜか私のいる前でのあまり思い出したくもない、と言うかいまだ全く頭の整理がつかない、絶対ありえないとあえて言いたい闖入者。 

 それらに起因する、私の数々の情けない行動は、よってほとんどあっちのセイだと言いたい。

 

 ・・・・・・

 

 違うな。分かってるんだ。

 あまり認めたくない。けど、イライラの原因は分かっている・・・

 ひどい目に遭って何も解決してないとか、

 何回も赤っ恥をかいたこととか、

 それでイライラしていると、思いたいところだけど、そうじゃないんだな。

 そんな怒りに通じるイライラなんて長続きはしないさ。


 ・・・・・・なのにこの陰々鬱々としたイライラはどうだ。


 それは私自身の問題。

 だから、分かっていたって話したくはない、よ。


 はあ、とりあえず昨日、あの後の事を話しておこうか。

 私があの後広世邸を出るまでの間、そんなに長い時間ではないけど、あの二体の広世ぷらむに魔法少女のマスコットみたいと言われてた奴らは、ずっと目を覚まさないままだった。

 広世さんの母親、(しずか)さんが真剣な面持ちで何か調べてたけど、それで何が分かったのか私には分からない。

 ひとまず広世家にて保護?されるようで、今も()の邸内にいるのだろう。

 別世界の存在、龍の実在、そして変質能力の真実。それらは全て広世家の秘事ということで、そういった事実があることは聞いたけど詳しいことは話してもらってない。

 いや、私の知りたいことは全て聞かせてくれると、今度こそ、そう約束してくれた。

 ちなみに、広世家はそれらのことを何か知っているなんてレベルじゃなくて、それらの一般に全く知られていない、どれほどのものなのか分からないけれど、いわゆるファンタジー世界とされるもの関連の情報、この私たちの世界においてその情報を全て総括・管理する存在であるとのこと。

 いきなりとんでもない・・・、始まりの街にラスボスがいる感じだな。

 その、世界中で知られている限りの情報から、何でも知りたいことを聞いてもいいという。

 なんていう魅力的なこと・・・。という以上に少し恐ろしいくらいだね・・・


 でも、あの信じられない闖入者たちのせいで、あちらの事情も変わった、と言うか諸々の調整が必要だそうで、まあそういう大人の事情に口を挟むつもりもないし、そもそも全部広世家の問題であって私は偶然居合わせただけの部外者だ。

 そういうわけで、次のお招きはいつなのか分からない。

 それまで悶々と待たされるわけだ。

 とにかく昨日は私の状態への気遣いという事もあったようで、静さん曰く、

「萌ちゃん、こちらの事情で来てもらっておいて大変申し訳ないのですけど、このような状況ですし、あなたも、もうちょっと落ち着いてからお話を聞いたほうがいいでしょう」

 ということだった。

 確かにまともじゃない精神状態で重い話を聞くのもどうかと思うし、厚かましい態度を取るなんてことは私にはとても出来ない。

 あの、見た目かわいいモンスター、態度めっちゃ尊大な二体の闖入者、その突然の出現に至っては広世家にとっても即応不可の一大事みたいだったし。

 ともかく私もあちらもちょっと時間が必要と言うことやね。


 まあそんなわけで、私に落ち度がないと言ったって、あちらにだって非があるわけでもないし、期待してた情報にしたって、また今度になっただけで期待以上のを話してくれる約束までしてもらった。

 それに、ハジをかいたと言っても彼女らが私をバカにしたり笑ったりしたわけでもない。

 なら私は何が気に食わないんだろうね。


 そして彼女はこうも言った。

「うちの娘は思慮深さや迂遠な考えとかからはほど遠い子だから、こういったことに気が回らなくて不安にさせたのかも知れないわね・・・

 萌ちゃん、あなたに当家へ来てもらったのは、一つお願いがあるからなんだけど、お願いを聞いてもらうためにあなたが知りたいことを話してあげるって訳じゃないの。

 私たちは無条件であなたが知りたいことと、それを知ったあなたが解っておくべき事を話す準備があります。でも、これが交換条件みたいになるのは不本意ですから、話を全部聞いてもらってから 改めて私たちのお願いの内容を聞いてくれるか聞かずに帰るか決めてもらえれば、と思っているの。

 もちろん、お願いを聞いたからってそれを拒否してもらってもいいし、お願い自体も大したことではないのだけれどね。

 ただし、さっきも言ったとおり心苦しいけれどまた後日という事になるけれど。

 だから一つだけ信じて欲しいの。

 私たちはあなたが、あなたの思うようにするため、その手助けがしたいと思っているということを」


 なんで私にそれほど入れ込んでるのか、ちょっと分からない。

 そこらへんも訊いたら答えてくれるのだろうか。 

 まあ、彼女らが私に対して悪意も害意もないのは解ってる。

 じゃなきゃあ、そもそもいくらすごく興味をそそる相手だって、得体の知れないあの家に再び足を運んだりしない。


 ただ、何を置いても、私の思考が広世さんに「他の方よりすごく明瞭に聞こえてしまってるみたい」と言うのだけはどうにかしたい大問題ではある。

 これだけは、

 はあ?何だそれ!

 ってなところだよね。

 

「じゃあ次、彩葉(いろは)君二番の問題やってみようか」

 

 んん?・・あぁっ!

 授業全然聞いてなかった。

 イライラと要らん考え事のせいだが余計にイライラが募る。

 この先生は生徒に前の黒板で解答させる。

 今どきこれは古いやり方じゃないかという声もあるし、正直ちょっとめんどい。

 前の問題をやらされたらしいクラスメイトの男子が自分の席に帰っていく。

 あまりいい感じではなかったらしい。

 全然授業を聞いてなかったので、今の状況も全くわからないんだけど、彼は数学苦手だったっけ?

 しかし数学の時間で助かった。授業の内容は知らんが、問題を見れば答えはわかる。

 てふてふ・・・黒板の前まで行って問題を見る。

 コツコツ・・・余計なことを考えないように問題に集中。

 イライラと授業に関係ない思考のせいで危ないところだったんだから、

 と思ってそうしたのに、これがいけなかった。

「できました・・」

 ・・・・・・

 あれ?様子がおかしい?

 振り返って自分の板書をよく見てみる。

 ・・・これは、やっちゃった、か?

 やっぱり先生の話を聞いてなかったのはまずかったみたい。どういう経緯でこうなったのは知らないけどこの問題は中学校の数学の問題じゃないじゃないか。たぶん高等数学、高校の後半以降、下手したら大学レベル・・・、難易度自体は今授業でやってるレベルと変わらないけど抵抗なくすらすら解いちゃいけないやつだった。

 いや、できるの自体は悪かないよ・・・ね、ああ、やっぱダメ、めだつやろがい。

 数学は好きなんだよ。

 趣味で難しめのその手の本もよく読んでるし、ゲーム感覚で問題集と格闘するのも好きなんだ。が、わざわざ人に言ったりしないから先生も知らないはず。まいったな。

 目立つのはイヤなんだよ。

 ああ、もうっ、なんでこうなるんだよう。

 

挿絵(By みてみん)

っすまん!!

今回はいつもよりどんずまってしまって、

ちっとも筆が進みませんでした。


あとしばらく萌ちゃんにはイヤな目に遭ってもらわねばなりませんのでそのせいかもしれぬ。


萌ちゃん、もうちょっとだからね・・・



ちなみに作者は数学ダメです。数字を見るだけでじんましんが出ます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ