2.緊急事態更に緊急事態
挿絵は鉛筆描きして入れていくことにしました。
毎回は無理だけど。
終わった・・・広世さん、悪口を言うような子には見えないけど、弱みひとつ取られたよね。
一回も話したこともない子の家にトイレを借りに駆け込むって、ないわー
おトイレを出ると誰もいないので、ちょっとキョロキョロしてしまう。思った通りすごく大きなお屋敷なんだよね。ちょっと薄暗いフローリングっていうより板張りといったほうがしっくりくる廊下が不思議なほど静かだ。広世さんどこだろ。
はー、顔を合わせるまえに何とかなんないかなー、あれ、あれれ、何も思いうかばない?
わりとしょうもない願いにメガネをはずすのか。いやいや、それこそないなぁ、とか指がメガネに触れつつ、悩んでいると、
「ダメですよ?」
「ひゃっっ!」びっくり。声がした後ろに振り向くと、メガネに触れてる私の指をそっと押さえる女性が優しく微笑んでいる。
ちょっと待って。このたったの一言。でも、おかしくない?
目の前の女性はたぶん広世さんのお母さん。綺麗な人だ。女優とかモデルとかの人目をひくテンプレな美人さんではないけど、何だろう、すごく安心する。
いやいや、でもこの人おかしいですよ?
感覚的に安らぐ感じで、表情も声も何も不自然なところもなく落ち着く。
なのに思考を巡らすと色々おかしいですよ?
近くに誰もいなかったよね?
それにいきなり、ダメって何?
解ってるんじゃないの?知っているんじゃないの?
きっとこの人のせいで私の力が効いてない。
「にゃ、にゃにゃ」
ブルブル頭を振る
「なんでふかぁ」
ダメだ、まともにしゃべれない。大げさですか?なんでこんなに私が私の秘密に触れられるのを怖がるのか不思議ですか?もちろん理由はあるよ。でも今はそんな物思いにふける余裕はないよ。
そして目の前の女性は、初対面であるとか恥ずかしい今の状況である以上に、取り乱す私を見ても変わらずおだやかな声音で話し掛ける。
「あらひどいわ、初対面で怯えられたのなんて初めてよ」
でもその内容とひらひらと動かす手が少し子どもっぽい?なんだかまた違う方向でヘンですよ?
そこへ、広世さんもパタパタと現れる。
「あれ?なかなか来ないと思ったらお母さんと話してたんですか」
顔、超整った西洋系と東洋系のいいとこ取りのような超絶美少女。
ほんのちょっとハスキー気味のかわいい、その声。
ブロンド!ふわっふわの本物の金髪。
すもも色の大きな瞳。
たいへん目の保養になりますが、あんまり隣には立ちたくないです。
ん、でもちょっと落ち着いたかも。
なんか変なこと考えてた。広世さんのお母さんがなんかの能力者で、私のことも見抜いてて、それでもなんで私のこと止めたりしなきゃなんないのよ、意地悪ですか?・・・ふう・・・
「お母さん萌ちゃんに意地悪したんですか」
「ぷらむちゃん!!」
え?なんで私の下の名前まで知ってんの?
っっじゃなくって、ぅおえぇ?!
私何もしゃべってないよね?ね?
広世さんは口を手で押さえ、その上をまた母親に手で押さえられてる。なんていう顔をしてるのよ、2人とも美人が台無しだ。けど私もきっとひどい顔をしてるに違いない。
恐怖がぶり返す。何らかの能力もちであろうと言うことならお互い様だが、ここは彼女たちのフィールドだ。でも、じつは困ったことに私の好奇心が、ワクワクが、ムクムクと立ち上がり、震えそうになる足を固まった手をしゃんとしてくれる。さいわい2人は困惑とも愛想笑いともつかない表情で固まっている。
私は素早く後ろに下がりながら。といっても実は運動神経ってなに美味しいの的な身体能力ダメダメな私のせいっぱいなので、足は滑り片手はワチャワチャとかっこ悪いことになってしまった。
が、私の手がメガネをはずす!
広世さんのお母さんが「あっ」と、こちらに手を伸ばしつつ声を上げる。その反応からやっぱり先の私の予想は間違いではないと悟る。そして願う(この親子の秘密を知りたい)と。
そこで唐突に私の意識はすっ飛んだ。
後で聞いた話だと、バランスを崩した姿勢だった私はそのまま倒れ、頭から床に落ちるところを間一髪で広世さんのお母さんに抱き留められたが、ちょっとのあいだ気を失っていたようだ。
・・・もう、昔から何回もやっちゃってて知ってるんだけどね。相手、所、構わず好奇心のままに行動すると碌な事にならないのは。難儀な性格だけどそれゆえに治りませーん。
未来を自分に都合のいいように引き寄せることができるのが私の能力でなかったかって?いや、間違いではないけどそこまで強力なモノでもないのですよ。そこらへんはまた話すことがあるかも知れないけど、そもそも今回望んだのはその“神の一手”と私が呼んでるモノではなくて、“天の答え”の方だった。で、初対面の他人の家で暴れるというとんでもない暴挙に出た上で、答えは得られたかというと、ノー。結果は得られずにエネルギーは大量に消費してぶっ倒れた。
頭とか打ったわけでもないのに気を失った私を広世さん親子はたいへん心配していたが、救急車を呼ぶとかいう事はなかった。目を覚ました私はおばあちゃんに連絡して迎えに来てもらった。すぐに1人で帰ると言ったら放してくれなかったからだ。
私と広世さん、おばあちゃんと広世さんの母親それぞれ少し話をしたけど、私は気まずいのとまだぼおっとしてたのでまともな会話になってなかったような・・・
ともかくまた明日、ということで帰宅。
そう、また明日会うこと、そして変なことをしゃべらないことをお願いされた。ほんとに頭を下げてお願いされちゃった。しゃべれと言われたってしゃべらないけどね。絶対明日も会って話をしたいし。
おっさん頭の回転遅いねん。
いっぺん躓いたらなかなか次が出てけえへんのや。
ほんで前に還っていじくったりして更に進みが遅おなったりして・・・・・・
なかなかドラゴンが出てくるまでいけへんな。
挿絵が雑なのは勘弁な。