18.たまねぎふぁんたじー(2)
この家のセキュリティーシステムが害意と嘘を見抜くことを信じ切っているらしい広世ぷらむはワイトがただただお行儀のよいお坊ちゃんだとは思わなくても嘘をついているとは思ってないようだ。
けど、私はその仕組みは知らないし、どれほどのものかも分からないし、どんなすごいご自慢のセキュリティーシステムだって全く規格外のヤツらに効果が万全であるとは思えない。
それよりも私は私の感覚を信じる。
まあ、わざわざ言いはしないけどね。
そして、その当人のワイトからして私が気がついてることはまず間違いなく察してる。
その態度には普通ならちょっとむかついてもいいはずなんだけど・・・・・・これがねー。
チビ龍どもは広世ぷらむのベッドの上でふんぞり返ってえらそうにしているわけだが(ヤツらに言わせれば、えらそうなんじゃ無くって、実際えらいって事なんだけど、知るかい)いくら威張ったところで、その見た目は彼らの自己評価がいくら神々しく限りなくカッコイイと思っていたって、私たちから見たらどうしたって、カワイイ、なんだよな。
ホントにもう、本人達がどんなに威厳たっぷりな態度を取ってみたところで、人間の姿ならともかく今目の前にいるチビ龍の見た目は、大変出来の良い愛らしいキャラクターグッズに他ならない。
・・・まあつまり、状況がどれだけ緊迫してたって話の内容が突拍子も無いながら少々重いものだって、目の前のが見た目がすごく生々しい(まあ実際生きてるわけだが)とは言ってもヌイグルミ以外の何ものにも見えない以上、見慣れてしまえば、どうしたって空気が緊迫しようがないんだな。
それに・・・ね、ワイトが二人の生い立ちについて話してくれてるときに、永玄のやつ、じっと広世さんのことにらんでんの。なんだろうって思ってたけど、一通り話が終わったところで広世さんもそれに気が付いて、そこで彼女が永玄に言った言葉が「なぐ?わたくしの顔を見ながら、“母上”というのはどう言う事でしょうか、あなたのお母様と言えば先程の話に出てきたわたくしのご先祖様ですね」って。
永玄はね、何もしゃべってないのよ。
そう、広世さんが無意識にそれと気付かずに、永玄の想念を読んじゃったんだ。
ホントこの娘は懲りずにやらかす娘なんだな、と思う。
よく憶えておかないと大変なめに遭いそうだよね。
・・・イヤちょっとまて、なんで私この先ずっと広世ぷらむと友達付き合いしていくのを決定事項のように思ってるんだ。
・・・・・・
まあ、今はそれはとりあえず置いとこう、うん。
今は広世ぷらむのやらかしより、チビ龍どもの反応のがあやしい、てか、興味深い?
当然のこと、えらく怒りながら、永玄が広瀬ぷらむに怒鳴る。
「其方っ!我は何も発しておらん。ふ、不敬にもほどがあるぞ!」
「おいまた言葉遣いが変になってるぞ」「ご、ごめんなさい」「あんただって勝手にのぞいてたろ」
ワイトがつっこみ、広世さんは謝る。そして私もつっこむ。
永玄ったら、また拗ねてそっぽ向いて黙ってしまった。
しかし、よおーっく観ると、永玄のやつ怒ってると言うよりひどく慌てた様子だし、ワイトも冷静につっこんでるように見せながら、やっぱりちょっとあやしい。
冷静で平気で嘘をついて自然に高飛車なワイトが、ごく僅かながら私が気付くほどにはほんの一瞬、動揺したんだ。
今まで何の抵抗もなく嘘をついて、それを気付かれてるのに感づいてても平然としているような奴がちょびっとながら動揺してんだよ。なーんーだーろーうーねぇー。
まあ、奴らの事なんて、まだ全然わかんないことだらけなんだから、考えたってなかなか答えは出ないんだけど。
「ボクも思ってたんだけど、こいつはさ、ぷらむがボクたちのその母親にすごく似ているのがずっと気になっていて、それでじっとぷらむの顔を見てたんだよな、失礼したのはこいつもぷらむもだよ?ここはお互い様って事でどうだい?」
ワイトはそう言うが、永玄はそっぽを向いて黙ったままだ。が、やっぱりこの二人はなにかをごまかそうとしている。
でも広世さんはあっさり食いつく。
「ねえ、わたくしはそれよりそのわたくしに似ていたというあなたたちのお母さんのことがすごく気になるのですけれど」
と、こうだ。
「そうさ、全くうりふたつとはこの事だろうね。ぷらむが将来成人したときは全く見分けがつかなくなるのが分かるくらい似ているのが間違いないと思えるほどだものね」
ワイトも乗っかって何やらまくし立ててるけど、ジト目でにらんでやったら、やっぱりちょっとあせってやんの。
けど、それから広瀬さんがこの話題に食いついてしばらくワイトに乗せられてたもんだから、なんだろうね、この二人のチビ龍が現れてからずっと腑に落ちないというか気に入らないというか、モヤモヤした気持ちがまた甦る。
この家に初めて来て二日、チビ龍どもがここに来たのが昨日なんだから、あまりに強烈な出会いで感覚がおかしいのか、そんな彼らとの間に疎外感なんて感じるのはおかしいのは分かってる。
奴らは確かに私なんか気に掛けるほども無いくらいの絶対的な強者なのだろう。
だけど、そのわりに、そんな取るに足らない存在であろう私なんかを血の繋がりがあると言っている広世ぷらむと同等の扱いをしてくれる。が、最初の時もそうだったし時々ものすごくぞんざいに扱われる感じがするのが、なぜだか、やっぱりなんでだか分からないけど・・・・・・気に食わない。
私の超洞察力なんて呼んでる能力は、普段は押さえ込んで使ってないから、これが使えたら簡単に分かるのになってことがあっても、別にストレスを感じたり後悔したりはしない。
だけど、ね。
学校ではメガネをこわしてしまって押さえるのが難しくて困ったこの力が、今は、発動権を奪われてるのがちょっともどかしく感じてる。
知りたい、知りたい、知りたい!
奴らの言動の真意を知りたい。
この数日の私の周りの出来事がただの偶然の連続なのか、何か理由のある必然に引き寄せられたものなのか確認したい。
なんならもう、トラウマ級に恐れて避けてきた自分自身についてもこの際触れてしまってもいい。この諸々の問題の解決につながるなら、だけど。
・・・・・・イヤやっぱりそれはちょっと・・・う~~ん。
私がそんなくだらないことを考えてる間も、広世ぷらむとワイトは彼らの母親の事を話していた。
していたんだけど、ふとこっちを向いて苦笑い。
なんだよ。
私、何も言ってないのにこっち向いて妙な態度をとるって事は、また私の頭ん中のぞいたのか。
それとも、そんなに私の感情は読まれやすいのですか?
なんにしろ考えが漏れているに違いないと思うんだけど。
このチビ龍達は広世ぷらむに無意識にのぞかれることがあるって分かった時点で、宣言した上でのぞき見をブロックすると言った。
曰く「お互い、不本意に意識が漏れたりするのは駄目みたいだから、ボクが調整してみる」だって。
できるんなら最初からやっとけばよかったのに。
んで、今、自分たちはブロックしといて私のはのぞき見すんのかい。
えらい龍神様がせこいことですな。
(おい、のぞいてんだろう?広世ぷらむ以外の人間にはたいして関心のないあなた達が随分なことじゃないですかね)
声には出さないようにちょっとカマかけてみた。
「え?あれっ?ちょっとまって、違うよ。・・・いや、今あなたが思念を送ってきたので返答しているので、ずっとのぞき見していたわけではないし、あなたのことを軽視しているというのも誤解だよ」
は~~ん?
ワイトさんなんかワタワタしてるね。
嘘を言ってるようではないし、軽い感じでしゃべりながらしっかり自分の優位は確保しつつ嘘も平気で言うこいつが、慌ててるしなにか言い訳をしようとしている。
我ながらどうかと思うけど、こんなのをおもしろいと感じてしまう。
でも、私のことを軽視してないってのは分からない、よ。
「困ったな。確かにボク達がここに居るのは、ぷらむを頼ってのことで、そこにあなたがいたことは想定外だったし、実はね、最初ボク達はすごくあせっててぷらむしか見えてなかったのは本当さ。けどね、あなたのことを意識したときすごく驚いた。ぷらむがボクたちの母親に似ているってさっき言ったけど、あなたはぷらむと同じようにボク達が絶対に無視できないある存在に似ているんだ。あの時あなたのことを縁深いと言ったのはそういうわけだよ」
「・・・・・・でも、似てるって、だけで、それはちょっと」
分からない。だいたい誰に似てるってんだろう。
「んん~、そうだな・・・、ボクらはこちらの世界の言葉や仕草なんかの学習すれば身につくことは簡単に習得できる。けど、いくら知識で知っていることでもなかなか心から分からない気がしたり腑に落ちなかったりすることが、普段の生活の中にだってあるだろう?ボク達は別の世界、あるいは異世界とか言われるところから来た。だからどうしたって解り合えないことがあることは分かって欲しい。その上でたぶんこちらの人々にとっては分かりにくいと思うけどボクらにとっては当たり前のこととして一つの事実、世界の成り立ちとそこに在る遍く存在にとっての大前提がある事を知って欲しい。それはボクらの世界が唯一柱の女神の念いによって生まれ、その念いにより時空も星々も生けるもの全ても成っていると言うこと。で、詳しい事は今はすっ飛ばさせてもらうけど、ボクらの世界で姿形が似てるって事は、その存在の本質あるいは血筋や関わりといった縁が近いって事なんだ」
・・・ずいぶん丁寧に誠意を持って話してくれてることは分かる。
広世さんなんか、急に話が変わって、たぶん理解できてないもんだから固まってるが。
説明してくれたことは、話が大きすぎて簡単に納得はしがたいけど、まあ、難しい話ではないし理屈はともかく、いい加減な作り話をしているのではないのだと思う。
知らないことを知ることは大好きだから、その話自体は大変興味深い。
なんならすっ飛ばされてしまった詳しい話も聞きたいところ、なんだけど。
でも、でもだ。
「だから、私が、誰に、似てるんだって?」
私自身に関わる話ならまずそこだろう。
「・・・女神様」
ん?
「さっき話した創世の女神様に似ていると思うんだ。だからあなたと面と向かうと緊張してしまう、と言うか」
何言ってんだこいつ、と思って永玄の方を見てみると、そっぽ向いていじけてたのにこっち向いてて、肯いてる。
わけ分からない。なんだそれ。
「さすが私の萌ちゃん。そうせい?の女神なんてすごいですね。その女神様のお姿を見てみたいです」
しかしここで広世ぷらむが復活してきて、さっきと同じノリで言うのだ。
何がさすがなんだか。あと私のってなんだ。女神にはちょっと似てるってだけの話だし。
「精神感応の許可がもらえるのならボクの持ってるイメージで写真とかじゃないけど見せられるよ」
またおかしなことを言い出す。さっき広世さんの先祖の話ん時にはそんなん言ってなかったろうが。
「はい、見たいです」広世さんは即答。
でもまあ、悔しいが私も見たくないわけではない。嫌な予感がするが、興味が勝る。
なので肯く。
「じゃあ、目をつぶって。こういうの初めてだと、たぶん自分の視覚と混乱して気持ち悪くなるといけない」
それに了解すると即座にイメージが脳裏にはっきりと写された。
それは、日本神話に現れる比売神とか如来とかの仏像に近いイメージかな、ふくよかで神々しい感じ。
すごいね精神感応もこういう使い方だと悪くない。が、しかし。
「んんっ!もう!これの、どこが、私に似てるんだよう」
恥ずかしい。
さすがにあのバカ男子とかに言われるみたいに自分の容姿がそこまで悪いとは思っていないけど、こんな文字通り神々しい女神様に似てると言われても、どういうつもりだとか思う以前にワケが分からない。だいたい神様仏様なんてのの外見的イメージなんて少なくともこの世界では偶像あるいは虚像的なもののはずだ。なんであんなはっきりと個人的なイメージを持ってさらに私に似てるなんて考えが少なくともこいつら二人の共通認識としてあるのか、まったくワケが分からない。
「本当です、萌ちゃん、わたくしもすごく似てると思いますよ」
あ、狂ってるのがもう一人いた。
「だから似てないだろ」
神々しく美しい女神様に似てるって言われたって、似てないんだからうれしかないよ。
とか何とかやってたら、私たちの目の前に女神様ご本人がいた。
イヤ本当にこれはワケが分かんない。
現れる前にまばゆい光があったり、一陣の風が吹いたり、だんだんと像をむすぶようにだとか、上の方から降り立つようにとか、そんなの全くなく何の前触れもなく、ずっとそこに居たようにいきなり目の前に、居た。
それは確かにワイトが見せたイメージ通りの顔だ。
けど、表情なんかから印象がちょっと違うかな。
近づきがたい大きな存在感というか威圧があるから、尋常の存在でないのは確かなのに、妙に人間くさい。
イヤまあ、ドラゴン(奴ら曰く正確には龍と人のハーフか)が横に居て、女神様の見た目はこの世界の人間、それも日本人の姿形そのままなんで、比較対照的にそう思っちゃうのかな。
その女神様がチビ龍どもを一瞥して口を開く。
「あーんーたーたーちー!龍神がそれを言うとしゃれにならないんだよっ。ずっとずっと、何遍も何遍も言ってるでしょうが。私はっ、神様なんてたいそうなもんじゃないからそう呼ぶなって」
うわあ、見た目も雰囲気も完全に女神様なのに、表情としゃべりは普通のお姉ちゃんだ。
「あんた達が祭り上げるから神みたいなモノになっちゃったんだぞ。わかってんのか」
そう言われてチビ龍どもは言葉無くアワアワしてる。
「いいね、ちゃんと理解して憶えといてよ。私が言いたいのはそれだけだ。じゃあまたね」
眉間にしわを寄せてがなり立ててた女神様だったが、用が済んだとたん先の言葉とは裏腹に、すべてを包み込むようなまさに女神の笑みを浮かべて、消えた。
私と広世さんの方には視線はよこしたけど言葉は無かったな。
ワイトの女神のイメージがひどくハッキリしてたのは現在に存命してたからなんだ・・・
別世界だの龍神だの挙げ句の果てに女神だと。
忘れよう。
あれは考えてはいけないものだ。
待っててくれた御方(居るのか?)ほんっとうに長くお待たせしてすみません。やっとこさでけました。
さすがに心苦しかったので活動報告の方に二回もいいわけを書いちゃった。
活動報告違うっちゅうな。
次回はさすがにもうちょっとましな間隔で出せると思います(?)
いつのまにか評価の星をつけて下さった御方がおられますやん。
ありがとう、ありがとう
・・・・・・プレッシャーでまた遅くなる・・・
じょうだんです。
がんばります。




