13.なんか思ってたんと違う
私は今どんな顔をしているんだろう。
こんな事を思うのもここ数日で何回目のことか。
だってさ、広世ぷらむが私に今(念話で)言ったことがわからないんだもん。
その言葉の意味が分からないわけでもないけど、その内容はどうしても理解できない。
「いやいやいやいや、あんた・・・」
なので私はそれを口に出して言いかける。
けど、ここには、カーテンで仕切られてるとは言えすぐそこに先生と佳奈ちゃんもいる。ワケの分からない話を聞かれるのははばかられる。
しょうがない、不本意ながら念話を意識して頭の中でしゃべってみる。
(あんた怖いって。私もあんまり常識とか普通ってな言葉は好きじゃないけど、あえて言う。おかしい)
そしてちゃんとそれに彼女が答える。
うわぁ、どうしてもその違和感というか、不思議な感じはぬぐえない。
けど、一番の問題はやっぱりその内容。
(いいえ、わたくしは常識や世間並みの普通の感覚とかを軽視するつもりはありませんよ?ですが、わたくしたちが常識を逸脱した力を持っていることも事実ですので、そこはちゃんと意識して対応しないとダメなんですよ?)
だから、なんでそこに私が含まれてるんだ。
ああ、もう、なんだかなぁ・・・ やっぱりずいぶんと認識の隔離があるね。ちょっとそこは置いとこう。
まずはずっと、というか今一番気になってることだ。
(ねえ、それに、ずっとかどうかは知らないけど、頭ん中全部丸聞こえなのは・・・って言うか全部でなくても防御しようが無いんで嫌だよ。つながりっぱなしの念話、どうにかならない?)
さっき私を止めてくれたのはこの技能(?)のおかげ。でもやっぱり嫌なものはイヤ。
(え・・あの、それは・・・・・・ちょっと誤解があります。はっきり伝えてなかった私が悪いのですが私の感覚では萌ちゃんの考えてることがわたくしに分かるのは、はっきり私に向けて考えてることと、激情と言っていいほどの大きな感情をともなったものだけです。つまりそこは他の皆さんと変わりありません。)
んん?そうなの?
あぁ、うん、それなら確かに私が勝手に思ってたのと違うけどね・・・
それならなんで親子であんな持って回ったような言い方をした。
って言うか、私、勝手に思い違いをして勝手に嫌悪してたんなら、すごい気まずいというかなんだか・・・・
(ですから、わたくし言いましたよ?萌ちゃんの思考だけが他の方より明瞭に聞こえている、と。
それはわたくしにとっては特別なことでしたが、ただそれだけのことです。前にも言いましたがわたくしのこの念話はそんなに性能がいいわけでは無いのです。つまり、わたくしの送信?の方は声を出しているのと区別がつかないくらいに皆さんに聞こえているようなのですが、わたくしにとって必要では無いからでしょうか、受信の方は頑張ってみてもとても実用的では無い程度の精度なのです。それが、萌ちゃんのは普通にしゃべって声が聞こえるのと区別がつきませんでした。
・・・改めて申しますと、このわたくしの念話という技能は、わたくし自身の事情で他にどうしようもないと思いこんで、どうにかこうにか出来るようになったモノですので、その不完全で不安定なこのスキルは、つまり、〈カリスマの声〉という厄介な能力のフォロー以外にあまり使いようのないモノだったのですが、これが萌ちゃんとだと、何と言いますか、すごく楽しく会話できてしまうって事でして、わたくし、正直なことを言ってしまえば、一昨日に萌ちゃんに会ってからずっと浮かれてしまって大変です。
・・・ごめんなさい、なんだか話がずれてしまいました。ええとですね、つまりご質問の答えとしましては、わたくしと萌ちゃんの間の念話は、今のように完全に誰にも聞かれない内緒話をするとか以外は普通に会話するのとそんなに違わないという事と、あとこれは申し訳なくは思うのですが、原因が今のところわからない以上この状態の解除はわたくしには出来ないという事です)
なーがーいー。説明がぁ、長いって。よく一気にこれだけしゃべれるもんだ。彼女に対する認識をちょっとだけ改めなければ。
まあでも、ひょっとして声に出してしゃべるのとテレパシーでは思考のプロセスとかに違いが出るとか・・・。私もしゃべるのはすっごく苦手だけど、頭ん中ではこんな感じだしね。まあ、片落ちの説明にしかなってないのが相変わらず彼女らしいけど。まあ今はそんなことどうでもいい。
・・・逃避はこれくらいにしとかないと・・・
ええ、ええ、やっぱりどうも私の思い違いはあったんだろうけど、私の方のデメリットはあんまり変わらないような。それに・・・
(あのね、私のメガネのことは話してないから、なんでかはわかってもらえないと思うけど、不本意だけど今私はあんたから離れられない状況なんだ。それで今聞いた通りなら、あんた的には普通にしゃべってるのと変わらなくても、私の感情、それに、あんたがそれと気付いてないときに周りに誰かがいたとき問題大ありなの、わかってる?)
そしてもはやお決まりのキョトン顔。
やっぱりわかってないご様子。
めんどくさいなぁ、もう。
私は基本的に何かを理解しない人に同じ事を何回も言い聞かせることや懇切丁寧に説明するのは大体において無駄だと思ってる。これは相手の知識や人格を否定するものでは決してないが、私の正当性を主張するものでもない。端的に言ってしまえば、めんどくさい、って事。
つまりこの話も話が通じる相手にきくまでおあずけって事にしたい。
早く昨日無期限延期になってしまった感じの、広世家のお勉強会(私の勝手な予定)に行きたい。
あの自称龍神とか言う奴らに会うのは正直しんどい。
でも今や一連の出来事の外せないピースであるので避けられはしないだろう。
私にとって、手に入れ得る欲しい情報を見逃すなんてあり得ない。
いや、そう言えばあの自称龍神どもは目覚めて対話もしていると言ってた。それなら広世家での対応も進んでるんじゃないのかな。
そう思ったから、めんどうくさいことは気にしないふりして、とりあえず聞いてみたいことを訪ねてみたんだ。それがまた大変な事につながるとは思ってなかったよ。
(ねえ、それならもう分からない事は答えてくれなくていいからさ、昨日のあの白いのと黒い別世界の龍神だとか言ってた奴ら、あいつらと話が出来てるんならさ、話を聞きにあんたん家にまた寄せてもらえる日、すぐにとは言わないけど決められるんじゃぁない?)
「そう!」
彼女は思わず声を出してしまってから口に手を当ててあせったふうにしながらもすぐに続きを念話だ。
(それですよ萌ちゃん!あの二人はわたくしが朝起きたときにはもう目覚めてまして、その二人ともちょっとだけお話をしましたし、彼らのことで家族からも少し話がありました。ですが登校前の短い間のことですので、わたくしもまだあの二人のことや我が家の今回のことに対する決定事項とかは詳しく知りません。わたくしが今分かっているのはしばらく彼らが我が家に居ることになったことぐらいです。詳しいお話は学校の後、我が家で一緒に聞いて下さいね)
(それは昨日の話の続きは今日もうできると言うことでいいの?)
(そうですよ?)
なんとあっけない。私はちょっと何ともいえない気分ながらも、正直少し安心した。
だけど、彼女の話は終わりじゃなかった。
(でもですね、聞いて下さい、あの二人ったらお話しする前にお名前も存じ上げませんので訪ねてみましたら、そんなものは無いっておっしゃったんですよ。名前が無いってどういうことでしょう、とも思いましたけど、ちょっとお話しするだけならともかく、しばらく一緒に暮らすことになりますのに、名前が無いなんて大変困りますのでわたくしが名前をつけて上げることにしました。なぜ名前がついてないのかとか隠しているわけではないのかとか聞いてみましたけれど、よく分かりませんでしたし、ともかく名前をもらう事に対して抵抗があるわけではなさそうでしたので、わたくしが勝手に決めました。これは決定です)
そして軽くムフウ、と鼻息を漏らす彼女。
何をそんなに息巻くことかと思う。
が、あの得体の知れない、しかもたぶん自称どうりの強大な少なくとも私はもちろん彼女だって適うはずの無い力を持った奴らに対し、彼女はなぜだか優位的な態度を取っているようだ。
なんでだろう。彼女自身だって確か奴らには適わないって言ってたと思うんだけど。
や、しかしまだ話が終わってなかった。
(それでわたくし良いことを思いつきましたのです)
何かすごく悪い予感。
(萌ちゃんにも片方の名前をつけていただけ・・・
(嫌っ)
・・・ませんか)
かぶせ気味に間髪入れず拒否だ。
(片方と言いましたが白い彼の名前が不思議とぱっと頭に浮かんだので、お願いしたいのは黒い方のなんですが)
(だから嫌だって言ったよ。なんで私があんな得体の知れないモノの名付けなんかしないといけないわけ!?)
(・・・あっ、ごめんなさい、あんなに怖がってた相手にそれは嫌でしたね。大事なことを失念してま・・)
(だ・か・ら・違うって!私別に奴らのことを怖がってたわけじゃない)
ん?そう言えばあの外見は可愛らしいと言えなくはないとは言え、奴らに恐怖を覚えてもおかしくはなかったね。でも、今思い出しても奴ら自体に恐怖は感じない。なんでだろう。広世さんに至っては恐怖どころか下に見てさえいる。不思議だ。
(それなら問題ないと思うのですけど。ぜひあのひねくれ黒龍に名前をつけてあげていただけませんか)
(それとこれとは別問題でしょが・・・)
とか何とかやってるところに異変が起きる。
(喚んだか・・・喚んだよな)
唐突に思念が割り込んでくる。
それは明らかに今まで対話していた広世さんとは違う。
そして突然起こる、室内なのにありえないつむじ風。
その瞬間、誰も居なかったそこに見知らない男子がいた。
地黒でしっかりめの体格、ツンツンの黒髪、尊大な態度。
そしてその口から出る言葉は今聞いたばかりの思念のくり返し。
「いま喚んだよな」
「呼んでない」「よんでないですよ」
呼ばれてないのにジャジャジャジャーン、だ。
いやいや、冗談言ってる場合じゃない。
明らかに私たちが目当てで瞬間移動で現れたとしか思えない目の前の男子。危険を感じずにはいられない状況だけど、よく叫び声を上げなかったものだ、私。
なにかもう超常現象にここ数日で慣れてきたかも知れない。
しかし見知らないとは言ったがなんか見覚えがあるような・・・
それに広世さんはちょっと驚いてはいるけど、彼のことは知ってるみたいなんだ。
(まいりました。常識が通じないという事はこういう事なのですね・・・。彼らには問題が起きないように我が家の体制が整ってからお呼びするまで、こちらで用意した部屋で大人しくしているように頼んでおいたのですが)
んん、ちょっと待て、と言うことは、こいつはつまり今話してたチビ龍のどっちかってことなの?
変身なの?
いやしかし、その姿に人間としての違和感は感じない。
そして彼は自分の行動に何の疑問も感じてない感じで言う。
「今オレたちの話をしてたろう」
結構離れたところの念話での会話をキャッチして瞬時に現れる・・・
エゴサーチ半端ねえ・・・。
てな冗談はともかくホントにどんだけ恐ろしい力を持ってるんだろう。
しかしまあ、それで呼ばれた事にして出てきたってワケなんか。
なんというか、ほんと何と言っていいか・・・だね。
たぶん黒い方のだこいつ。
それなら、まあどうでもいいことなんだけど、こいつ自分のことワレとか言ってたの、変えたね?
とか何とか考えていると、また起こるつむじ風ともう一人の登場。
サラサラの色素の薄い頭髪、透き通る白い肌、怪しい赤い瞳。
なるほど二人とも龍の姿のイメージを踏まえた感じで人の姿になってる気はする。
見覚えがある気がするわけだ・・・?
でも、何か引っかかる。もっと前から知ってる?
いやいや、そんなことがあるわけがない。
益体も無い事を考えてると、その白い方のが黒い奴の方を向いて口を開く。
「お~い、こら、帰るよ。早速迷惑かけて。今の立場を理解したんじゃなかったんですか」
しおらしいことを言ってるけど、こいつだってすごい登場して、迷惑ってんならたいして変わらない。
あーー、いい加減もうちょっと落ち着かないものか。
大変な状況に巻き込まれてるのは分かってるけど、バタバタしすぎてるんじゃないかと思う。
いたいけな一般人にはちょっと荷が勝ちすぎてる。
まあでも驚きとあまりに色々起きすぎるせいで恐怖はあんまり感じてないようには思う。今私はたぶん冷静なんだろう。
そしてこんなにバタバタしてるのに、この狭い保健室にいる先生と他の生徒の反応がないのが不思議。まあ、目の前の3人の誰かがなんかしてるんだろうけどな。
まいどおまたせです。
まあ次も大変お待たせすると思いますが、必ず次もあるのでよかったらまっててね。




