A1.さといも
ごめんなさいよ。
ストーリーの区切りもついてないのにストーリーに関係ない小話が割り込みますよ。
何でも無い、ある日。
まだ広世ぷらむにも出会ってないし、龍や別世界の実在など知らない、それはほんのちょっと前のはなし。
おさんぽついでの、お使いでよった近所のスーパーマーケット。
たのまれた買い物と個人的にほしいものはバスケットにもう入って、少し店内をうろついているとき。
そこは野菜売り場の一角〈新鮮!りゅうな市〉。
いわゆる農家直送、お野菜の直売所というヤツだ。
そしてここは私のおばあちゃんがほぼ毎日、畑で採れたものを置かせてもらってるその一カ所でもある。
そこで見覚えがあるおばさんが、もう一人の婦人、ご近所か友人らしき人としゃべってるのが少し気になってしまった。
彼女たちの話題そして指差す先は里芋。
しかしそのサイズは通常の1個の数倍から大きいのは十倍ぐらいあるいわゆる〈親芋〉というヤツだね。
大きさも値段もそして値段のシールにいっしょに記載されている生産・出品者の名前も様々な、そのお芋たちの中にはおばあちゃんの名前があるヤツが並んでいることもあるのだけど、今はそのことはいい。気になるのは親芋のことでおばさんたちが話している内容。
「ですから、お安いのはいいですけど、要するに種芋、古い芋なんでしょう?試しに買ってみるにしても大きすぎるしねえ、やっぱり普通のにしようかしら、ねえ?」
「そうねえ」
店員を呼びつけて訊いたりググってみたりするほどの興味も無いらしく、奥様方は普通の大きさの芋が入った袋を数個カートに乗ったバスケットに入れ、離れていく。
ああ、もったいない。作る料理と量によっては親芋のがいいし、ちょっとした間違いも気になる。
でしゃばりやおせっかいは私の人生でもっとも避けたいモノにあげられる類いの事柄。もちろん受けるのも自分がするのも両方の意味で、だ。けど、なんだろう、私自身がすごく気にかかることを放置するのは、ちょっとイヤ。
かといって目が合ってもいない人をわざわざ呼び止めてコミュニケーションとるなんて冗談じゃ無い。
そう思ってたはずなんだけど。
「あの・・・」
気がつけば幼児が母親の裾を掴むが如く、そのおばさんを呼び止めてしまっていた。
「おや、彩葉さんとこのお孫ちゃんだね」
うっ、自分のことを知られてるとは思ってなかった。まあ、こっちからウッカリ話しかけた以上、その方が良かったんだけど、ちょっとびっくりした。
「はいっ、こんにちは」とりあえず一拍遅れのごあいさつ・・・
「それで、どうしたんだい」
「あの、いま、里芋の話をしているのを聞いていたんですが、その、親芋のことについて、ちょっと気になたの、で、聞いてくれたら、と」
じっと相手の顔を見て話すなんて出来ないので、話題に合わせてそれらしくごまかして陳列された里芋の方を見たりしながらなんとかしゃべる。
「それと、よかったらお料理の・・その、メニューとその量なんかも教えて、くれたら、あの、その、全部ちょっと調べたら私なんかよりわかりやすく説明されてるウェブサイトが見つかることなんですけど・・・」
しゃべってるうちに自分の説明しようとしてたことが馬鹿らしく思えてきてワタワタしてしまった。
けどそれを見て、おばさんが私をなだめつつ、少し笑いつつ声をかけてくれる。
「あらあらそんなにならなくたって話くらい聞くわよ?ちょっと息子を待たないといけないしね。あなたもいいわよねえ?」と、もう一人のおばさんにも同意を求める。そしてその答えは
「そうねぇ」
この人はそんな感じなのかな。
なにはともあれ、私は里芋講釈をしないといけなくなった。
自分で持ちかけたことだよ。わかってるよ。でも・・・、自分で自分が時々わからない。
聞いているおばさんたちが子供の話すことを微笑ましげに聞いてくれた、という感じもあって、なんとか言いたいことは言えたと思うけど、そこで私がした、たどたどしい話したまんまなんてここで話さないよ。
まあ、その内容はこんな感じだった。
まず里芋の親芋というのは、種芋ではないということ。
春に土作りの済んだ畑に種芋が植え付けられます。
その種芋から芽が出てのびて茎が伸び、葉がつきますが、種芋から上に伸びた茎の本に新しくできるのが親芋なのですね。
種類によって形体に結構違いがあるけど、この親芋がまず太って、その親芋の横に芽が出て出来るのが小芋。通常一つの種芋からは一つの親芋が出来て、地上には太くて高い茎の上にこれまたでっかい葉がつきます。そして親芋から出来る小芋はたいてい複数で、小芋からも茎と葉がでることもあるし、小芋にさらに芋がついたりします(その芋は当然孫芋という)。
最近になって直売所などで親芋も手に入るようになって、普通に知ってる人もいないことはなくなった親芋だけど、通常の流通にのって小売店に売ってある里芋と言ったら小芋や孫芋のことだ。
それに里芋の種類によったら親芋はあまり食用に適さないものもある。売ってあるものにそうゆうのはないと思うから心配はないし、どの親芋もべつに毒があったりするわけじゃないんだけどね。
まあ、でも、食用に売ってあるヤツも、親芋は小芋よりやっぱり硬いし味もたしょう劣るんだ。
なにより1個が大きいので当然普通の芋の一袋よりずいぶん量が多い。だから使用用途が限られてしまう。まあ、レシピなんかそれこそネットで調べてくださいね、なんだけど、私のおすすめはコロッケとポテトチップス。作り方はじゃが芋のといっしょ。
「ついでに、もうひとつだけ。里芋は冷蔵庫や冷えるところで、保存しないほうがいい、です。低温が苦手な特性の植物で、低温下では内部の糖質を消費して硬くなったり、早く傷む、よ」
ああっ、気がつけばずいぶんとくっちゃべってしまった。しかも親しくもない大人相手にえらそうに蘊蓄を!
はずかしっ。
早くなんとかここを離れたい。
とそこへ確か同級生の男子が商品棚のカゲから現れる。
「あ、やっときたね。決まったのかい」
おばさんが彼に向かってきく。
親子なんだ。道理で見覚えがあるはず。
彼の手にはでっかいスポーツドリンクのペットボトルと、これもでっかい袋のスナック菓子。
あいては母親と買い物に来ているなんて事、私は大変思いがけない遭遇で、お互い大変気まずい。
おばさんとの挨拶もおざなりに、あわててその場を離れたのだった。
それだけ。
・・・本編のお話が全くの途中でこんなのを割り込ませることを許せとは、言わないが、書いて上げちゃったんだからしょうがないよね?
作者自身のお仕事(農業)は、稲刈りはとっくに終わりその後のそれにかかる諸々がようやくなんとか落ち着いて、ちょっとだけ時間が出来てはいるのですが、どうにも本編が躓いちまって、ちょっとずつしか進まないのです。
まあ、そもそも余暇の大半は読書や色々趣味の鑑賞をせんと創作の意欲がわかない質ですし、毎日頑張ってモニターの前に座ってキーボードを叩いてはみるが、どうにも進まないの。
元々お野菜のことなんかをお話の中に絡めて出せればいいなとは思っていたのですがね。
1個だけフライングする。
本文中のイラストは説明のために簡略化したヤツだからね。
実際のかたまりの里芋はこんなかんじ。




