12.暴走の結末と、それから
その日、我が校の一角で起きた騒動は私の心の中だけで大変な事件になりかけて、人知れずそれは治まった。
しかしまだ、騒動自体はどうにもならずにそこにある。
結果的に事態をややこしくしただけの私は広世さんに縋り付いて泣いている。
そんな状況で、支援学級の子達もヤジ馬も事を起こした張本人のバカ上級生も、私の行動に関してなにが起きたか分からずに、しばしフリーズ状態。
ただ、またもや広世さんは、あろうことか大声をあげて叫んだもんだから、たぶんその効果もあって、固まってるのでもあるのだろう。
私は少し落ち着いたところで考える。そしてこれは大変恥ずかしいけど広世さんから離れられない、と言う事に気付く。
私のメガネはさっき転んだときにヒビが入ってたもんだから、自分で投げといてなんだけど勢い余ってすっ飛んで、壁かどっかに当たって、レンズがすっかり砕け散ってしまってたんだ。
これでは能力の制御が大変難しい。目に入る情報のことごとくに能力を使ってしまうなんて事はさすがに無いけど、ちょっと意識を対象に向けてしまうと能力のターゲットになってしまうので、対象のちょっとした分析だけでも「チリも積もれば」で消費が激しい。
それに、気付けば結構な人集りが出来てて、その人々が対象になってしまったら下手すると知りたくも無い事まで見えてしまって、またもや天に怨嗟を吐くことになる。
さっき私がちょっと疑問に思った事、広世さんが居て、私の能力が使えたり使えなかったりする事。
冷静になって考えてみたら、私がそんな事知る前から同じ校内で二人とも居て、これまで私の能力が使えたり使えなかったりした事なんて無いのだから、広世さんの能力発動優先格とやらの有効範囲は、そうとう狭いに違いない。
よってその能力発動優先格とやらを逆利用して私の能力を抑えるためには、できるだけ彼女の近くに居るしかないし、あとは目を閉じて何も見ないようにするぐらいしかできないけど、それでは何もできない。
まあでも、すでに私はメガネなしの本気の能力を使ってしまった反動で朦朧としている。とりあえず何もかも放り出して眠ってしまうのも悪くないか。
とか思ってたら広世さん、私がちょっと落ちついたのを見計らって、未だに固まってはいるが何か言いたげな顔の、この騒動の発端である先輩男子に向かって口を開く。
「先輩に対して失礼かも知れませんが、はっきり言わせてもらえば、わたくし怒ってます。ただ、あなたの非道な行為と言葉にはあえて何も言いません」
ちょっとも非礼をわびる感じも無ければ、彼女の言う通り怒気を含んだ声で、まっすぐガタイのいい男子上級生をにらみ返しながら言葉を続ける。
「けれど、いいですか、萌ちゃんを泣かせたのは許せません。絶対にです」
うぅわあー、何言ってんのこの子は。
はずい、ハズい、恥ずかしいぃー
抱き合っちゃってる今の状況でこれでは一体周りのヤジ馬にどんな印象を与えてしまうのか・・・ああ考えたくない。
あと思い出したくは無いが、泣いたことを言うなら昨日あんたん家でも私、盛大に泣いてたよ。
(はいっ、ですからわたくしあの子達もしっかり叱っておきましたからね)
念話で何か言ってる。
やっぱり肝心なことが分かってない。
私の事が分かってないのは仕方が無いのかなぁ。
私も彼女と広世家の事情は分からないし。
でも私があのドラゴン(?)たちを怖がって泣いたみたいに思われてるのはむっちゃ心外だよ。
・・・おおーい、私の思考、聞こえちゃってるんだよね。
あ、ダメだ、やっぱりこの子理解できてないぞ。
キョトンとしてしまって大変かわいい・・・じゃなくってぇー
あー、みんな、皆さん、あなたたち、私、今、ホントにかわいい女の子に大変な状況で仕方なく・・・じゃないけど抱きついてます。ヘンになってます。わかって。
いやいやいや、頭を切り替えろ。
・・・ああ、でもあの自称“龍神”とか言ってた奴ら起きてるのか。そこはちょっと気になる。
けどそれよりも、今は目の前の事態のがまだまだ問題。
広世さん、もう私にはあんたを否定することはできない。
彼女が止めてくれなければひょっとしてやちゃってたことを思うと・・・
だけどだ、あんたの声にある能力のカリスマというヤツは、その声で相手を否定してしまったら一体どうなるんだい。
見てみなよ、イキリまくってたあの先輩男子がひざをついてワナワナしてるじゃん。
まあ、彼に対しては、ざまあみろ、てな感じだけど。
けどね、ここは学校なんだ。何か異常事態があればそりゃあ先生がすっ飛んでくる。
その先生を呼んできたのがなぜか我がクラスの悪口言いのおせっかい男子だったんだけど。
そいつ(名前は田村だっけ?)ともう一人、彼とよく一緒にいるやはりクラスメイト(イケメン)もいたけどまあこっちも名前も知らない。
先生と彼らの話を聞いてると、それぞれの名前も言ってたけどどうせ覚えられない。
それはともかく、どうもこのバカ先輩は彼らの部活の先輩らしい。
ただ、もうすぐ次の授業開始時間だ。
佳奈ちゃんはなんともないみたいだけど一応保健室へ、カウンセリングは担任がしてくれるでしょう。
騒ぎにはなったけどケガとかした生徒がいるわけではないという事で、とち狂ったクソ先輩だけは放課後になにがしかの質疑があるとのことだけど、群がった生徒達全員速やかに各自教室に向かいなさいということになった。
私としては、彼の内的な事情など知ったことでは無し、何によってあんな発言をするに至ったか、あるいは今日この日なんであのように荒ぶっていたのかなんて知りたくも無い事だけど、彼だけは未来に何があろうとお友達には成れないと思う、それだけ。ただ手を出さないで良かったとは思っているのだけれども・・・
とにもかくにも、一応この騒ぎは解散と相成った。
沢山の注目もあったことだし、広世さんの能力の効果は知らんけど、結果的に何をしたというわけでも無い私たちの対してどうこうという事は無さそう。
さてと、色々と思うことはあるけどとりあえず教室に戻らねば。
広世さんに手を引いてもらって壁につけてた背を離して歩き出そうとする、の、だが、
あ・・・れ・・・そういや、私、フラフラだったんだ。
わ、は、ととと、ダメだ、歩けない。
そんな私を見て青ざめる広世さん。
「ごめん、お腹空いて倒れそう」
へなへなぺったし、ばたんきゅう。
「きゃあ、誰か、萌ちゃんが、萌ちゃんがー」
だからあんたまた大声出して。大袈裟だし。
結局保健室に舞い戻る私たち。
広世さんに自販機にある一番甘いミルクセーキドリンクを買ってきてもらったし、結局付き合ってもらっちゃっているんだな。
「ありがとう」
お礼を言い忘れてたので一言だけ言ってみる。
これだとドリンクと付き添いに対して言ったみたいだけど、さっきの私を止めてくれたことに、のつもりなんだけど・・・
まあ分かっちゃってるんだよね。
いいかげん、ほんの表層だけと言ったって、意識が繋がったままっての、どうにかならないかな。
いやいや、そんなのはともかく・・・ああ、やっぱりおかしい。
「ひとつ訊いてもいい?」
「はい?・・・先程も何か尋ねかけて止めてしまわれましたが、何でしょう?」
そっちは、あんたに頭ん中のぞかれっぱなしになってる件だよ。
「それは、もう確認できたからいい。そのことじゃ無くて・・・あんたさ、んん、何て言えばいいのかな」
まあまず私自身がおかしいのを認めた上での事だけど。
なにせ私、さっきはどう言い訳しても狂ってるとしか言えない状態だった。
そこまでするほどのことでも無いのに人一人・・・殺そうと思ったんだよ。
その行為を事前に止めてくれたことには最大限の感謝を感じずにはいられないが、こんな私になお執着する訳がどうにも分からんのだ。
そして今日のことが無くても、私が私自身を肯定し好きでいる事と他人にとっての価値は違うのはよく分かってる。それにここ両日で私自身、自分を肯定する気持ちがいろんな意味で揺らいでる。
一体こんな私のどこに価値を見いだして近づいてきてるのか全くわからない。
ふと彼女を見るとぷうっとふくれっ面。
そして私がどうやって切り出そうか迷ってるうちに勝手に心のセリフを聞いてた彼女が念話でしゃべりかける。
(萌ちゃんも分かってませんね、人同士の繋がりってそんなものじゃ無いですよ。確かに我が家の思惑みたいなものも、わたくし自身の萌ちゃんに対する感情以外の利害関係もあることは間違いないのですが、わたくしの萌ちゃんに持ってる感情はそういうこととは別の話です。
わたくしが好きな萌ちゃんが自分自身を悪い方へ疑うのは哀しくなります。正しい反省は必要なことですけれど、萌ちゃんが自身を否定す必要があるように思えません止めてください)
「にひひ・・」歯を食いしばって暗くてもやっとした感情を口に出したら笑い声になった・・・
(・・・?)ぷらむさん、またそうやってキョトンとする。
「私だって・・・強がりにしたって、いつもは、精一杯自分のこと肯定してやってきたんだよ。そうだよ、別にいつもウジウジしてるわけじゃない」
これはいけない、けど止まんない。それに口に出さなくったって聞かれてしまうんだ。もうしょうがないじゃんか。
「私もあんたのことは何も知らないけど、あんたが私のなにを知ってるの。あんたの言うことはもっともなことだし私のために言ってくれてるのでしょうけど、今私の頭ん中まで覗いてるあんたが、気持ちを逆なでするようなことを言うのはね・・・、さっきは私のことを止めてくれたのはホントに、本当にに助かったから、こんな事言いたくないのに・・・、ああ、何言ってんだろうね、ホント」
いつになく言葉が出るのはいいが言ってることが支離滅裂だ。
(・・・ごめんなさい萌ちゃん、でもわたくしが言いたいのは、確かにあの時萌ちゃんが持ってた感情は良いものではありませんでしたが、わたくしたちが持ってるチカラは並の人と桁違いなのですから、そういう気持ちになる時があるのは、ある意味仕方が無いのだという事です)
は?なんですって?
私たち?
桁違いのチカラ?
(ですから要はそういう事をちゃんと認識して、抑えるすべも知っておくことが大事なのです)
ぽく・ぽく・ぽく・・・・・・ちーん
はあ?
毎度お待たせです。
稲刈り中なんだよう。
ちょっと書いておきたいことがございます。
が、これより下の文章は、作品内容とは全く関係が無いし、本文をちょっとでも楽しく読んでいただいている奇特な方には不快になるかも知れないのでどうか読まずにページを閉じて次回投稿を気長にお待ちください。
私の文章力は言うまでもなく低いので、当然のように起こるであろう誤解というか私の意図から外れる解釈が怖いのでこのような情けない文章を記すのです。
特別支援学級と障害者についてです。
なんでこのような設定になったかは忘れてしまったのですが、ストーリー上、別に主人公が気にかける対象が彼らである必要が避けられないほど強いワケでもなければ、あの上級生にからまれる佳奈ちゃんがそうである必然性も低いんじゃないか、と言われれば全くその通りです。
このような事柄は少々デリケートな問題があるのも理解しているつもりですが、まず一つ書いておきたいのは、そもそもそういうのが問題視されるのが気に食わない。
塵芥に等しいこの作品で何を書こうがどうという事はないけど、本文内容においては、ことさらややこしく考えずにさらっと読んでいただきたい。
また設定でそう決めてあっても、明記せずにそうにおわせる程度にするという表現もあるでしょうが、本作ではそうはなりませんでした。
力不足で表現しきれないし本作の趣旨からもズレるのでそこらをアツく書きたくもないのでこんな所でグダグダと言い訳めいたことを書いているわけですが、
彼ら彼女らはいわゆる健常者と同じように普通にそこに存在しているということを分かって欲しい。
少人数ながら普通にどこにでもいるでしょ、彼らは。それを認識してくれるだけで良いんですよ。
ことさら気にかける必要は無いけど(なにかできることがあると思うならアプローチするのも悪くは無い)、何も考えないことや否定するのがよろしくないということ。
彼ら彼女らは今ある社会に適応してもらうためにサポートが必要な場合があるから区別されてるだけで、大多数の人間の都合でそうなってるんだよ。彼らと健常者が上だとか下だとか差異があるなんて事は無い。
要は現状の社会が不完全であるということなんだけれど、この状態が悪いと言っているわけではない。
理想論を言ったところで無理。
ただ、彼らには大多数の都合を押しつけているのだということ。
社会生活に問題ないとされるいわゆる健常者の中にだって現状社会で障害とされるものと同程度かそれ以上の欠陥がある者なんてそれこそ普通にいくらでもいる。
本人や周りの人の苦悩というのはもちろんあるでしょうがそれはまた別の話で他人がどうこう言って良いことでは無いと思う。
ただ前述の通りこれらの主張はわたくし個人のもので作品内容には全く関係が無い。
作品内において何か変な主張を感じてしまったらごめんなさい、と言うそういう話でした。
この駄文においても、どっかのおっさんが何か言ってた程度に思っていただくか、スパッと忘れて欲しい。
それじゃあ、また次の萌ちゃん達のバカバカしい活躍(?)を乞うご期待。




