10.彩葉萌の暴走(2)
授業終了と同時に教室からかけ出す。
まさかとは思うが、さっきの授業でのことで誰かに話しかけられるのは嫌だかね。
マジで学校でも私の能力が使える方法を考えんといかん。
んーー、いや、使えんことはない。
無理なく自然に安全に、と言うのが無理なんだ。
・・・世の中そんなに甘くない・・・よね。
しかし先生もカリキュラムからの脱線はほどほどにして欲しい。数学の世界の広がりを紹介してくれるのはいいけど、解答法を説明する前に生徒にやらせてみるなんて、意図は分かるけどこっちはたまったものじゃない。
まあそりゃ、授業を聞いてなかった私が悪いんだけどさ。
はあ・・・
あの問題の解答については褒められましたとも。もちろん先生もビミョーな感じで、内面嫌々ながらでしょうけど。
だってそうでしょう。先生の思惑は、まず生徒が問題を解けないことを前提にしてたはずだからね。
あの場合問題の難易度自体は低かったところがミソだ。中学校の数学を使っても解けないことはないというのも後で考えればわかる。ただしその場合えらく面倒なことになるけどね。
先生が数学というものの面白さを教えてくれようとしているのは分かるよ。
でも、今の私たちの前で高度な問題を適切な公式で簡単に解いて見せてもあんまり意味はないよね。
まず中学生の数学なんて大体は授業の内容を覚えてテストの問題がまあまあできるくらいが普通。ちゃんと理解して応用までできれば、“大変よくできました”だ。よって、そこからさらに数学のなんたるかなんてあんまり考えない。
それに数学という学問自体に興味がないとあれは面白くないし、どうも数学者脳の人間はそうじゃない者が数学自体があんまり面白くないのが分かってないんじゃなかろうか。理解する努力と知識量が足りてないだけじゃないんだよ?
まあ、私が言うことじゃないけどな。
しかし、先生は数学者じゃなくて学校の先生なんだから、そこらへんは判っててくれよと思う。
まあ、頭ん中でブチブチ愚痴ってても意味ないどころかイライラが増すだけだ。
いやホントにもうずっと愚痴ばっか言ってる気がする。
でも、元々のイライラの原因より他のこと考えてたほうが気がまぎれるか?
それともちゃんとイライラの正体に向き合ったほうがいいのか?
・・・イヤだよそれは。
今日はもうずーっとイライラ、ムカムカしてるんだよね。
自分でももう気付いてるその原因の本当の正体をちょっと思っただけで、他に何も頭が回らないくらい、考えたくないことなんだ。
もうっ、考えたくないことだってのに、結局頭に浮かんできて離れない。
自分で自分が嫌になるって事はみんな普通にあるかい?
私は滅多にない。
自分のダメなところは大体わかってるし、それで落ち込んだりはしない。
そりゃあ昔、もっと子供のときには色々あった気がする。
でも今は自分で自分が好きでいられるだけで十分だと思う。
自分で自分が好きでいられる理由なんかちょっとだけでいいんだからね。
まあところが、たまにどうしようもなく嫌になっちゃう時がやっぱりあるんだ。
そういう時は、滅多にないだけに、ひどく落ち込んだりイライラしたりしちゃう。
さらに今日の場合、すぐには自分でどうしようもないのに気になって仕方が無い案件が山積みであることも、イライラを増長する。
まあ、散歩だ散歩。歩いて気をまぎらわすのだ。
・・・ ・・・ ・・・
てふてふてひてふ・・・ピンッ
向こうに、たぶん上級生の男子が不機嫌を隠しもせず、むしろ撒き散らしながら歩いていく。
と言ってもまさか破壊活動をしているわけではないんだけど、ずいぶんと態度が悪い。
わざわざ下級生の教室がある上階に来て、なにやらわめいている。
目が合った相手がすぐに挨拶しないとかなんとか、ホントにくだらないことで色々あちこちにイチャモンつけて怒鳴り散らしたりしてるのは、かなりあほらしいけど目に余る。
自分がイライラしてるからと言ってあんなのに親近感は湧かないよ。
触らぬバカにたたりなし。
ちゃっちゃと向こうへ行こ。
・・・くそっ。いつもならあんなやつ、と言うか他人がどうしてようと自分に関わらなけりゃ気にもならないのに、どうしたことか無性に腹が立つ。
この先輩は一体何で機嫌が悪くなってるのか知らないけどね、全くもって、周りに当たり散らすバカ、クソバカ、要らねえ。
ダメだ。こんなん思ってたら私こそバカな行動をおこしかねない。
休み時間ももう終わる。ホントになんであんなのを見かけてしまったのか。早く教室へ戻ろう。
次の時限ではヘマはしないようにちゃんとするとして、頭の中のこのイライラモヤモヤはどうしたらいいんだ。
てふてふ・・・・・・カッツン!
あっっ!
バッターーン
「んごっっ!!」
こけた。何も無いところで。おもいっきりこけた。
私はバンザイの格好で床にうつ伏せでへばりついてた。
うわーうわーうわー、もうっもうっもうっっ、なんでこんなめにっ。
・・・ああ分かってるよっ、とろくさいくせに考え事なんかしながら早歩きなんかしてるからなんだろうさ。
鼻打った。
ぺちゃ鼻なんだからせめてこんな時には・・・って思う。
痛い。素早く立ちあがることなんかできない。
バレバレでも、なんでもない風に起き上がって走り去りたいところだけど、こけ方もタイミングも外しちゃったし。
てかまあ、私が身体能力関係の失敗をどう繕ったところで、さらにかっこ悪いことにしかならないんだけど。
あっ。メガネ。
メガネは、ああ、ヒビが・・・
これくらいなら機能に問題はないだろうけど・・・うう・・
んだよもう、踏んだり蹴ったりにも程があるだろう。
不幸続きなどとそんなおおげさに思ったりはしない。くだらない不運が重なってるだけ。
だけども、ここまでひどいとグチもおさまらない。信じてもいない神様とやらにも悪態がつきたくなるというものだ。
ああ、もうっ!
とりあえず、私のことをどうするでもなく見ている連中に軽く拒絶のガンくれつつ(迫力のかけらもないけどなー)、のそのそと立ちあがる。
そこへあわてて駆け寄る金髪美少女。言わずと知れた広世ぷらむ。
てか、なんで、今、ここに居るの。
(萌ちゃん、あ、あの、周りに人がいますので、テ、テレパシーでの会話で失礼致します)
あのなあ、それじゃあ余計怪しくないかぁ。
「んにゅう~~」
何とも情けない顔で変な声を上げる広世ぷらむ。しかし私と目を合わせた途端、
「萌ちゃん!たいへんっ」
そうやってすぐに色々忘れて声を上げる。今までどうやって体裁を繕ってきたんだろう、この子は。
しかし私がどうだって?ああ、メガネかな?
「血がっ、鼻血がでてますっ、いっぱいっ」
「ぼえ?」
申し訳ない。
引き続きあまりにも筆が進まないので、
大変少なめですがいっぺん上げときます。




