白い空間と、神様と神様の使い
ん?目覚めるとそこは、真っ白な空間だった。
いや、目覚めるっておかしくないか?
だって俺は死んだはずだ。
そう、俺はトラックに跳ねられて死んだ。
ばっちし覚えてる。
死んでも意識ってあるのか?
今まで死んだことないし分からないから、なんとも言えないな。
しかし、真っ白だ。
建物がある訳でもないし、人がいる訳でもない。
ホントの真っ白な空間が広がっている。
これからどうしたらいいんだろうか?
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、」
「だ、誰っ!」
急にお爺さんみたいな声が聞こえたぞ!どこだ!何処にいるんだ!
「後ろじゃよ、うしろ」
俺はゆっくりと後ろを向いた。
そこに結構な長さの白ひげを生やした爺さんがいた。
「あ、どうも。」
「うむ、元気そうじゃの」
「ん?」「ん?なんじゃ?」
「ええええぇええ!?」
「なんじゃ、煩いのぉ」
ひ、人がいた!
野生の人が現れた!
テレテレテレテレテテンテンテンテン
夜旗はどうする?
闘う 逃げる 質問する 逃げる。
いや、まじでびっくりして逃げるコマンドが2つあるけどそんなの気にしない!
どうしよう!?何もない空間で人に出会ったら怖いでしょ普通!
「さっきからホントに煩いのぉ。少し静かにせんか」
「す、すいません。」
まぁ話を聞いてみるか、その方が良さそうだし。
まぁでも見るからに凄そうなんだよな。
なんかこうオーラ的な?存在感的な?もうなんでもいいや、・・・でもすごいんだよ。
「・・・も、もしかして神様?」
「うむ、左様じゃ。わしは剣闘神アウルゼルと申す。お主を迎えに来たのじゃ。」
そ、そうか。
やっぱり俺は死んで、魂的な何かを輪廻転生させるが為に迎えに来たとね。
なるほど、なるほど。
「何を勘違いしておるのじゃ、お主は。転生ではなく転移じゃよ。」
「え?転移ですか?」「左様じゃ。」
「異世界転移みたいな?」「うむ」
う、嘘だろ?
まじでそうゆうのあるの?
漫画とかアニメとかだと思っていたんだけど、現実にあるの?え?
「ふっは、はっはっはっはっはっ!」
はい、頭おかしくなってます。
わかってます。自分でも現実を受け止めきれてないんです。許してください。
ていうか、心の声が筒抜けなのね
。
「ちょっ、いきなり何を言い出すんですか?剣闘神さん。そんな上手い話ないでしょ?」
「うむ、少し融通が利かぬのか。ならば・・・」
爺さんはそう言うと、いきなり地面が揺れだした。
え?なに?今度はなに?
ゴゴゴゴゴと言う音と共に揺れる。
かなり揺れている、立っていられないくらいに。
ゆ、許してください。数々の非礼を許してっ!お願い!
泣きそうな目でそう訴えると揺れが収まった。
「さて、わしと一緒に来い。」
「へ、へい」
もう、疲れた。
――――――――――――
しばらく歩くと建物が見えた。
ちょっと古風な感じの家だ。屋根に瓦が使われていたり、松の木があったり。
だけどそれ以外は真っ白だ。
もしかしてここが爺さんの家なのかな?
もしそうだったらかなりマッチしてる。
なんか、こう園側であっついお茶飲んでそうなイメージだし。
「ここは今からお主が寝泊まりする家じゃ。わしが用意したからのぉ。」
なるほど、俺が園側であっついお茶を飲むんですね。チガウダロォ!
マズイ、問題を起こした議員が出てきてしまった。
ん?あれ?爺さんの家じゃないの?
「俺の家ですか?爺さんのじゃないの?」
「わしはちゃんと別にあるわい。」
そう言ってカッカッカッと笑う爺さん。
というか何故、寝泊まりしないといけないの?
すぐにでも行こうよ異世界。
「お主にはこれから修行をしてもらうからのぉ。何せ、お主が行く異世界は魔獣とやらがおるからの。簡単に死なぬように強くするのじゃ。」
「おぉ!」
出ましたよ!魔獣。
やっぱそうだよね。異世界と言ったら魔法に剣、魔物に魔獣ですよね!
魔王とか居たりして!夢が広がるなぁ!
「じゃあ、まずはこの家の周りを1000周走るのじゃ。」
ん?よく聞こえなかったなぁ。
10周?ちょろいちょろい。
「それじゃ、行ってきます。」
と言った瞬間、爺さんに肩をおもっきし叩かれ言われた。
しかもめっちゃ怖い顔で。
「1000周じゃぞ?わかっておるな?」
「ひ、ひゃい」
お、俺はゆっくりと走り出した。正直チビる所だった。
恐ろしいな神様は。
――――――――――――
俺は今、走り続けている。
脳内には有名な24時間テレビのマラソンの曲が流れているだろう。
何故こうなったのか?
神様に走れって言われました。クッソォウ!
今は多分50周目ぐらいだろう。
も、もうふくらはぎがパンパンだ。活動限界時間をゆうに超えているよこれ。
俺もEV〇みたいに暴走出来ないかな?
そんなこんなで考えてると意外と結構走ってるんだよね。
でも、もう無理っすわ。
だってさっきから走る度にプチプチって筋肉言うてますもん。
ていうか足が上がりません。
あぁーもう無理限界っすぅ。
「うむ!もう良いぞぉ!」
「ぐへぇ」
「よく頑張ったのぉ!偉いのじゃ。」
もう歩けないぞこれ。
何周走ったんだろうか?もう数えてないから分からないな。
なんか瞼が重いな。もしかして気絶しちゃうのかな?
まぁいいや、もう疲れたし、動きたくない。
「なんじゃ?寝てしもうたのか。仕方ないのぉ、運んでやるとするか!」
最後に聞いた言葉は優しかった。
目覚めるとそこは知らない天井だった。
多分、爺さんに紹介された家の一部屋だろう。
むっくりと体を起こす。ふくらはぎを気にするが特になんともなかった。
むしろ元気そう。
いや、ふくらはぎが元気そうってどゆこと?
まぁいいや、ていうかいい匂いがする。
俺はゆっくりと立ち上がり、匂いの元へ行く。襖を開けるとそこには色々と料理が並べられていた。
見るからに日本料理だ。
白飯に鯖の塩焼き、味噌汁に漬物。めっちゃ美味しそう。
「ん?おや、目覚めたのかの?おはようなのじゃシズク。」
「あぁ、おはよう爺さ…。」
え?え?!
うっそだろ!?
爺さんがロリっ子になっているだと!
しかも、のじゃロリっだと!?
全体的に幼く、まじでロリだ!
外見年齢12歳くらいに見える。
そしてなんと、狐耳…だと…。
「爺さん・・・なのか?」
「ぷっ、あっははは!」「え?」
「そんなわけないじゃろ?妾は玉枝じゃ、よろしゅうな。」
「よ、よろしくお願いします。」
俺はぺこりと頭を下げた。
なんかめっちゃ失礼してしまったな、申し訳ないわホントに。
だよね 、いきなり性転換するなんてハチャメチャなことしないよね。
「爺さんは何処に居るのですか?」
「んー爺さんは自宅に帰っているのじゃ。」
玉枝さんは朝食?の準備をしながら返事をした。
「昨日はすまなかったのじゃ。シズクにキツい試練を課せて。」
「あーあの1000周走る奴ですか?」
「だいたいあのバカ爺が悪いのじゃ。最初は少なく走らせ、徐々に多くしろと言ったのに。」
「あっはは」
笑うしかないよな。
だってよ、1000周だぞ?
もう辛いね、まじで足がガクガクするもん。
結局走り切れてないし。
俺の名前も分かってんだね、爺さんから聞いたのかな?
「さて準備ができた故、食べるとするのじゃ。ほれほれ汝も座るのじゃ。」
なんかこう、優しさの塊を見ているかのようだ。
それにロリからの誘いだ。
断る理由・・・ないよなぁ!!
「はい、いただきます。」「いただきます。」
箸を握り、まずは鯖をいただく。
ん!?うまいっ!しっとりと脂があって、塩加減もいい!
やばい!これは白飯に合うぞ。
ていうか、味噌汁もうまいな!店で出てくるレベルの美味さだよ、これ!
やっばい、ここ天国だわ(今更)
うますぎて馬になるよ。
今度生まれ変わったら馬になろうと思います。(?)
こののじゃロリ、料理めっちゃ上手いな。
外見的に優良物件なのに中身まで良いとか、もう高級マンションの屋上並の素晴らしさだよ。
俺はゆっくりと箸を置いて。
「ご馳走様でした。」
「お粗末さまでした。」
いやぁ、もう死んでもいいね。(死んでます)
心が洗われる料理とか初めてだわ。
「シズク、ちとこっちに来るのじゃ。」
ん?なに?なんか、のじゃロリ様が膝をポンポンしてるんだけど。
ま、まさか伝説の膝枕すか?
え?え?許されるの?合法なのこれ?
「いいんですか?」
「よい、頭を預けるのじゃ。」
俺はゆっくりと頭を玉枝さんの柔らか膝に乗せる。
やばいやばいやばい!
や、柔らかいぞ!これ!
「よう、昨日は頑張ったのぉ。えらいえらいのじゃ。よしよーし。」
心が癒される。
こんなに優しくされたのはじめてだ。
親からは幼少期から虐待にあってたし、誰も助けてはくれなかった。
俺の瞳から流れるは一筋の涙だった。
「よいよい。今までが辛かったの、誰一人助けてはくれなかったのであろう?よく頑張ったのじゃ。」
そう言いながら俺の頭を優しく撫でてくれる。
小さいけど温かい、その温もりが嬉しかった。
「ありがとう。」
俺は震える声で答えた。
「ふふっ、可愛いのじゃシズクは」
俺と玉枝さんはしばらくずっとこのままだった。
どれぐらい経ったのか分からない。
ていうか俺が寝ちゃってた。
「シズク、これシズクや」
「んっ」
耳元で喋ってるからか、くすぐったい。
「早く起きてまた走らねば、爺さんが怒ってしまうのじゃ」
「んっ、わかった。」
俺は体を起こし、すぐに玄関に向かう。
すると玉枝さんがあとを着いてきた。
わざわざ見送りに来たのかな?
あ、そうだ!
「今度、玉枝のこと教えてください。」
「妾の事かえ?」「はい!」
「うむ、わかったのじゃ。」
「それじゃ行ってきます!」
「行ってらっしゃいなのじゃあ!」
俺は決めた。
のじゃロリの為に頑張ろう(?)
――――――――――――
家から出るとまだ爺さんは来てない様子。
俺はストレッチでもして待つことにした。
やっぱり体を柔らかくしとかないと怪我の元だしね。
10分後
まだ来ないのか?まぁ爺さんにも色々あるんだろうし、そのうち来るよね。
30分後
うーん、何かあったのかな?ちょっと心配になってきたぞ。
1時間後
もういい・・・、勝手に走っとこう。
いちいち待ってられないしね。
俺は待つのをやめ、走り出した。
昨日はどれだけ走ったか分からないが、多分60周ぐらいだろう。
ならば、今日は倍の120周走ってやる。
爺さんにあったら自慢してやるからな!
とまぁ走ってはみるけど無心で走るのも楽しくないし、何か考えるか?
そういえばこの家って結構広いよな。
建てるのが大変そうだ。あれ?どうやって作ったんだ?周りは何も無い空間だし、資材がないよな。
もしかして別のところで作って持ってきたのかな?
それだと納得がいく、にしてもおっきい家だよな。
この家の家事を一人でやってる玉枝さんは凄いな。
改めて感謝だ。
しばらく走っていると、周りが明るくなってくるのを確認できた。
多分、この空間にも昼と夜的なものがあるのだろう。
朝方は少し薄暗かったしね。
夜はやっぱり星とか見えるのかな?玉枝さんと見たいなぁ。
そんな事を考えながら走っていると、時間はどんどん過ぎて行った。
がむしゃらに走っていた訳では無い。
なんかこう、別の事を考えていると全く疲れが来なかった。
気づけば今の時間は夜だ。星空がキラキラと光っている。
結局、爺さんは来なかった。まぁあと1周ぐらい走りますか。
ゆっくりと走り、和風の家の玄関前で足を止めた。ここで1周だからだ。
正直言うと、まだ体力は残っている。
「ふぅ」とため息をつくとガラガラと玄関の扉が開かれる。
すると元気の良い狐耳がぴょこんと現れる。
そう、玉枝さんだ。
顔を扉から出すとニッコリと笑顔を向けてきた。あらヤダ、すっごく可愛い!
「今日はもういいのじゃよ。ささ、お風呂が沸いておるので入ると良いのじゃ。」
「えっと爺さんは?」
「さっき来ておったのじゃ、物凄く喜んでおったのぉ。」
「え?なんで?」
「秘密じゃ、ふふっ。」
よく分からないけど、爺さん来てたんだね。
もしかして俺が気づかなかっただけかも。
その後、俺は風呂に案内された。
そこはなんと露天風呂だった!
マジですごい!湯船からモワモワと湯気が出ており、めっちゃ気持ちよさそう。
「この露天風呂に入っていいの?」
「うむ、体をゆっくりと休めるのじゃ。」
「ありがとう!」
玉枝さんはその場を後にし、俺は脱衣所に来た。
服を脱ぎ、タオルを持っていざ行かん!
まずは身体を洗おうと思うのだが、普通にシャワーがあるのね。
ちょっとびっくりしたよ。
それにシャンプーとかもちゃんとあるし、凄い助かる。
早速、シャンプーを頭につけて優しく洗う。
それをシャワーで流し、次は体を洗うか。
ボディソープをボディタオルにつけてゴシゴシと泡を立ててから、体を洗う。
めっちゃいい匂いがする!シャンプーもそうだけど、いい匂いがしてすごくいいな。
体を洗い終わり、シャワーで流して一息ついた。
そしてついに、ご待望のお湯に浸かろうか。
ゆっくりと足先からお湯に入れて行き、体を沈める。
「あぁ〜///」
なんというか、必ず出てくるよなこの声。
風呂に浸かると「あぁ〜」って出ちゃうんだよ。
気持ちがいい、湯加減が最高っす。
改めて自分の体を見たけどホント、上半身だけは鍛えてんな。
父親からの虐待、母親からの勘当。
上半身は虐待から耐えるために鍛えた。
だってあまり下半身を蹴られたりしなかったもん。
虐待を受けた痕とか消えないし、まだ残ってんな。
おかげで綺麗な肌とは言えない、まぁそれでも良かった。
今思うと、死んで正解だったかも。
正直、俺が生きてても周りはゴミみたいな目で見てくるし。
そりゃそうだよな、だって必ず顔に傷があって、酷い時は包帯とか巻いてんだぞ。
そんな奴と周りは関わりたくないだろう。
でも最近は虐待されなかった。
代わりに俺の妹が虐待の対象になったからだ。
それだけが心残りだな。
俺はそれなりに成績はいいほうだった。
高校だって学費免除の話も出てたぐらいだ。
だから高校に入ったら妹と二人で暮らそうとしてたんだけど、先に死んでホントごめん。
ダメだな。
せっかくのお風呂が台無しだ。
もっと、ポジティブに考えよう。
もう過去のことは忘れるんだ。いや、妹の事は忘れたくない。
それ以外は忘れよう。
俺は上を見上げた。キラキラと星々が光っている。
あぁー綺麗だなぁとしか思わないけど。
うん、あれ?
ちょっと気になったことがあった。
いや、別に星とは関係ないのだけど。
上を見た時に俺の視界の上に、自分の髪がチラチラを見えるのだが、それが黒髪じゃないような?
俺は風呂から上がり、鏡を見てみる。
うん、やっぱりそうだ。
ちょっと黒髪に薄く蒼色が混じってる。
ん?髪を染めた覚えはないんだけどな。
それにちょっと俺、鼻が高くなったか?
顎もシュッとしてる気がする。
今まではちょっとふわっとした感じだったんだが。
あれ?顔が変わってる訳じゃないよな?
ちょっと怖いんだけど、まぁ玉枝さんに聞いてみよう。なんでも答えてくれそうだし。
そろそろ上がるか、ずっと入ってても心配されるだろうし。
俺はお風呂場を後にした。
用意された部屋着を着て、玉枝さんのところに向かう。
というか、部屋着が死ぬ前に家で着てた部屋着とか思っても見なかった。
玉枝さんのところに到着。
やはりいい匂いがする。ほほう、本日は肉じゃがですね。
ホクホクとしたジャガイモの甘い香りが部屋を充満させていた。
俺に気づき、すぐに駆け寄ってくるのじゃロリ狐さん。
「湯加減はどうだったのじゃ?」
「最高だった、ありがとう。」
「そうかそうか、流石の玉枝さんなのじゃ!えっへん!」
手を腰にやり、胸を出してえっへん!している。やはり可愛い!
今日は色々と聞きたい事があるし、いっぱい食べますか!
「食べるとするのじゃ。」
「いただきます。」「いただきますなのじゃ。」
ジャガイモを一口。
え?!うっま。
いや、これどれだけ煮たんだ?口の中で溶けたぞ。
うますぎる。
「シズクや」「はい?」
「これを飲むのじゃ!」
「それは・・・お酒?」「うむ!」
「いいの?」「良いのじゃ!」
渡されたのは梅酒だった。未成年だけど、いいのかな?少し甘酸っぱい香りが、鼻の奥を刺激する。
それを一口、飲んでみる。
おぉ!凄いなこれ!
初めて飲むお酒にちょっと感動した。
アルコール臭くないし、スっと入ってく感じ。
それなのにちゃんと味は口に絡まり、残ってる。
やばいなこれ。肉じゃがと梅酒のダブルパンチで完全にKOだ。
俺はひたすらに食べては酒をちょこちょこと飲んだ。
ちょっと落ち着いてきたところで、俺は玉枝さんに質問した。
「あの、ひとつ聞きたいことがあるだけど。」
「なんじゃ?」
俺の顔をじっと見つめる。
うん、ちょっと妹に似てるのかな?
いや、気のせいだ。多分外見年齢が近いからだろう。
俺は気にせず質問を続ける。
「俺って髪の色が変わってません?ちょっと蒼色が混じってる様な気がして。」
「うーむ、変わっておるのじゃ。ちょっとではなく、だいぶ変わったのじゃ。」
え?だいぶだと?
何処がどう変わったんだろうか?
鼻が高くなった気がするし、やっぱり顔変わってんのかな?
「よくよく見れば鼻が高くなったかの、顎も少し痩せたか?髪の色が黒髪に蒼色が混じってる様な色じゃの。紺色と言うべきかの?よく似合っておるのじゃ。」
「あ、うん、ありがとう。」
なんか嬉しかった。
そうか、顔も変わってるし、髪色も変わったと。
どうしてだ?
「どうしてか知りたいかえ?簡単じゃよ。シズクがこの空間に来て一日と10何時間、人間だったシズクがそれと離れようとしておるのじゃ。」
「つまり、人間じゃなくなるってこと?」
「うむ、物分りが良くて助かるのじゃ。」
なるほど、人間から離れるね。
ちょっと怖いけど、ここにいたら普通の事なのかも。
人間やめたら何になるのかな?吸血鬼すか?
俺は人間をやめるぞ!ジ〇ジ〇ぉぉお!!的な?
まぁ何はともあれ、髪の色が変わった原因がわかったから良かった。
「少し、気にならんかえ?」「ん?」
「人間をやめたら何になるのか」
「気になります。」
少し間が空いた。
ちょっと緊張するんだけど。
透明なコップに酒と一緒に入ってる氷が、カランと音を立てる。
「シズク次第ってとこなのじゃ。」
「俺次第?」
「シズクに選択権がある。神になろうが、そこら辺の蟻になろうが、シズク次第なのじゃ。」
「んーちょっと難しいっす。」
「あっはっはっ、それで良いのじゃよ。」
そう言って少し酒を煽る玉枝さん。
意外と酒に強いのかな?
色々と話が聞けてよかった。さて、ここからは玉枝さんについて聞いていくか。
やはり聞く内容はその狐耳だよね。
「玉枝さんって狐の耳とか尻尾とかあるけど、一体なんなの?」
煽っていた酒をテーブルに置き、一息つくとぴょこぴょこと耳が動いた。
なんだそのモーションは・・・。
「妾は・・・そうじゃの。人間で言うところのお稲荷さん・・・かの?妾はあまりその名前には興味がないのじゃけど、やってる事は同じじゃからの。」
「お、お稲荷さん!?」
「な、なんじゃ?そんなに驚くことかえ?」
いやだってお稲荷さんだぞ!
でも、狐って言われたらお稲荷さんを想像してしまう。
しかし、お稲荷さんがこんなに可愛かったとは・・・。
えぇー、誠に・・・遺憾で・・・あります(総理大臣視点)
ん?ひとつ気になることがあるぞ。
「お稲荷さんと同じ事をやっているって事は、もしかして神様達の使いなの?」
「そうじゃの。神様の悩みを聞いたり、命令を聞いたりするのじゃ。妾は爺さんの使いなのじゃよ。」
「なるほど、でもなんで今は俺と一緒にいるの?」
すると玉枝さん、ちょっと顔を赤らめて
「も、もちろん一緒に居たいからじゃよ。その辺を爺さんに無理言って聞いてもらったのじゃ。」
「お、おう。」
あまりの可愛さにちょっとたじろいでしまった。
なんかこう、モジモジしてる。
んでもって尻尾は物凄い勢いで、ブンブンと動いている。
後ろにいたら軽い扇風機の代わりになりそうだな。
でも、少し変だよな?
俺と面識はないし、今まで一緒にいた訳じゃない。
それなのに一緒に居たいって思うものなのか?
あ!もしかして神様特有の遠くから見てました的なあれか?
それなら納得がいくぞ。
しかし、前から見られていたとはびっくりだな。
まぁ自分で解釈してるからホントかどうか分からないけど。
よし、まだまだ質問しよう。
好きな食べ物ってなんだろ?
「日本食っ!日本食が好きなのじゃ!」
嫌いな食べ物は?
「癖の強い物が苦手じゃ。塩辛とか特に。」
どんな人が好き?
「そ、そんな・・・言えるわけないのじゃ!強いて言うなら、その・・・シズクみたいな・・・(小声)」
俺はその他にも質問した。
料理の次に何が得意なのかとか、暇な時は何をしているのかなど。
そんな感じで話していると、目の前の料理は既に無くなっていた。
楽しかった。あまり人とも話さない性格で、妹としか話さなくて、・・・友達がいなかったから物凄く楽しかった。
家族も話してくれなかったしね。
「ご馳走様でした。」
「お粗末さまでした。」
なかなかに美味しかった。
俺と玉枝さんは食器を片付け、テーブルを拭いてから、温かいお茶を用意してゆっくりと腰を下ろす。
やはり可愛い。
お腹がいっぱいになったからか、ぽけ〜っとしている玉枝さん。
今確信したよ。
俺はのじゃロリが好きだったんだ。
のじゃロリコンだったんだね。(確信)
そんな玉枝さんをじっーと見ていると、チラチラとこちらを見てくる。
「こ、コホン」
ちょっと見すぎた。
マジですいません。
「そういえば先程、シズクに秘密じゃと妾は伝えたのだが、覚えておるのじゃ?」
「うん、覚えてるよ。爺さんが喜んでたってやつでしょ?」
「うむうむ。」
今日1日、爺さんの姿は見なかった。
それでも俺は走っておこうと思ってそうした。
んで、家に帰ればちょっと前に爺さんが来てたって話だな。
その時に喜んでたって何でだろ?とは気になったけど、秘密だと玉枝さんに言われたんだよな。
「シズクは家の周りを1000周、走れと言われたのじゃ。でもシズクが今日走ったのは1000周なんてもんじゃないのじゃ。」
「え?!何周走ったの?」
正直、俺は何周したか数えていない。
そんなこと考えてると、逆に走りづらいからだ。
しかし、何周なんだろうか?
めっちゃ気になるんだけど。
「うむ、2203周なのじゃ。」
「・・・・・・」
「2203周じゃな。」
「・・・・・・」
「何か返事するのじゃ!!」
「うわっ!」
びっくりした!
急に顔を近づけるからドキッとした。
て言うか今、2203周って言った?
え?嘘だろ?いやいやいやいや、有り得ないでしょ。
だって昨日は全く走れなかった。
それなのに、いきなり走れるわけがないだろう。
「嘘だよね?」
「妾は嘘はつかないのじゃよ。」
「んじゃ、ホント?」
「うむ、ホントなのじゃ。」
マジかよ・・・。
信じられないというか、有り得ないって感じが凄いんだけど。
もしかしてこの髪の事もあるし、この空間に来て変わったのかな?
体の作りみたいなのが変わったって言うのなら話は分かるけど。
明日、爺さん聞いてみるか。
「さて、そろそろ寝るとするのじゃ。シズクはまだ起きてるのじゃ?」
ふわぁっと欠伸をしながら聞いてくる玉枝さん、可愛ええっす。
確かに俺も眠たくなってきた。
それに明日に備えて早く寝るのもありだろう。
「ううん、俺も寝るよ。」
「よし、なら今日は一緒に寝るのじゃ。」
「はい?」
「ん?なんじゃ?」
一緒に寝るって言うのはつまりそゆこと?
隣で寝るって事?
いきなり過ぎませんかね、ちょっと心の準備が出来てないですよ玉枝さん。
「先に寝室に行っておるからの。ちゃんと来るのじゃぞ。」
「わ、わかった。」
しまった!返事してしまった!
わかったと言ってしまったら、行かなくちゃならないじゃないか!
すっごく恥ずかしいんだけど、どうしよう。
あのね、こっちは童貞なんですよ?
そんなイベントがゲリラ的に起きても困るんですが。
でも、仕方ない。
行かないと「何をグズグズしておるのじゃ!」とか言われそうだし、ここは我慢しよう。
俺は洗面所で歯を磨き、そのまま寝室へと向かった。
寝室の襖を開けると玉枝さんが布団を敷き終わった後だった。
玉枝さんは何も言わず布団に入り、俺が入りやすいように掛け布団を広げた。
よし、行こう。
大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせいざ行かん。
俺は布団に入り、天井を見上げる。
訳は一つ、恥ずかしいからだ。
恥ずかしいってもんじゃない、恥ずか死してしまいそうなぐらいだ。
「すまないのじゃ、妾のワガママを聞いてくれて。」
「う、うん。大丈夫だよ。」
「誰かとこうして寝るのは久しいのじゃ。何百年ぶりか、忘れてしまったのじゃ。温かいのじゃ、シズク。」
「そ、そう?寝づらいとかある?」
「ううん、全くないのじゃ。むしろ寝やすいのじゃよ、シズクが抱き枕になってくれるからの。」
そう言うとモゾモゾと動き、しばらくして俺に抱きついてきた。
マジのガチで抱き枕にしてきてますやん。
でも、ホントに寝心地がいいのかすぐに「すっー、すっー。」っと心地の良い寝息が聞こえてきた。
寝るのが早いなと思ったけど、それを吹き飛ばすぐらい寝顔が可愛い。
寝てる時でもぴょこぴょこと耳が動いている。
そんな可愛い玉枝さんを見ていると、俺も眠たくなってきた。
明日はどんな事をするのだろう。
ここに来る時に、異世界で生きるために修行すると言われて家の周りを走ってたけど、明日はもっと本格的やるのかな?
木剣で素振りとか?それとも筋トレ?
まぁなんでもいいや、強くなれるならそれはそれで、有るに越したことはないだろう。
俺はゆっくりと瞼を閉じ、明日に備えて寝た。
そう、玉枝さんと言う激カワのじゃロリ娘と共に。