【To Colombia④(コロンビアへ)】
出発の日、午前中は昨日出発したモンタナ達と同じ講義を行い、午後は利き腕ではない方の手で拳銃のマガジンに弾を詰める練習を延々とした。
昨日に引き続き射撃訓練や格闘技の訓練もしたかったが、出発時間を考えて止めた。
何故ならシャワーを浴びずに飛行機に乗る事になるから。
それは俺が女だからと言う理由ではない。
フライトは10時間を超える。
その間、硝煙臭いのや汗臭いのは他の乗客に迷惑が掛かるばかりでなく、変に疑われてしまう可能性もあるから。
15時10分。
一旦10分の休憩を取る。
15時20分。
休憩後、次のカリキュラムに入ると告げて、部屋の掃除をする。
15時40分。
掃除の後、軽くミーティングをする。
15時50分。
そろそろニルス少尉が呼びに来ても良い頃だ。
15時55分、フライトの丁度2時間前。
ニルスはまだ来ない。
16時00分。
士官室へ電話を掛けるがニルスは居ないとだけ返事が返ってくる。
”なにか、あったのか!?”
16時05分。
退席してニルスを探しに行く。
もしも何か不測の事態があったとしたら会議室か通信室。
だけど俺は一番にパソコンルームに向かった。
”ビンゴ!”
そこにはパソコンと睨めっこしているニルスが居た。
「ニルス少尉、もう出発の時間だが、何かあったのか?!」
「えっ!もうそんな時間?」
ニルスは慌ててノートパソコンを閉じた。
服装もまだ軍服のまま。
これから作戦内容を伝えに行って着替えていたら更に出発時間が遅れてしまう。
ニルスに着替えに行くように指示した俺は、直ぐに電話を取りブラームに作戦の発動と準備をするように伝え、そのまま部屋の窓から飛び降りた。
ここからだと、階段を使うより50m程距離が近い。
たった50mだが、途中に階段もあるし、廊下を全力疾走するわけにも行かない。
万が一人とぶつかれば、怪我はしなくても相当な時間をロスしてしまう。
部屋に戻り服を脱ぐ。
予め情報を知っている者の特権として、着ていた軍服の下には移動用の私服を着ておいたので、後は用意しておいたバッグを掴んでお終い。
部屋を出て真っ先に車両管理課に走った。
ニルスのあの様子だと、まだ出庫の手続きはしていないはず。
「ニルス少尉の命令で、借りていた車を取りに来た!」
「ああナトー軍曹ですね。ではここにサインを」
通常借りる手続きをしたものしか鍵を受け取ることはできないから、ハンス大尉からの緊急命令だと言ってキーを無理やり奪うつもりだったので、拍子抜けしてサインをするために書類を見て意味が分かった。
なんと手続きは確かにニルス少尉自身によるものだが、借主の欄には俺の名前が書かれてあった。
”アイツ、ある程度こうなることを予想していやがった!”
集合地点へと車で向かうと、そのニルスが呑気そうに手を挙げて待っていた。
”まるで俺をタクシードライバーと勘違いしていやがる……”
直ぐにブラームとハバロフも走ってやって来て、車に乗った。
「じゃあ行こうか」と言って助手席に乗ろうとするニルスを拒否して後ろに乗るように伝えた。
「なんで?」
「遅れた罰です。二人の持ち物確認をして下さい」と俺は答えて空港へと車を出した。
道は多少渋滞していたものの、無事シャルルドゴール国際空港に着き、搭乗手続きを済ませ飛行機に乗り込むことができた。
俺たちの席はプレミアムエコノミーと言うクラスで、エコノミーよりも少し広い。
窓側の席の俺の隣にはニルスが座る。
俺は用がない時は寝るので特に窓側でなくても良かったのだが、気を使ってくれたことへ対し礼を言うと、喜んでくれた。
17時55分定刻通りに飛行機はコロンビアに向け飛び立った。
出発して直ぐに、キャビンアテンダントがメニューを持って来て、その直ぐ後に機内食が運ばれて来た。
フランスらしくワインが添えられた食事は、前菜とデザートが鴨のロースト、シソと醤油の風味がアクセントになった魚介のタルタル、スモークトラウト、クリーミーなマスタードソースの鶏肉はジューシーで柔らかく、じゃがいものフライも添えられて、色合いも鮮やかでいかにもフランスらしい。