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【To Colombia①(コロンビアへ)】

 夜中に警報が鳴り、飛び起きた。

 緊急出動だ。

 構内放送でLéMAT全分隊の集合が掛かり、武道場へ集められた。

 武道場には既にハンスが居て、フランス中東部の都市リヨン郊外にある工場の倉庫で完全武装したテロ集団が潜んでいると地元警察から出動要請があったと言う事だった。

 工場の近くには稼働中の原子炉と休止中の原子炉の2基があり、彼等の目的がそのどちらかである可能性が高い。

 核防護服が用意でき次第LéMAT第1分隊と第2分隊が別れて、それぞれの原子力発電所付近で警戒任務に当たる。

 第3班は即応部隊と本部対応のため、ハンス大尉と共に現地のコロンビア会館に本部要員として派遣され、第4班は予備兵力としてパリに待機するが、うち3名だけ現場状況把握のため現地入りさせるよう命令された。

「まったく、こんな時になってこった!」

 モンタナが愚痴を履く横で、俺は即座に3名の現地派遣メンバーを招集した。

「フランソワ、ジェイソン、ボッシュ。現状把握メンバーとして先乗りしろ!」

「了解しました!」

 兵長昇進試験を狙うフランソワにとっては、願ってもないチャンス。

 張り切ってジェイソンとボッシュを引き連れて、準備に取り掛かるが、ジェイソンとボッシュは「何がコロンビアのビキニ美女だよ。コロンビアはコロンビアでも、その後ろに会館がつくんじゃあカリブ海も何もあったもんじゃねえ……」とブツブツ言いながら去って行った。

 LéMATの1班から3班まで、それにハンスとフランソワたち3人が武道場から出て行った。

 残ったのはニルス少尉、マーベリック少尉、それに衛生兵のメントスと第4班の6人。

「軍曹、指示を」

 重大事件発生に緊張の色を隠せないでいるモンタナが、かしこまって俺に指示を仰ぐ。

「俺たちは部屋に戻って寝る」

 そう伝えた後、ニルスとマーベリック少尉に向かって「それで構いませんか?」と確認するとマーベリック少尉は無言のままコクリと頷き、ニルス少尉は手を振って「おやすみー」と返事を返した。

 俺の返事と、緊張感の欠片もないニルス少尉の態度に唖然としているモンタナの方を叩き「待機と言われたら、いつでも100%の力が出せるように寝ておくのも仕事のうちだ」と言って寮に向かった。

 後ろから「よーし、オメー達。いつ何時収集が掛かっても寝ぼけ眼を擦らないでいい様に、寮に戻って直ぐ寝るぞ!」と残った隊員たちに伝えていた。

 誰がトーニに漏らしたのか、それともトーニが何らかの状況で知ってしまっただけなのか分からないが、これでコロンビアへの派兵と言う情報は摺り替えられた。

 作戦会議に出た中で唯一モンタナだけが、このハンスの仕組んだカラクリに気が付かないでいるが、俺はそれが馬鹿ではなく頼もしいと思っている。

 軍隊では迷いは禁物だ。

 少しでも迷えば、その時間の分だけ敵に先手を許してしまう事になる。

 俺たちが使っているHK416A5では1秒間に14発の銃弾の発射が可能だ。

 判断がたったコンマ2秒遅れただけで、約3発の銃弾が飛んでくる事になる。

 そう言う意味でモンタナの実直さは、他に掛け替えがないと言えるほど頼もしく感じた。

「チェッ、コロンビア違いかよ……」

 目の前をトボトボと歩くトーニが呟いていた。

「そう言えばコロンビア会館に行くと言う情報は、どこで知った?」

 急に後ろから声を掛けられて、トーニは驚いて振り向いて俺の顔をマジマジと見上げて言った。

「ナトー、それ本当にスッピンなのか?」と。

 “いやいや、話は、そこじゃないでしょう”

 結局トーニは昼休みに事務所の前を通りかかった時に秘書官を務めるメエキが電話中にコロンビアがどうとか言っているのを聞いただけで、特に誰かから情報を受け取ったり、その情報を何者かが受け取る現場に偶然居合わせたりした訳ではなかったようで安心した。

 迂闊なメエキの事なら、航空機の手配をする際に、そう言う事も有るだろう。

 寮の部屋に戻って寝た。

 朝は通常通り6時に起きて、ジョギングで汗を流したあとシャワーを浴びて食堂へと向かった。

 昨夜の緊急招集で、寝ているところを途中で叩き起こされたLéMATの留守番メンバーは皆眠そうな目をしている。

「まったく、いい迷惑だぜ、なあ」

 俺の隣に座ったトーニが、そう言って俺に同意を求めて来る。

 しかし一番の被害者は、真夜中に起こされてそのままリヨン郊外に向かった連中たち。

 現地入りした途端、これが訓練だと知った彼らの落胆と安堵感は測りようもない。

 そして忙しい最中に、急遽この訓練を企画したハンスをはじめとするスタッフたちも。

 “トーニ。故意では無いにしても、この騒動の原因を作ったのは君なのだよ。つまり加害者ってこと……”

「加害者!そう、奴らはいつも加害者なんだ!」

「加害者って……」

 俺は人差し指をトーニ向けた。

「よせやい。俺じゃねえ、加害者はテロリストたちだ。あいつらはいつも突然現れては何かをしでかして、どこかに消えてしまう。まるでゴキブリの様な奴らだぜ。だろ?」

 まあそう言えない事も無いが、俺自身子供の時そのテロ組織で狙撃手として働きGrimReaper(グリムリーパー=死神)と呼ばれ、首に懸賞金を掛けられた経験があるだけに一概に賛成は出来ないが一応頷いておいた。

 戦争は愚かな行為であり決して肯定は出来ないが、テロと言うのは新しい戦争の形だと俺は思っている。

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