【Decisive battle①(決戦)】
なんとか銃弾の雨の中を掻い潜り、さっき出たばかりの地下牢の穴に滑り込む。
最初は俺、続いてトーニ。
本当はトーニを先に入れて俺は援護をするつもりだったのだけど、トーニの脚運びが“俺が援護をするから先に入れ!”と言っている気がしたので甘えさせてもらった。
「ひぇ~っ、死ぬかと思ったぜ」
「ご苦労さん」
中に入って直ぐにトーニは、目の前に倒れている自分が狙撃して倒した見張りの死体を見て言った。
「そーう言えば、お前なんで俺が撃った見張りの銃を取って来なかったんだ?」
「趣味に合わないからだ」
倒れている男が持っていたのは、U.S.AS12。
AA-12をベースにしたフルオート可能なショットガン。
使用されるのは当然散弾だから、射程距離は短いが確実に目標に当てる事が出来る。
つまり誰にだって簡単に人や動物が殺せてしまう代物。
俺はこう言う武器は好きになれない。
誰でも簡単に人が殺されて堪るものか!
そういう意味では、部隊で使っているHK-416よりもAK-47の方が好きだ。
なにしろ、コイツは素人が狙ったのではロクに的には当たらないから。
「トーニはここで入って来る奴を食い止めてくれ。俺はダニエルとピパを探す」
「じゃあ、これ持って行け」
トーニが投げてよこしたのは、22LR弾のケース。
22LRは1箱50発入り。
「いいのか?」
「いいぜ、チアッパに用に数発貰っておいたけど、まだ40近く入っているはずだ」
「トーニは?」
「俺のG-44はまだ1発も撃っていねえから、予備の弾倉と合わせて30発ある。それにナトーには合わねえだろうが、俺はこのAS12を使わせてもらうぜ。何しろ30発の散弾が未使用だからな」
「じゃあ頼む」
「ああ。直ぐ後を追うから、あんまり遠くに遊びに行くんじゃねえぞ」
「考えておく」
そう言ってナトーはドアを銃で壊すと、廊下の向こうに消えて行った。
「さて、俺も忙しくなるぞ」
手に取ったU.S. AS12でナトーが開けたドアの蝶番部分に2発撃つと、ドアは簡単に壊れて外れた。
「ひょー。散弾恐るべし」
壊れたドアを抜け穴の傍に立てかけて、それを踏み台にして身を乗り出すと2人が接近して来ていたので適当に銃を向け1発お見舞いしてやると、2人同時に倒れた。
「ナトーが嫌がるわけだぜ。これに慣れたら、折角上がりかけている銃の腕も落ちてしまうな……」
馬たちを安全な所に避難させている途中、外人部隊の人たちが走って向かって来るのに出会った。
「馬を使って下さい!」
馬から降りようとすると、マーベリック少尉が「俺たちは乗馬の訓練を受けていない」と言って走り去っていった。
私も逃げてはいられない。
銃は撃てないけれど、傍に居るだけで屹度何か役に立てることもあるはず。
手綱を引いて馬の向きを変えて追いかけると、キースさんの乗ったオートバイが追い越して行った。
さすがにオートバイは早い。
感心して見ていると、後ろから3頭の馬の蹄の音が掛けてくる。
後ろを振り向くと、ガイドのキャスさんを先頭に、ドローンを片手に抱えたサオリさん、そしてモンタナさん。
「外人部隊の人は、乗馬の訓練を受けていないって聞きましたが、お上手ですね」
「ははは、そらそうだ俺はテキサス生まれだからな!」
「まあ。モンタナさんなのに南部のテキサスだなんて」
「ははは、みんな、そう言う」
モンタナさんは2m近い大男なのに、上手に馬を走らせるばかりか、馬を走られたままの姿勢で器用にライフル銃を撃つ。
その姿はまるで西部劇に出て来るカーボーイ。
しかも並みのカーボーイじゃなく、特上のウェスタンヒーロー『ジョン・ウェイン』だ。
地下室から出て廊下を進む。
見張りは居ない。
俺たちが抜け出したのだから、当然と言えば当然。
問題は、この階段の上から。
再び地下室に戻ったのは、奴等にも見えたはずだし、現に今そこでトーニが応戦している。
一旦屋敷の外に出た奴等のうち、何人かは中に戻って来るはずだ。
マーベリックたちが到着する前に、奴等を地下に通してしまうと、トーニが危ない。
だからと言っていつまでもここに残っていてはダニエルやピコに逃げられてしまうから、俺は地下室へ続く階段ではなく、そこから出た地下室への入り口が見える所まで出た。
ここなら外に出ようとする奴と中に入ろうとする奴の両方が見えるし、マーベリックたちの到着後直ぐに上の階に居るはずのダニエルとピパを探しに行ける。




