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【Before the sortie④(出撃前)】

 LéMATの様な特殊部隊では稀にこの様な作戦が有る事は知っていたが、遂に俺たちにその番が来た。

 Secret Operationは、これまで経験したリビア、コンゴ、アフガニスタンの様な戦場とは勝手が違う。

 今回の敵は作戦名にもあるように、麻薬犯罪組織。

 分隊全員参加でない少人数での作戦となれば、トーニやハバロフそしてキースよりもフランソワ、ジェイソン、ボッシュの方が戦力は上がるが、今回この3名は作戦から外されている。

 何故か?

 それは民間人として目立ち過ぎるからだ。

 モンタナは背も高く体格も素晴らしいが、こう言うタイプはアメリカ人には、そう珍しくはない。

 ブラームも背は高いが、服を着ていれば意外に細く見える。

 ニルスとキースもそうだ。

 あとのマーベリック少尉、トーニ、ハバロフ、メントスの4人の身長は標準か、それより低いから集団で歩いていても観光客に見える。

 だが、ここに背が高くガタイの良いフランソワたちがトーニたちと入れ替われば、全員が鍛えられた軍人か用心棒に見えてしまう。

 だからフランソワたちは今回の任務から外されたと考えて良いだろう。

 ニルスの質問に対する答えで分かったことは、依頼者は民間人であるという事。

 公的機関なら金は大使館を通じて払われるだろうし、アメリカ人が依頼主ならCIAに依頼するだろう。

 LéMATに依頼が入ったと言う事は、依頼主はフランスに所縁のある企業か人物からだろう。

 そしてマーベリックの質問の答えは「開示を許されていない」と「一切不明」

 断固として情報を漏らせない確固たる意志が読み取れる。

 敵は麻薬カルテル。

 そこに民間人に偽装した俺たちが、民間人の依頼で情報の漏洩を許されない任務。

 しかも警察や地元の軍隊ではなく、現地のガイドを雇い、民間人も同行するとなれば、答えはおそらく人質救出作戦で間違いないだろう。

 会議室で命令書にサインを書きながら、そう思った。

 皆がサインした用紙を集めながら、ハンスが「一部目的地情報が洩れているようだが、それは無視していてくれ。あとで修正する。それでは出発まで何事もなかったよう準備を進めてくれ。以上」

 ハンスは会議の終了を告げると、踵を返すように部屋を出て行ってしまった。

「俺達って、なんかサインするために集まっただけみたいだな」

「まあ、それも仕事だから」

 ニルスの話にマーベリックも同意して答えている。

「なあ、軍曹、チョッといいか?持って言ってはいけないものと言うのは、免許証と認識票、家族の手紙や写真とパソコンと携帯だけだったっけ?」

「ああ。あと保険証とメモ帳や筆記用具もそうだし、その他にも各種資格証など個人名が書かれているものは全部NGだ」

「あと俺たち2班の集合時間だけど、空港出発が明日の13時半だから昼飯前に集合でいいんですか?」

 空港出発は13時20分だし、その2時間前に集合させておくと言う事は、11時20分にはここを出られる状態にしておくと言う事だ。

 つまり11時20分より前には伝達事項の説明と、持ち物検査を済ませておく必要がある事をモンタナに教えた。

「すまねえ。なんか隊長の説明、少しわかりにくくて……」

 そう言ってモンタナは自慢のモヒカンの頭を掻いた。

 たしかにそう。

 ハンスの説明は端的だったが、その分、丁寧さを欠いていたと思う。

 何時の飛行機に乗るのかと言う事は重要な事だけど、その飛行機に乗るためのタイムスケジュールを示した方が、より親切なのは間違いない。

 だが軍人である以上、どんな場合でも端的な指示で完璧に動ける様でなければならない。

 つまりハンスは試したのだ。

 “誰を?”

 急に疑問が湧いた。

 こんなことを今更ニルスやマーベリックに試す訳もない。

 当然俺にも。

 と、言うことは、試されているのはモンタナと言う事になる。

 でも、何のために?

 モンタナは分隊長である俺の副官。

 俺は常にモンタナだけでなく、どの部下にも、分かりやすい指示を与えている。

 それは、もし意味を取り違えられたら、犠牲者が出てしまう可能性が高いから。

 上からの命令を部下たちに、まるで伝言ゲームのように伝えたのでは、俺が間に入る意味がない。

 一定の高度なレベルを満たしたものだけが将校になる。

 このため大隊長から中隊長、中隊長から小隊長へ伝えるには、どの様な内容を伝えればいいかは分かりやすい。

 けれども兵卒は違う。

 2等兵から1等兵へ上がる基準は、単なる軍隊での経過時間が目安になるだけ。

 上等兵や兵長にしても、一応試験はあるものの、重要視されるのは能力と資質によるものが大きい。

 俺の分隊で言うと、冷静沈着で射撃術も格闘術も優れているのが、ブラーム兵長。

 親分肌で射撃術と格闘術に優れた、フランソワ上等兵。

 ムードメーカーで、他の者が持たない爆発物と言う高度な技能を持った、トーニ上等兵。

 彼らの特徴は分隊長の俺だけでなく、小隊長など上の者も把握しているが、彼等の文章読解力がどの程度なのかまでは上の者には分からない。

 だから、それを知っている分隊長である俺が、それぞれの能力や理解力に合わせた指示を出す。

 モンタナは下士官だが、俺のサポート役なので、全ての命令は俺を介して彼に伝えてある。

 そのモンタナを試すと言う事は……。

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