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【Before the sortie③(出撃前)】

 慌てて手を降ろした直ぐ後で、マーベリック少尉が廊下の角から表れ、反対側からはモンタナが慌てて走って来た。

「ひぇー遅刻するかと思いましたぜ」

 汗を流しながら言ったモンタナの言葉に、腕時計を見ると時刻はもう19時59分。

 会議時間の遅刻は、たとえ1秒であろうと厳罰。

 モンタナと俺は慌てて部屋に入った。

 椅子に座った瞬間に、ハンスが腕時計を確認する。

「20時0分0秒。これより今回の任務の概要を伝える」

 “危なかった。あと1秒着席が遅ければハンスの事だから厳罰を科せられた上に、最悪退席させられたかも知れない”

 ハンスが持って来た命令書を4人の手元に配る。

 たった1枚の紙切れの先頭には『Operation White Hemp Field(白い麻畑作戦)』と書かれてある。

 次の文字は『Columbiaコロンビア

 そしてその次には、同意に関する注意事項が書かれて、最後に署名の欄が空白になっているだけの簡単なもの。

 作戦の詳細や作戦に従事するメンバー、何処の国からの依頼で誰が決定して指揮は誰が執ると言うような具体的な事は一切書かれていない。

 つまり、今回の任務はSecret Operation(秘密作戦)と言う事になる。

 秘密だから書面は一切残さない。

 この命令書にしても、サインした後は回収される。

 そして作戦内容は全て口答で行われ、書類はおろかメモを取る事も許されない。

 だからハンスの話を皆いつにも増して真剣に聞いた。

 作戦の参加メンバーは11名。

 直接戦闘員6名と、後方支援が2名。

 戦闘指揮はマーベリック少尉が執り、後方支援はニルス少尉が担当する。

 LéMATからはナトー1等軍曹、モンタナ伍長、ブラーム兵長、トーニ上等兵、ハバロフ1等兵が戦闘部隊として入り、医療サポートとしてメントス1等兵が戦闘部隊に随行する。

 その他に現地人ガイド1名と民間人2名の計9名がマーベリック少尉の指揮下に入る。

 キース1等兵はニルス少尉のサポート要員として、警備及び戦闘部隊への緊急補給任務に従事する。

 ニルス少尉は作戦計画、および経過、現地での調達や情報処理と後方支援を行う。

 出発は第1班と第2班の二手に分かれる。

 第1班はニルス少尉、ナトー1等軍曹、ブラーム兵長、ハバロフ1等兵の4人。

 出発は明後日9日17時55分シャルルドゴール発エルドラド国際空港行き、エールフランス428便にて出発。

 エルドラド国際空港到着予定時刻は同日(9日)16時50分。

 第2班はマーベリック少尉、モンタナ伍長、トーニ上等兵、キース1等兵、それに衛生兵のメントス1等兵の5人。

 出発は明日8日13時20分シャルルドゴール発マイアミ国際空港行き、デルタ航空8348便にて出発しマイアミで1泊後、翌日9日14時20分マイアミ国際空港発エルドラド国際空港行き、ユナイテッド航空6641便にて出発。

 エルドラド国際空港到着予定時刻は同日(9日)17時00分。

 1班2班共にエルドラド国際空港にて待ち合わせ、合流後空港で待機。

 19時00分にフランス大使館から使者が来るので、以後はその指示に従い行動する。

 なを、今回の作戦は極秘作戦であり移動時は私服とし、民間航空機を使用する都合、武器及び危険物等の携行は許されない。

 またパスポート以外の個人を特定できるもの(個人用携帯電話、パソコン、免許証、保険証、家族からの手紙や写真、メモ帳や筆記用具、認識票など)の所持は禁止とする。

 各下士官は出発予定時刻2時間前に班ごとに兵員を集合させて命令伝達後速やかに現地へ移動する事とする。

 ここで肝心なのは、伝達事項を出発直前まで伝えないことだ。いいな。

「何か質問は?」

 命令内容を説明していたハンスが質問を促すと、モンタナが「班員への説明内容に不備があった場合、どうなるのか」と聞いた。

 ハンスは表情も替えずに「除隊だ」とだけ答えた。

 次にマーベリックが「大凡の目的地は分かったが、肝心の作戦内容に関する説明がない」と聞いたが、ハンスからは「現在まだ開示を許されていないし、単独で行うのか他の組織と連携するのかさえ、まだ何も決まっていない」と答えた。

 では作戦内容は大使館から説明が有るのかと再びマーベリックが聞くと、ハンスは「一切不明!」と強く答え、回答を打ち切った。

 これは同じ質問を2度繰り返したマーベリック少尉に対する警告。

 特にこの場合マーベリック少尉の本意ではないにしろ、ハンスに聞いても分らなければ大使館に聞いたら分かるのではないかと言う意味合いも含まれて居たから尚更。

 もし万が一、もう一度似たような質問をすればマーベリックはこの作戦から降ろされる事だろう。

 将校でなくとも、何故何故と似たような質問を繰り返すことは軍隊では許されない。

「現地調達用の金はいつ支給される?」とニルス少尉が聞くと、「現地だ」と返事が返って来た。

 ニルスはその回答に不満があったように見えたが、直前の質問でマーベリックが失態を犯している以上、次の質問に入れない事に苛立っていた。

 だが、ハンスが“現地だ”と言ったと言う事は、大使館などの公的場所から資金が出る訳ではないのだと俺は思った。

 大使館から金が出るのであれば、大使館で用意すると答え、決して現地という曖昧な表現はつかわない。

 公的な場所から金の出ない極秘任務と言う事は、ひょっとして今回の任務は……。

 急にハンスが「ナトーは?」と聞いてきた。

 まるで俺の思考を遮るように。

 ならば、こっちも、そのつもりで質問した。

「作戦の可否が決まるまで現地での待ち時間は、自由行動ですか?」と。

 ハンスはホンの少しだけ口角を上げて、自由に遊んでいていい事と必ず連絡が取れる状態にしておくこと、1時間以内に集合出来る事と必ず2名の当番を残すことを伝えた。

 “なるほど、これで作戦の大まかな内容が分かった”

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