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【Rally in Colombia①(コロンビアでラリー)】

 次の日会社に出てみると、早速誘拐犯側から連絡が来ていた。

 ここメデジンから約200㎞西の街ギブドに向かう様にと言う指示。

 しかも今日の午後2時までに。

 現在時刻は午前9時だから5時間しかない。

 ここからギブドに向かう60号線は峠道が多く、しかも1車線区間や未舗装の部分も多いし、農業用のトラックも多いだろう。

 “時間内に着く事が出来るかさえ怪しい上に、交通事故や崖からの転落事故も考えられる。

「兎に角連絡があった以上、私たちに出来るのは、それに食いつくことだけよ!」

 サオリの言う通り。

 現在のところ、全てのカードを握っているのは奴らだから、俺達はその指示に従うしか方法がない。

「さあ行くぞ!」

「よっしゃ!面白くなってきやがったぜ!」

 マルタとサオリ、トーニと俺の4人は会社から再び車に乗り、飛び出すように出発した。

 メデジン市街は比較的順調に進むだろうと思っていたが、渋滞に巻き込まれて思った以上に時間を取られた。

 ナビの到着時刻は市内を出たところで、既に午後の4時を示していた。

 それでもキブドの約90㎞手前の街シウダー・ボリバルに到着する頃には予定到着時刻午後2時30分まで戻すことが出来たのは、道が良かったのもあるが運転に集中してくれたトーニのおかげ。

 俺たちはここでトイレ休憩をして、運転を替わる事にした。

「トーニ、ご苦労様。ギブドの手前まで俺が運転を替わる」

「任せとけ!って言いたいところだが、もう限界。あんがとよ。ここからの峠道はナトーじゃねえとタイムを縮められねえ」

 こうして素直に言うことを聞いて、しかも好い一言を付け加えてくれるトーニの気遣いはいつも心地いい。

「さあ、ここからは峠道は俺に命を預ける覚悟をしておいてくれ」

「わかったわ」

「すみません。私のために」

「ナトーは俺みたいに手加減しねえからな」

「トーニ、お前手加減していたのか?」

「いや、チャンとベストを尽くしたぜ」

 陽気なトーニの言葉に釣られて、マリアが笑った。

 ここからは狭い未舗装の道が続く。

 対向車は勿論だが、トラックに前を塞がれたら、そうそう抜くことは出来ない。

 案の定10分も走るとトラックに行く手を塞がれてしまった。

 この区間の法定速度は遅いため、最初の10分で10分も到着時刻を短縮することに成功したが、目の前をノロノロと走るトラックのおかげで10分の貯金は直ぐに使い果たしてしまった。

「まあ、落ち着こう。無理したところで抜けるような道幅じゃねえ。そのうち抜ける時も来るだろうし、遅れたら向こうからまたアクションが有るだろう」

 トーニが、俺を庇ってくれる。

 “優しいヤツ……”

「――オッケー。トーニ君、オーディオのボリューム上げてくれる?」

 後部座席で誰かと携帯で話しをしていたサオリが、トーニに指示を出す。

「ラジオか?」

「ラジオじゃないよ」

「じゃあミュージック?」

「いいえ、携帯のフリーハンドモードを使うの」

「敵からの連絡か?」

「違う、味方から」

 いちいちトーニがサオリに投げかける質問の全てがハズレなことが、逆に可笑しくなる

『もしもしナトちゃん聞こえる?』

 スピーカーから入って来たのはレイラの声。

「聞こえるよ、レイラ」

『目の前のトラックだけど、3つ目の左に曲がる所の内側に道ではないけれど少しだけ空き地があるから、そこで抜いて』

「了解。でも、その向こう側から車が来ていたら危険じゃないか?」

『大丈夫よ、当分前はクリアだから』

「ヘリから誘導してくれているの?」

『ヘリで誘導していると怪しまれる可能性もありから、今は衛星を使って誘導しているの』

「ひぇ~っ!衛星たぁ恐れ入ったぜ!」

 トーニが奇声を上げて皆を笑わせた。

『トーニちゃん。これからは喋らないでね。口を開けていると舌を噛み切ってしまうかもよ』

「了解!」

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