98.俺はもう一人でいなくていい
本日は午前に1話投稿したのでまだ見てない方はぜひ戻って読んでみてください。
「っと、まあだいたい今話したことが今週の刹那の様子よ」
「あぁ、なんとなくわかった。教えてくれて助かった」
愛華がこの家から出て行った後の刹那の一日目の学校の様子それから学校には来ていなかったが愛華の家でどう過ごしていたのか教えてくれた。
外では相変わらず強い雨が打ち付けられており屋根や窓ガラスを激しく叩いている。ガタガタと大きく音を立てるくらいの強風が吹いており・・・ていうか本物の台風がやって来ているのだがますます雨模様を黒く灰色に染め上げていく。
しかし、
「それで、話を聞いた感想は?」
愛華が目を細めてジッと見てくる。俺はその目線に圧を感じ身震いしそうになったが、俺は自身を叱咤し思ったことをそのまま伝える。
「色々と端折ってないか?明らかに情報量が少なすぎる。刹那はご飯はちゃんと食べてるのか?ちゃんと寝られているのか?そもそも刹那がなんで俺から離れようと決めたのかとかそこら辺の話も聞いてないのか?・・・刹那は戻ってくる気はないのか?それから・・・」
「はい、一旦ストップだよ。ふゆ君」
「あっ、すまない」
率直に・・・と思ったが疑問や刹那への心配事を口に出し続けると喉から勝手に言葉出てきて止まらない。
いつの間にか身を乗り出して尋ねていたが沙月が俺の肩を押えて再度座らせる形で俺を落ち着かせた。
次に晴生が口を開いた。
「とりあえず、永遠、お前の中でちゃんと刹那への気持ちがあってこちらとしては安心した」
「そんなの当たり前だ・・・」
「まぁ、少し試すような感じで聞いて悪かったわ。改めて永遠の気持ちをちゃんと把握しときたかったから。こうでもしないと永遠が本心を曝け出さないから」
「やっぱり、ふゆ君は素直じゃないね。関わりが短めな私でも2人が言うことには大納得だよ」
「ていうかね、刹那があんたのことを嫌いになるとか」
なんとなく、ほんの少しずつ空気が変わっていく。今まで重苦しく冷たいどんよりとしていたものが消え失せていきポカポカと暖かくなっていくのを感じる。
しかし、それもすぐに切り替わる。
「それじゃあ、さっきの補足をしていくわ。実は刹那の状態はぶっちゃけあまり良くないわ。初日はまだ食べてくれてたんだけど、日が経つにつれてどんどん食べなくなっていってるの。学校を休んでいる間もちゃんと昼ご飯を置いて行っているんだけど私が帰って食べるのを促すまで食べてくれないの。しかもやっと食べたと思っても全然食べてくれない。これが毎日三食で起こってる・・・ごめんなさい」
愛華が肩を震わせながら言っている。俺は余りにもその事実に衝撃過ぎて何も言い出すことができなかった。愛華は言葉を詰まらせながらもゆっくりと言葉を吐き出す。
「私が、私以外の家族が何言っても口に入れてくれなくて、食べたとしてもほんのちょっとだけでどんどん痩せ細ってく。しかも夜も布団に入るところまでは私は確認できてるんだけどたぶんそこから寝てないのいつもフラフラで目に隈がはっきりと出てる。今日も朝ご飯食べずに刹那はどっか行っちゃった・・・永遠・・・ごめんなさい・・・刹那をちゃんと預からなきゃ、面倒見なきゃって思ってたのにどんどん目の前で憔悴していく刹那を指くわえて見ていることしかできなかった・・・どうしよう・・・このままだと本当に刹那が消えちゃいそうで・・・ごめんなさい」
「大丈夫だよ、あいちゃん一人のせいじゃないよ」と沙月が今も両手で顔を覆い嗚咽を漏らしながら泣いている愛華に駆け寄り背中をさすっている。
今さして重要ではないが沙月は愛華のことを「あいちゃん」と呼んでいるらしい、確実に沙月による侵略が行われている証拠である。本当に今はどうでもいいが。
ここまで弱り切っている愛華を見て、相当裏で自分を責めていたことがわかった。だけどそれを俺に感じさせようとしてこなかったあたり精神をすり減らしながら俺を気にかけてくれてくれたことがわかる。
ここまで追い詰めることになってしまった愛華にとても申し訳ない気持ちが込み上がってくる。愛華は沙月に「ありがとう」と微笑を向けて、再度続けた。
「それで、後は刹那が家出した理由はいくら聞いても教えてくれなかった。強いて言っていたことでも『私には永遠といる資格がないから』としか言ってくれなくて私には理解できなかった。帰る気があるかどうかについても同じ。何も言ってくれなかったからわからない。だけどいつも夜泣き声が聞こえていたわ。私がわかるのはこのくらい。肝心な刹那の真意を聞き出すことはできなかった。そして今朝から刹那は行方知れずということよ」
愛華は悔しそうな顔で俯いていた。沙月は「大丈夫、大丈夫・・・」と震わせている背中をさすり続けている。
刹那は自分には資格がないと言っていた・・・つまり、刹那は決して俺のことが嫌いになったからとかそういうのではない。そんなことよりもむしろずっと・・・。
晴生はそんな愛華をチラリと見て睨みつけるようにして言う。
「お前らさ、資格があるないとか言ってるけど、一緒にいることってそんな資格とか必要ないんじゃないかと俺は思うよ。一緒にいれば意図しなくても互いに傷つけ合うことだってあるに決まってる。だけど、傷つけ合って、その傷をなめ合って互いに前を進んでいく・・・相手を傷つけることを恐れるんじゃなくて、傷つけた自分も許せる優しさがあってもいいんじゃないかな」
「晴生・・・」
「私も、ふゆ君とせっちゃんのおかげでお母さん、お父さんとちゃんと話せるようになったんだよ。おかげで毎日がいつも楽しいんだよ。家事をして喜んでくれる両親を見ることができてすごく幸せだよ。だけど、お互いに踏み込んで話をすることができたから。お母さんもお父さんも私に嫌な思いをさせないようにどんな言葉を送ればいいのかわからなかったって言ってた。私も両親から嫌われたくなくてわがままを言えなかった。だけど今回でわかったのは話してみなきゃ、互いに距離を詰めていかなきゃわからないってことだよ。勿論話をしていく中で気づいてほしいところが実は気づいてもらえてなかったことがわかったりして少しがっかりすることもあるけども、そうやって互いに近づいていくんだよ。そしてそんな勇気をくれたのはふゆ君、せっちゃんのおかげ。だからありがとう!今度は私達が背中を押してあげる」
「沙月・・・が真面目だと・・・」
沙月の話に俺がつい思ったことが溢れてしまったので「こらっ、バカにすんな!」とプクッと沙月は怒ってきたので俺は、
「半分冗談だ、だけどありがとう」
と伝えると「半分って・・・」とだけぼやきながらも大人しくなってくれた。
「永遠、あんたは自覚がないかもしれないけど、あんたはずっと気遣いある行動や言葉を掛けてくれていた。私も晴生もあんたに助けられてきた。だから今回はこっちの番」
「愛華・・・」
俺の目の前にいる晴生も愛華も沙月も安堵の表情浮かべている。俺はそんな温かい視線がどこかむずかゆく感じていた。
だけど、それと同時にとても嬉しかった。
こいつらに心配してもらって、心配してくれているという事実が独りを望んでいたはずなのにとても胸に染みて温かい。
いや、違っていた・・・俺はもともと一人でいられなかったし、いようともしていなかった。
俺が見ようと、認めようとしなかっただけで俺にはいつもたくさんの人がいて支えてくれた。
いい加減認めるべきときが来たのかもしれない。
俺は頭を下げた、そして今の自分で言える言葉を誠心誠意をもって伝える。
「今まですまなかった・・・俺は認めたくなかった、認められなかったんだ。俺の両親、弟が事故で死んでしまった後から怖くなったんだ。自分を大事に想ってもらえていると知っておきながら俺は知らないふりをし続けていた。大切だと思っている人達がいなくなっていくのが俺には耐えられなかったんだ。大切だと認めてしまえば離れたときにだから俺は素っ気ない対応をし続けていたのにも関わらずそれでもお前らは好意的に接し続けてくれた。そして今回、部活でパート練習の時間を潰してまで俺に事情を尋ねようとしてくれたこと、俺が朝早い時間に来ていたのにも関わらず俺を気にかけて声を掛けてくれた。そして俺はそれなのにも関わらず無視し続けた。それでもこうして休日の中家まで尋ねてきてくれた・・・」
頭を下げながら口を動かしているため3人とも顔は直接見えていないため、どんな顔をしているのかわからない。もしかしたら、「何言ってんのこいつ」と冷めた目をしているのかもしれないが、今まで過ごしてきたこいつらとの時間を頭に思い描きながら、俺は本当の気持ちを吐き出す。
「俺の大切な友達・・・としてお願いしたい・・・刹那とまた一緒にいたい、仲直りしたい・・・だから助けてくれませんか」
顔を上げる、すると3人とも笑顔で
「任せろ」
「任せなさい」
「やるよー」
と言ってくれたのであった。
読んでいただきありがとうございます!
面白い?続きが気になるかも?と思った方はブックマークや評価を是非
今後もよろしくお願いします!
思っていたよりも、スッと歩み出せた永遠。
次回以降、刹那の登場です。刹那の身に何が起こったのか、何で家を出て行ったのか、
永遠のことはどう想っているのか。




