97.君はどこへ・・・
重たい足取りで学校に着いた俺は俺を見つめる周りの目が少し変なのを感じながらもそれら全てを無視し席に着いた。
教室に入った際、まだ刹那が来ていないことを確認し、まだその時ではないことがわかり少しだけホッとしていた。
ケリを就けるとは自分の中で言ったもののまだまだ整理が追いついていない。半ば無理矢理な形であるということは自分でもわかっているがこれ以上ズルズルとさせるのは刹那のためにもよろしくない。
この場にいれば話を早速・・・と思ったが刹那がいないならしょうがない。俺は昨日完全にやり忘れた宿題をカバンから出して教室のドアを横目で見続けながら解き進めていた、
そんな時だった。俺に声を掛けてくる物好きなやつが現れた。
「ふゆ君・・・」
顔を上げると今年の文化祭実行委員で大変世話になった白河沙月がいつもみたいに底抜けの明るさは影を潜め心配する表情を浮かべていた。
「沙月か・・・」
「せっちゃんと何があったの?」
「何もないよ」
やはり聞いてきたことは刹那とのことだった。昨日の昼飯では突然女子だけで食べ始めたし、刹那は一日ずっと俺に関わることはなかった。
平気な顔をして笑顔の仮面を貼り付けて過ごしていた刹那でも親友達の前ではそんな仮面は無意味に等しい。
現にこうして沙月や愛華、晴生にも異変を感づかれてしまっている。
とはいえこの問題は俺と刹那の問題なので沙月には関わらせないように嘘をつく。
しかし、沙月は俺の返答に間髪入れることなく人差し指を俺の目の前に突き出し少し苛立ったような声で、「嘘つき」と言った。
「昨日の、せっちゃんのあんな苦しい表情を間近で見せられて私がなんとも気づかないとでも思ったの?ふゆ君もそんな死んだ魚の目でせっちゃんを見ていて一体何なの?そんなの自分のスマホが通話中だったことに気づかない私であっても流石に気づくよ・・・・・・ねえ教えて、ふゆ君とせっちゃんに何があったの?私にできることならなんでもするから、話してみて。私は2人のおかげで家族とちゃんと話せるようになれて、おかげで家でも学校でも毎日がさらに楽しい。だから、助けてくれた2人が何か困っているなら私も助けてあげたい・・・だから!」
俺は右手を挙げて沙月の話すのを制して席を立ち上がり言った。
「そうか、ありがとう。確かに俺達の間に問題が発生したのは事実だ」
俺がそのことを認めると話してもらえると思った沙月が「だったら」と言ってきたところで俺は再び口を開いた。
「だけど、これは俺が悪かったんだ。刹那があんなにも苦しそうな顔をするのも、全て俺のせいだ」
「えっ?何言ってるのふゆ君・・・」
「俺には刹那といる資格がなかったんだ。だから、今日ちゃんとケリをつけるよ。まだ刹那が学校に来てないから話せてないけど来たら教えてくれないか」
そう言って俺は席を離れる。後ろでは固まったままの沙月を一人残したまま俺は教室を後にした。
教室から出た後は、沙月達と出くわす可能性を防ぐため図書室に行って宿題を終わらせた後、始業時間ぎりぎりになるまで暇を潰した。
そして、適度に時間を過ごした俺は教室に戻って席に着き、刹那がいるはずの場所へ目を向けた。
しかし、そこにいるはずの刹那はいなかった。不審に思ったが体調不良かもしれないとそう思うことにして今日を過ごした。
だが、この日以来刹那が学校に来ることは一切なかった。
気づけば土曜日となっており、俺は家でだらだらと自堕落に過ごしていた。愛華と晴生に問い詰められて俺が部活を抜け出して以来俺は部活に行くこともなくなり授業が終わったら逃げるように即刻で家に帰っていた。
そして刹那に関しては学校に来ていないということで現状部活には部長、副部長が不在でもう一人のサックスパートの副部長が切り盛りしてくれているであろう。
突然そんなことをさせることになってしまったのは申し訳ないが俺は部活に行くのは、いや違う・・・トランペットパートに行くのがものすごく気まずい。
愛華とも晴生とも話していない。昼飯でも、晴生とすら食べることはなくなってしまった。
そのため一切話せていないので喧嘩別れしたみたいな感じになってしまい行く気になれなかった。
それに愛華も晴生も俺が休んだからって特に話し掛けてくることはなかった。
だからこうして本来は土曜日は部活があったはずなのだがサボりを決め込んでいる。
こんなバカなことをしているぐらいなら部活に行けと言われることはわかっているがもう行く気にもなれない。
本当は刹那と話をつけてから辞めようかと考えていたが刹那が高校に来てくれない以上俺から部活を先に辞めるのがいいかもしれない。
これ以上部員の皆には迷惑をかけられない。
外では黒い雲が空を覆っておりゴロゴロと今にも雨が降ろうとしている。ガタガタと窓ガラスも強く音を立てているほどから風も強く吹き荒れているのが室内でもわかった。
ピンポーン、ピンポーン・・・
「なんだ?」
気づけば俺は寝てしまっていたようでインターホンの音が何度も鳴り響く。俺は重たい瞼をこすりながらもインターホンを確認することなく鳴り止まない音を止めるために玄関に出向き直接ドアを開けた。
そしてその光景に俺は驚きの余り固まってしまう。
「お前ら・・・何で・・・」
外では激しく大粒の雨が降り注いでおりコンクリートに強く叩きつけられている。
「ちょっといいか?」
「はいよ」
「ありがとう、ふゆ君・・・」
「すまん、助かる」
「・・・」
俺は3つ分のタオルを上から持ってきて目の前に立ちながら濡れている愛華と晴生、そして沙月の3人に渡した。
本当は会うことも家に入れたくもなかったが、憔悴しきった3人を目の前に、ましてこんなひどい雨の中追い返すようなことは一切できなかった。
俺は3人が拭いている間それぞれが持つ荷物を拭いてリビングに運び、拭き終わった人からリビング行ってもらうように促した。
タオルを全員分回収し洗濯機を回した俺はテーブルの席に着き「それで、用事は?」と早速本題を尋ねることにした。
すると愛華が難しい顔をしながら口を開いた。
「刹那がね、どこにもいないの」
「はっ?どこにもいないってそれは連絡が取れないという意味か?」
しかし、俺の返答に愛華は首を横に振り、
「連絡はとれないけどもそういう意味じゃない。今まで永遠には隠してきたけども緊急事態だと判断したからちゃんと言うね」
「あぁ」
「私は永遠と刹那に何かがあったのかはあなたたち二人が別々に学校にきた初日、いや、その前日から知っていたわ」
「なんで?って、・・・!まさか・・・?」
愛華から伝えられる事実に俺の口からポツリと言葉を溢した直後ある予想が思い浮かび顔を上げて愛華を見つめる。
愛華もその予想を肯定するように首を縦にゆっくりと動かして、
「刹那が今泊まり住んでいるのは私の家。これまで学校に来なかった間もずっと私の家にいたんだけど、今朝突然いなくなっていたの」
と拳を固く握りしめながら言う愛華を見て俺は突然の衝撃的な事実に「マジか・・・」と呟くことしかできなかった。
愛華は申し訳なさそうな顔をしながらも透き通った瞳でこちらを見てくる。
「今日までの刹那の様子について少し話そうと思う。だからいつまでも逃げてないでよく聞きなさい・・・だいたい刹那があんたのことを好きにならなくなるわけがないんだから・・・」
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今後もよろしくお願いします!
もう1話挟んだ後で刹那がようやく出てきます。




