91.文化祭も終えて
午後はお待ちかねの吹奏楽部のステージ発表があった。
文化祭の演出担当が俺の知らないところでたくさん頭を悩ませて考え出された演出に部員全員の演奏や動き、正直なところ俺自身はついていくのに必死だったが。
大きな盛り上がりを見せることができ、大成功を収めることができたと思う。
細かいことは省かせてもらうことにする。
今回は部活に特に関わったわけではなくむしろ離れていた身分なので申し訳ないが思い入れがあるわけでもなかった。
文化祭の全ての企画も終了して表彰式となり俺達のクラス企画は3年生の先輩方のクラスに混じって表彰をもらえることになった。
どうやらおばけ屋敷の豊富な仕掛けがかなりの評価してもらえたらしい・・・・・後は受付で待たされている間にも楽しんでもらえるような工夫もよかったそうだ。
てかそれって絶対刹那のことだろ、間違いなく。
俺はその理由に関しては素直に喜べなかった。
刹那のかわいいところが皆に認めてもらえるのは確かに嬉しいことであるのだが・・・なんだか刹那が見世物にされているようで嫌だ、ていうか他の奴らに見せたくなんかない。
自分自身でも嫌になるくらい刹那の独占欲が肥大していくことになんだかモヤモヤしながらもクラスの女子達に囲まれてワキャワキャしている刹那を見ると少しは和らぐので見ていると刹那も俺の視線に気づいたようで顔を少し傾けて優しく笑みを浮かべ返してくれる。
そのさりげない仕草に俺の鼓動は加速してさきほど考えていたことも忘れて嬉しく思っていると、
「ねぇ、ふゆ君」
「うわっ!びっくりした・・・・って沙月かよ」
隣からいきなり声をかけられて振り返るとニヤニヤ顔を浮かべた沙月がいた。
俺はさきほどまできっと間抜けな表情を浮かべていたであろう顔をキリッと戻し、「どうした?」とあくまで冷静に聞き返したのだが沙月は「ぷっ!・・・」と笑い出した。
「はははっ!今さら顔を取り繕っても遅いよ。どうせさっきまでせっちゃんと見つめ合って嬉しくて照れてたんでしょぉ」
「はっ!?ちっ、違うし!」
「またまたぁ、せっちゃんと笑い合っていたくせにぃ。私が話し掛けなかったらずっと間抜けな顔をしてたぞぉ」
「くっ・・・・」
「あははっ、図星だ」
「事実だから否定できん・・・」
沙月が声高らかに笑い声を上げてからかってくる。
「沙月、クラス企画表彰されたな。おめでとう」
「そうだね、責任者としてふゆ君もありがとうね」
「とはいっても、沙月も皆もハチャメチャやってくれたおかげで個人として特に何かしたわけでもないから」
「またそうやって、遠慮するぅ~。そんなハチャメチャをまとめてくれたんだから上手くいったんだよ。素直に感謝されときなよぉ」
そう言いながら腕をツンツンと突いてくる。
なんだか心も体もくすぐったくなってこそばゆい気持ちがしたがこれ以上否定しても余計にからかわれるだけだと判断した俺は大人しく「そうだな」と受け入れることにした。それに沙月も褒めてくれているので素直に聞き入れることにした。
ていうかなんか背筋が少しひんやりとするが・・・キニシナイキニシナイ。
「それだけじゃなくてね・・・昨日ねお父さんとお母さんもわざわざ仕事を早く終わらせておばけ屋敷に来てくれたんだ」
先程までの明るい雰囲気とは打って変わり手を胸の辺りでぎゅっとさせながら静かにだけどさっきまでよりもとても嬉しそうにしている。
「そっか、ちゃんと話せたんだな。雰囲気でなんとなくはわかっていたけれども」
「あれっ?バレてた?」
「前以上に元気すぎてうるさくなったからな・・・」
「そっか、そっかぁ。ハハハッ!」
再び朗らかに笑い出す沙月。
その笑顔は作られて笑顔でもなく心の底から笑っているのが俺でもわかった。
「というわけで、これからもよろしくね!ふゆ君」
「おっ、おう!?・・・・・・・」
そう言って目を輝かせながら俺の手を掴み上げて握ってくる。いきなりすぎる沙月の行動に驚いて動けないでいると背筋が凍るのを感じた。
俺は嫌の予感がして後ろを向くと刹那が立っていた。端から見ればいつものようにニコニコとしている刹那かもしれないが今は全く違う。
むしろその逆で目が一切笑ってない、ついでに光も灯っているかどうかすらも怪しい。背後のオーラもなんか黒いし。
「・・・永遠?」
「やっ、これは違うんだ!そのっ!」
「あっ、せっちゃん!ふふふ、これはねふゆ君が今までのお礼にって!私は断ったんだけどふゆ君がどうしてもって言うから仕方なくだよ!」
「はっ!?お前何言って・・・」
「というわけで、ふゆ君はせっちゃんにあげるね!後はごゆっくり~これからもよろしくね!」
嘘で塗り固めた出来事を刹那に伝え満足そうに去って行く沙月。
俺はクラスのもとへ向かう沙月の背に恨みがましい視線を送りつけていたが
「と・・・・わ?・・・・」
その恐怖な声に俺はガクガクと震わせながらも刹那に視線を戻す。
「帰ったらお話、しょっか」
笑顔を浮かべる刹那に俺はただ、
「はい」
としか言葉にすることができなかったのであった。
その後はクラスが解散して部活の片付けをご機嫌斜めな刹那に背中を睨まれながら全ての作業を終えて家に帰ってこってりと絞られましたがなんとか誤解だとわかってもらいました。
ていうかちゃんと沙月からというのはわかってたみたいだ・・・・・・・恐ろしい。
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次回から刹那の事について迫っていきます。話が重たくなる予定です・・・




