89.いつまで初々しいんだよ・・・
「何お前ら、真っ赤になって座り込んでるんだよ」
恥ずかしさがなかなか引かなくて、必死に格闘して座っていたらそれなりに時間が経っていたらしく、気づけば周りが俺達をチラチラと見てきており、顔を上げると晴生と愛華が呆れたような目つきで見下ろしていた。
「それは!・・・・そのぉ・・・・あわわわっ!?」
刹那はさっきの自分がしてしまったことを思い返してしまったようで、落ち着きつつあった顔が再び赤く染まっていく。
「刹那!?とっ、とりあえず、おっ、おちつけ!」
「へっ?と、とわ!?わぁああ・・・」
俺は刹那を宥めようと刹那の頭を撫でたのだが、それがどうやら逆効果になってしまったようで刹那は余計に恥ずかしんでしまい、プシューっと湯気が出ている効果音が付きそうな程、顔がイチゴのように染まってしまった。
そんな俺達の様子を見ていて「はぁ」と溜息を溢しながら晴生は言った。
「お前ら、いつまで初々しくしてるつもりだ。何だ?俺らをけなしてるのか?このぉ・・・」
「まぁ、どうせいつもみたいに、刹那が恥ずかしい事やって自爆したんでしょ」
などと言いながらやれやれと手を横に挙げながら呆れたようにこちらを見つめてくる。
ていうかなんでわかるの?えっ、もうお決まりのパターンなんですか?
刹那は顔を俯かせながらもコクりと無言で小さく頷く。
「とりあえず、あんたら目立ってるから、音楽室行くわよ」
と愛華と晴生は固まる俺と刹那を強引にこの場から引き離して俺らを音楽室に連れ去った。
「落ち着いたかしら?」
「うん」
愛華の質問に刹那は静かに答える。
「今度から、外でイチャつくのはいいけども、自爆して動けなくなるほど過激なことはやめなさいね」
「あぁ、助かった・・・次からは自制するようにする」
と次からも気をつけますと発言しておきながらなんだが、今回みたいな事例は刹那がいきなりぶっ飛んだことをしてきたのに、それを対処するのは無理なのでは?
ていうか、あの様子を他に見られていたと思うと・・・・ぐぁっ、恥ずかしい!・・・あぁ穴に入りたい、でもそんな入れるところはないよなぁ・・・・あっそうだ!ティンパニの間に収まることにしよう。
俺はそんなどうでもいいことを考えながら、さっきの光景を思い出さないように必死に別の思考で頭いっぱいになるようにして、恥ずかしさを誤魔化す。
「にしても、お前らがずっと初々しくて、そわそわして・・・・いい加減落ち着いてくれないと・・・、俺達・・がな・・・・」
「?・・・・・・最後が聞き取れなかったんだが?」
「いや、こっちの話」
「?、そっか、ならいいけど」
晴生にしては珍しくゴニョゴニョと言うので気になりはしたが、わけもわからないので思わず首を傾げる。
晴生の隣にいる愛華も見たのだが、どこかそわそわしてる・・・・?気がする。
「はいはい、というわけで、文化祭の続き行くわよ!」
愛華が手をパチンと叩き注目を集める。
「そうだぞ、お前らが恥ずかしがっている間にも時間は過ぎ去っていくんだからな!」
そう言いながら音楽室を出ようとする晴生と愛華の背中を見ては隣にいる刹那を見て、
「行くか」
「だね」
再び刹那の手を握り、俺達も続いて音楽室を出て行った。
その後は俺と刹那、晴生と愛華で2人1組のペアとなり、文化祭をぐるぐる回っていた。
最初に数量制限があり売り切れ間近だった食料から中心に回っていき、焼き鳥や焼きそばから、かき氷や饅頭を食べ終わった。
刹那は昼をまともに食べていなかったとはいえ、あれやこれと食べ物を見つけては店に俺を引っ張っては入っていき、注文していった。
一方の俺は既に焼き鳥の時点で腹を十分に満たすことができていたのでそれ以上はいらなかったので、刹那の分だけを買って、食べているのを隣でただ眺めていた。
時々、刹那から「あーん」をご所望されるのでその時だけ「あーん」をすることにしていた。
その時はやっぱりお互いに恥ずかしかったが、適度にやったおかげで恥ずかしさ以上に楽しむことができた。とはいえ1食に1回は必ず要求されたが。
俺が別に作った料理でもないが、俺が刹那に食べさせてあげたときはいつもよりさらにおいしそうにして食べるのでそんな顔を見ながら頬を綻ばせていた。
晴生と愛華は気を遣ってくれたのか、一緒に回っていたといっても俺達とは少しだけ離れたところで過ごして互いに食料関係を終わらせたところで合流してきた。
ていうか、今さらだが愛華と晴生って本当に仲いいよな。
2人で先日の俺達の初デートを尾行しているぐらいだしな。
まさかな?・・・・・・・・とも思ったが、きっと俺達をからかうネタを2人で手を組んで粗探ししているに違いない。
部活のパート練でいつもいじってくるあいつらを想像したら自然とそう思えたので今のところの結論はそういうことにしておく。
あれっ?そう思うとこれからのパート練に行きたくなくなってきたぞ・・・。
その後、合流した俺達は校舎内に入り、謎解きをしながら進む迷路、1の大きな段ボールの中を9つの箇所に分けられたスペースにボールを投げ入れていく競技をやった。
謎解きは刹那がパパパっと答えていくのでそれぞれの謎解きの箇所にいる係員が驚きつつも落胆したような表情で「正解です、次にどうぞ」と俺達を次の迷路に案内していた。
きっとたくさんの時間をかけて頭を悩ませて問題を考えてくれたのだろう。それなのに刹那があっさりと迷うことなく答えていくので現実は非情である。
すまないな・・・って誰に謝っているのだろうか。
迷路に関しては、装飾や雰囲気が少しホラー要素強めだったので、迷路ではあんなにもたくましかった刹那は若干涙目で俺の腕ギュッと抱き締めながらびくびく歩いては謎解きの問題に当たった瞬間に抱き締めていた腕をパッと離して照れ隠しのように即答で答える刹那が見ていて面白かった。
よかったな。
迷路に関しては刹那にギャフンとやれているぞ。君たちのおかげでかわいい刹那が見れて俺は満足です。
ボール入れの結果は聞かないでくれ。刹那の圧勝だったから。
後は体育館に行ったりしてステージでの劇を見たりしていた。色々なジャンルのコラをモチーフにした劇で、ネタが色々と考え込まれていて久々に声に出して笑うほど面白かった。
刹那も隣で口を必死に抑えて声が出ないようにしながら笑っていた。声は漏れてたけども。
文化祭の時間も終わりを告げて、俺達はクラスに戻った。クラス企画の集客はかなり上手くいったようだ。
後はどれだけ良い印象を与えられたかどうかだ。俺の指示のもと皆でおばけ屋敷を解体していく。
これまでたくさんの時間をかけて準備してきたのにそれをたった1日で片付けなければならないのはなんだか虚しくなる。
「今日までありがとう、そしてお疲れ!こんな俺がクラスの責任者になってしまったが、皆がアイデアを出し合ってくれて準備してくれたおかげで今日は大成功を収めることができた。賞がもらえるか気になる人もいるかもしれないが明日は文化祭2日目!しっかりと休んでくれ。それじゃあ解散!」
そして文化祭一日目は終わった。ちなみにクラス企画の優秀クラスには表彰がある。その結果は明日の閉会式だ。
明日は2日目、吹奏楽のステージ発表がある。楽しみでもあり、緊張していたが俺と刹那は即行で布団で寝てしまっていた。
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