表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/130

88.パクパク、・・・

 「次、これ行かない?」


「あぁ、そうだな。向こうにあるみたいだから早速行くか」


 俺と刹那は、午後から再開した文化祭をゆっくりと回っていた。周りの出店には客がちらほらと並び始めている。まだ始まったばかりなので客足はまだそこまで多くなかった。


 俺と刹那は、クレープ店に並んだ。


 メニュー表を見ると、味付けはチョコバナナとチョコクリーム、イチゴソースでトッピングは特になく、プラス50円でソースやクリームの増量だった。


「いっらしゃいませ!・・・あっ!先輩!」


「お疲れ、優夜」


「お疲れ様、優夜君」


 クレープ屋さんのオーダーをとっていたのは刹那のクラリネットの後輩である黒田優夜だった。

 ここは彼が所属するクラスだったようだ。


「チョコバナナとイチゴソースを1つずつで」


「わかりました!」


 俺達のオーダーをバックにいる調理メンバーに伝えて少しだけ優夜と話す。

 

 店の売り上げ的にも幸いなのかは知らないが俺達の後ろに客が並んでいないかったので助かった。


 とはいえそれはクラスとしては問題なのかもしれないが客である俺達からすれば人が少ない方がこうやって知り合いとは話すこともできるし、列に並ぶ必要もなく早く食べることができるのでこちらとしてはありがたい限りである。


「さっきは来てくれてありがとうね」


「いえいえ、楽しかったですよ。最後には流石にびっくりしましたが。受付のときの格好も似合っていましたよ」


「ふふっ、ありがとうね」


「明日は頑張ろうな」


「はい!・・・・・っあ、お客が来たので僕はこれで。イチャイチャはほどほどにお願いしますね」


 次の客が来たので優夜は最後にニッと笑ってから次の客の対応をし始めた。俺達は邪魔にならないように横にはける。


 俺達はクレープをもらって臨時に併設されていた日陰のベンチに腰を下ろしてクレープを一口頬張る。

 俺はチョコバナナ、刹那はイチゴソースだ。


 クレープの量に負けることなくたっぷりとソースがかかっており、甘くておいしく感じられた。


 午前に校舎内を歩きまくったからかそれとも昼休みの出来事からかは知らないが、エネルギーをたくさん消費したからだろうか、いつもだったらくどいかもと思ってしまう量でも問題なくいけそうだった。


「んー!仕事終わりのスイーツはいいなぁ!」


「お疲れだったな」


「永遠もお疲れ!」


 おいしそうにクレープを頬張る刹那。

 気づけば半分も既に食べ進めていた。

 

 食べるの早すぎるだろっ。


「食べるの早いな!」


「おいしかったからつい」


「それにしても不思議だよな、味とかは別に普通のはずなのにこういう文化祭みたいな出店の雰囲気の中で食べるとさらにおいしく感じるんだよな」


「あっ!それはわかるかも。こういう出店ってなんだかいつもとは違った特別感があっておいしく感じるんだよね。」


と談笑しながら、食べていると、隣から視線を感じたので横を見るとじーぃっとこちらを見つめてくる刹那がいた。


 正確に言い直すと、俺が持つクレープを羨ましそうに見つめながら、俺がクレープを動かす度に横目で確認すると黒く透き通った瞳がくるくると動き回る。


 なんだか猫を見ているようでかわいかったのでしばらく遊んでいると、俺が遊んでいることがバレたのか頬をぷくっと膨らませて俺を睨んできた。


 今度はクレープではなく俺を。

 だけどそのふてくされているのがまたかわいくて、無視しようかと迷ったがこれ以上機嫌を損なわせるのもあれなので俺は自分が持っているクレープを刹那の前に差し出す。


「はいっ」と言いながらクレープを近づけるのだが、刹那は顔をふんっと横に背ける。


 どうやらいじけてしまったらしい。そんな刹那を見ていると思わず口角が上がってしまいながら、


「へぇ、いらないのか?じゃあ食べちゃうな」


 わざとらしく「あーん」と言いながらゆっくりと自分の口に近づけていく。

 その様子を刹那はぷるぷるとさせながらキッと睨みつけてくるが全く怖くなく、むしろ必死に意地を張っているのがまたかわいい。


 とはいえゆっくりと動かしているのだが、予想に反して刹那が折れてくれないのでどうしようかなと思っていると、急に刹那が立ち上がって俺の真正面に来て、なんだ?と思って固まっていると、次の瞬間には刹那の顔がめちゃくちゃ近くにあった。


「えっ・・・」


 俺はそのいきなりすぎる行動への驚きと刹那の顔が目の前にある緊張や恥ずかしさから、一気に心臓の拍動数が増加する。顔もカァアーとするほど熱い。


「あ・・の?・・・・・・・刹那・・さん?」


 俺はこれ以上は耐えられないので刹那に訴えかけるのだが動かない。


 直接顔を見るのを避けようと目線を下にやると刹那が「んっ・・・・んっ・・・・」とひたすら俺のクレープを食べ進めていた・・・・顔を真っ赤にしながら。


 チマチマと食べ進めていく刹那は餌付けされているハムスターみたいでめちゃくちゃかわいかった。抱き締めたいとか色々な衝動が体を駆け巡ったが、それらを必死に抑える。


 すると刹那の食べる手が、いや口が止まった。


 これで解放されると思ってじっとしているのだが一切動かない刹那。刹那はひたすら上目遣いでこちらを見上げて、目で何かを訴えてくる。


 はいはい、そうですか。訴えられている内容がわかったのと、これ以上、羞恥に赤く染まりきった顔に揺れた瞳で上目遣いで見られてしまうと理性が焼かれてしまいかねないので俺は早速行動に移していく。


 俺はなんとか空いている手を動かしながら、クレープが入っている紙を下に向かって破いていく。


 それを合図にまた刹那は無言で食べ始めた。その後も刹那が食べ進めていくスピードに合わせてクレープの包装紙を破いていく。


 何も考えるな、俺。

 心頭滅却、南無阿弥陀仏・・・・あれっ?南無阿弥陀仏って仏教のどの宗派だったけ・・・・・あっ!、浄土教かとひたすら目の前から現実逃避をし続けた。


 俺の心臓がバクバクと音を立てながらただ無心に紙を破いていくのであった。


 刹那が俺のクレープを食べ終わった後、互いに顔が耳まで真っ赤でしばらくベンチに座りこんでいたのは言うまでもない。手は繋いでいたが。

読んでいただきありがとうございます!


面白い?続きが気になるかも?と思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします!


今後もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ