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86.文化祭1日目!

 待ちに待った文化祭本番がやって来た。2日間あるうちの初日はクラス企画中心である。今日まで各クラスで準備してきたものがそれぞれ発表されるので自分としても今年はどんな文化祭になるのか楽しみである。明日は吹奏楽部の演奏があり緊張しまくるだろうから、今日はめいいっぱい楽しむことにしよう。


朝、集合した俺達は出席を済ませた後、最後の調整をして、それぞれの持ち場に着いた。刹那は入り口で受付を文化祭始めである10時から12時間の2時間である。


俺のその時間は、おばけ屋敷の宣伝のためにかわいらしい丸くて白いおばけやドラキュラがデザイされた看板を掲げながら学校中を歩き回っている。2人1組なので俺は今晴生と一緒に回っている。声を張って宣伝してくれているので俺は声を出すことなく助かっている。


俺は周囲を見渡しながら人が多そうなところを見つけてはその中に入り込んでいき宣伝していく。そしてそのついでに各クラスの企画がどのようなものなんかをチェックしておく。午後からはシフトを終えた刹那と一緒に回る予定なので、受付で動けない刹那の代わりに下見を済ませておこうと思った。


「おばけ屋敷!気になる人はどうぞ!」


「どうぞー」


「面白い仕掛けをたくさんご用意しました!」


「しましたー」


「今なら受付で美しい雪女もいまーす!」


「いませーん」


「受付に来るだけでもいいので、是非来て下さい!」


「来なくていぞ-」


「・・・」


「・・・」


晴生が大声で宣伝するのに対して俺はその後に周りには聞こえない程度に呟く。晴生は俺のことをじっと睨んでくるが、俺の顔を見るやいなやすぐに「はあぁ」と呆れたように溜息をつきながら、


「お前なぁ、嫉妬しすぎだぞ。受付なんだからしょうがないだろ。少しは我慢しろ」


「お前が余計なことを言うからだ」


「クラスの強力な武器は上手く使うべきだろ?」


「だからってなぁ、そんな大々と公言しなくてもいいだろ。あれを見ろよ」


俺はある方角を指差し晴生も俺が差した方を見る。


そこには4人の男子グループが「受付の雪女がめちゃくちゃかわいいらしいぞ!」「さっき宣伝してた人が言ってたな!行こうぜ!」「受付の女子と・・・」などと騒がしく言葉をまくし立ておばけ屋敷の方へ向かっていった。


「あんなクソなやつらを刹那に近づけさせたくない」


「妬くなとは言わないが少しは抑えろ。向こうでは愛華や他のクラスの皆も一緒にいるから大丈夫だろ」


「まぁ、そうだけど」


刹那は受付で客の入場を管理、愛華は列の整頓や出口を担当しているはずだからもし仮に何かあったら対応はできる距離にある。だけど、俺が単純に嫌なだけなのだ。刹那がそういったふざけたやつから好奇な目線を向けられているのが・・・・となんとも気が小さい自分ではあるが嫌なものはしょうがない。


「ま、心配しすぎてもあれだし、お前は今のうちに物色しておけ」


「言われなくてもやってるわ」


と午後のことをからかわれながらも時たま宣伝をしながら歩き回るのであった。


 その後も各クラスの企画したものを眺めながらここは楽しそうだな。これは刹那が喜んでくれそうなやつだなとか想像を繰り広げているとふいに晴生が小さな声で尋ねてきた。


「そういえば、個人のプライバシーになるかもって思ったから聞くのは避けてきたが、白河さんの件についてはどうなったんだ?前にいきなり元気をなくしたと思ったらその翌日には今までを越えてくるハイテンションぷりだったからな。一瞬引くレベルだった」


そういえば、晴生には聞くだけ聞いて何も言ってなかったな。話すかどうか迷ったがこのことは詳細には言わない方がいいだろう。あくまで沙月の家族内の問題だしな。


「何か悩みを抱えていたらしいけど、それがすっかり解消されてあのテンションMAXの天真爛漫少女に進化したらしい。」


と曖昧な返事をしたのだが、晴生はうんうんと大きく頷いて、


「なるほどね、お前のおかげで白河さんは元気になったと・・・」


「なんでそうなるんだよ」


実際そうなのかもしれないが・・・・・とはいえ俺はきっかけを作ったに過ぎない。それを実際に実行したのは当人達であって俺でも刹那でもない。だが沙月が元気になってくれて、家族とちゃんと話すことができて良かった。


そんなことを考えていると、晴生が嬉しそうに笑って、


「永遠も変わり始めたんだな」


と言葉を溢すのに対して、


「まあ、そんなところだ」


とだけ返しておいた。


「さて!仕事の終わりまで後30分!ラストスパートいくぞ!」


「そうだな」


晴生が声を張り上げる。俺も同意しておく。そうしてまた俺達は人混みの中に入り込んでいく。


「午前の部終了まで30分でーす!まだ行ってない人はぜひ!」


「もちろん来てくれたひとでも」


「後30分でかわいい雪女が受け付けからいなくなっちゃうぞ!」


「後30分しかないからやめておいたほうがいい」


「もう二度と見られないかも!」


「・・・お前なぁ」


もう俺は抵抗するのは諦めた。晴生の宣伝効果はそれなりにあり、周囲の人達が動き始めている。『かわいい雪女』に反応して正午まで後30分しかなくそんなに大勢で押しかけても全員が入りきれるわけでもないのに教室に向かおうとする人達を見て、俺は大声で宣伝活動をし続ける晴生を睨みつけながらも看板を掲げ歩き続けるのであった。

読んでいただきありがとうございます!


面白い?続きが気になるかも?と思った方はブックマークや評価を是非!


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