表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/130

85.文化祭前日

 「というわけで、これで準備万端!皆お疲れだぁ!」


控え室の教室の真ん中で高らかに叫んでいるのは、文化祭実行委員こと白河沙月。

家族とちゃんと話し合えたようですっかりともとの調子を取り戻し・・・いや今まで以上に元気に騒がしくなりより一層手をつけられなくなった。


まあ、本人が元気そうなのでなによりだろう。楽しそうに家族の話を刹那と休憩中とかにしていたようだしな。


そんな復活と進化?を果たした沙月はより文化祭のために準備に気合いがはいり、あれやこれやと実行委員として活動しながらもちょくちょくクラスの方にも顔を出してきては準備を手伝ったりもしてくれた。


そしてそんな沙月の熱量に押されたのかクラスの方でもさらに怖がらせるための策が考案されていきどんどんクオリティが進歩していくのがわかった。


ただ、若干それが暴走しがちで少し学校でやるものとしては過激すぎるところもあったので、そこは、『もう少し小道具を作って、間接的に頼む』とセーブしなければならなくなってしまった。


だって、直接触るとか言い出すやつがいて流石にそれは訴えられるからな。まじで色々と。妥協案として細長い紙を棒にいくつもつけたものを介して触れるという俺の意見が無事通りそれはなくなった。どうやら俺の案は揺らした時に紙がカサカサといった音も立てるのでより臨場感が出ると好意的に受け取ってもらえたみたいだった。


そしてその裏で部活の練習で、こっちに至っては特に心配することはなさそうだった。ちゃんと曲は一通り吹けるし動きも流れもしっかり頭にたたき込んだ。去年経験しているので緊張こそすれど今さら慌てることはない。今までやってきたことを出せるように頑張ろうとそんなことを思っていた。


そんな日々を過ごし気づけば今日は文化祭前日。明日は待ちに待った文化祭本番である。

俺は周りを見渡しながら疑問に思ったことを口にする。


「あれ?刹那知らない?」


と口にした瞬間、さっきまで騒いでいたやつら瞬時に俺の方をニヤニヤと見るだけでもムカつく顔でこちらを眺めてくる。


「はーい!ふゆ君も気づいたことだし!試験運転といこっか!」


と、沙月のかけ声と共に控えの教室を出て完成されたお化け屋敷がある教室へ一斉に向かっていくクラスメイト。俺はこの場に残った沙月に「どういうこと?」と説明を求めたところ、


「本番前の試験運転を今からやるから、ふゆ君が実験台になってね!」


と無邪気な笑顔でいきなりカミングアウトする沙月。

そんな話は聞いてないぞと驚きで固まっていると、


「大丈夫!一緒に受付用の着替えを済ませた刹那も入ってもらうから、存分にイチャイチャしてくれたまえよ!」


とムカつくくらいに口元に手を当てニヤニヤとしていた。


・・・?ちょっと待て今、受付用の着替えを済ませた。とか言っていた気がするんだが?・・・ってまさか!


俺が何が起ころうとしているのか理解した瞬間、扉がガラリと音を立てて開かれた。俺はその音がした方向に振り向くとそこには、白と水色の縞模様の浴衣?とでも表現すればいいのだろうか、そんな格好をした刹那が目の前にいた。


そこにはいつものようなかわいさといったものではなく、凜とした美しさで見るものを美しさのために見た人全てを凍らせてしまうであろうまさに雪女であった。


なるほど、これが石田の言っていたやつか、すっかり頭から抜け落ちてしまっていたがちゃんと実行に移しているとは、抜かりのないやつだ。


「・・・と・・わ・・・・・・永遠!」


と刹那がいつの間にか俺のすぐ目の前までやってきており、俺の名前を呼んでいた。その声に俺の意識はここに戻ってくる。「どうしたの?」と首を傾けて見上げてくるので、その純粋な表情にドキリとさせられながらも、「なんでもない、さてと実験台になるとしますかね」と答えて刹那の手を握る。


今日は服装がいつもと違うだけなのに手を繋ぐだけでめちゃくちゃ恥ずかしかった。だけどそんな俺の気持ちを知る由もない刹那は屈託のない笑顔を浮かべて、


「うん!」


と頷き、一緒にお化け屋敷のある教室に向かい、クラスの人達に案内されるがままにセッティングされた暗闇の教室に入っていくのであった。


その愛らしい笑顔は先程までの誰もを凍らせる綺麗で美しい雪女の姿なんかではなく、あどけないかわいさがいっぱいの小雪姫といった感じだった。


俺はそんな幼い笑みを浮かべる刹那を眺めていたのだがそういえばまだ大事なことを言っていないことに気づいてしまった俺は「刹那」と名前を呼びかける。


刹那は名前を呼ばれると不思議そうに首をこてんと傾けて「どうしたの?」と上目で尋ねてくる。そんな刹那の様子に自分の心臓がさらにドキリと鳴り出すのを自覚し頬が熱くなっていることを感じながら恥ずかしくも言い忘れたことを口にする。


「似合ってる・・・その格好」


「へっ?」


「だから!すごく似合っていて、かわいいよ・・・刹那」


「・・・あ、ありがと・・・嬉しい・・・」


ポッと顔を真っ赤に染め上げてしおらしく俯かせる刹那。そのことで髪に隠れていた耳が露わになりその小さくて柔らかそうな両耳まで赤くなっているのを見て、照れているのがわかり、思わず「もぉ、かわいいなぁ」と口走ってしまい。刹那には俺の溢した言葉がバッチリ聞こえていたようで「バァかぁ・・・」と右腕に引っ付かれてしまった。


刹那本人は羞恥心から顔を隠すためにやった行いかもしれないが俺にとってはそんな刹那の行動が余計に心臓の鼓動を加速させた。

思いっきりしがみついてくるので刹那の小さくて細い指や小さいとも大きいともいえないそれでも確かに存在を感じる2つの柔らかいものの感触が伝わってきて必死に理性を働かせなければならなくなってしまった。


そんなこんなで試験運転に入る前から道中でかなり体力を削らされた俺達だったがおばけ屋敷の教室に近づくにつれて刹那が「こわい」と震えだしたのを見てまるで死地にでも行くような顔をした刹那を慰めることに全意識を注ぐのであった。


ちなみに刹那は怖いものが超が付くほど苦手で入った瞬間『っ!・・・』と声にもならない悲鳴を上げながら俺の腕に抱きついてきたり、仕掛けにびっくりした刹那が俺の手を引っ張り外に出ようとしたら、最後の一直線のルートになったところで背後から思いっきりな音でロッカーに隠れた怖いお面をつけて工作で作られたアルミ箔の輝きが目立つ包丁を持った男が追いかけてきたところで限界に達したのか『あっ!?・・・・・』と空気が漏れたかのような悲鳴を上げた後刹那はぷつりと気を失って倒れてしまった。


俺は気を失った刹那を抱えながら予想以上に完成度が高かったお化け屋敷から出た。


その後、俺は実験台にされた感想を皆にきっちりと伝えた。とはいっても予想以上の完成度で特に内容については言う必要はなかったので、『リア充が来たからってやりすぎないようにな』とだけ伝えておいた。そしたら『自慢するなぁ!』『爆ぜろぉ!』と逆ギレされてしまった。


他に感じたことはまだあったのだがそれを言う機会がなくなってしまったので、クラスが解散した後、刹那が目を覚ますまで待っている間に気づいた点を修正しておいた。後は当日の冷房の設定温度をいつもより低くしてもらおう。


俺は一通りの作業を終えたので、眠っている刹那の隣に座る。


雪女の格好をしたまんまの刹那は気持ちよさそうに寝ている。その無防備であどけない寝顔がついかわいくて、刹那の頬に手を伸ばしてそっと触れる。


今刹那は雪女の格好をしているが、周りを凍らせるほどの美ではなく年相応の少女らしい顔をした日本版白雪姫みたいな感じだった。とはいえ別に死んだように眠っているわけでもないのだが。キスでもすれば目を覚ますのだろうか。


などとバカなことを考えながらも柔らかくてさわり心地がいいのでふにふにしていると、刹那が俺の手を掴んできて俺の手に頬ずりをしてきた。「むにゃむにゃあ・・・」と口角を上げて幸せそうに口をごにょごにょさせていた。その純粋無垢な寝顔を向けられ俺の心臓は加速する。


まったく、仕方ないな刹那は。


刹那の愛らしい寝顔を眺めながら、誰もいない静かな教室でしばらく時間を過ごすのであった。

読んでいただきありがとうございます!


面白い?続きが気になるかも?と思った方はブックマークや評価お願いします!


今後もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ