8.至上最低
あの日は、7月初めにしては暑かった。湿度も高くムシムシしていて気持ち悪かった。
その日も刹那は俺の部屋の前で話し掛けに来ていた。
・・・うるさい・・黙れ・・・
ここに来て3ヶ月が経ちイライラがピークに達していた。そして俺至上最低な行動をとる。
俺は自室のドアを開く。
刹那は初め呆気にとられた表情をした後、すぐに笑顔になって、
「永遠!」
と、心の底から嬉しそうに名前を呼んだ。しかし、俺は・・・
「・・・黙れ」
「えっ・・・」
刹那の顔から笑顔が消える。そんなことも気にせず、俺は言葉をまくし立てる。
「うるさいんだよ!いつも、いつも、そうやって話し掛けてきて!お前に俺の気持ちのなにがわかるんだよ!家族が死んで俺独りの気持ちが!なぁ!」
「っ・・・」
「だいたい、お前の家族のふりみたいな様を見せつけられて、俺が喜ぶとでも、思ったのか?お前が俺にしてくることは全て迷惑なんだよ!お前なんかが、俺の孤独感を埋めれるわけないだろうが!もう、構うな!」
「うっ・・・うぅ・・」
刹那は何も言わず、涙を流しながら走って自室に戻っていった。
「クソ!何か言えよ!」
と吐き捨て、俺も自室に戻った。隣から刹那の泣いている声が聞こえる。
この日は昼も夜も飯はなかった。
夜中、トイレに行こうと、部屋を出た。すると、廊下が刹那の声が聞こえた。
自室とは違い、音が廊下に漏れている。
「うっ・・ごめん、・・・ごめんなさい!」
謝っていた。
誰に?なぜ?足は止まり、刹那の部屋に耳を傾けた。
「私が、私なら永遠を救える、もう一度永遠の笑った顔を見ることができるって、そう思ってた・・・」
苦しい。俺の胸がズキズキと痛む。
「でも、それは私の気持ちを押しつけているだけなんだよね・・・ちゃんと永遠の気持ちを考えられてなかった。迷惑だよね。私なんか・・・・」
わけがわからなかった。刹那が泣く理由は俺への怒りでも全く無かった。
それどころか、ひたすら自分を責めていた。
そして、こんなにも俺のことを思ってくれていたことに気づいた。
何やってんだ俺は。くそぉ。
自分の中で色々な感情がぐちゃぐちゃになっていく。
俺は、静かに部屋に戻り、ベッドに潜り込んだ。そして、寝始める。
このぐちゃぐちゃになった感情が俺を押しつぶしてくる前に。
翌朝、結局昨晩はあまり寝られなかった。もう一眠りしようかとも思ったが、
ぎゅるぎゅるっと、腹がなった。思い返せば昨日の朝から何も食べてない。
昨日のことだ、朝飯はないだろう。それどころか、これから飯は無しに違いない。
「とりあえず、リビング行くか」
朝飯を何にするか考えながら、リビングに向かう。
てか、リビングに行くのもなんか久しぶりだ。
そして、リビングのドアを開ける。
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