75.刹那の自爆
いつもより遅い時間に帰宅した俺は、わざわざ一緒に食べようと待っていてくれた刹那と夕飯を食べた後、風呂等をすませてソファに座りくつろいでいた。
「さて、まずは浮気の報告?」
「そうだな、まずはそこからだな。だから目に光を宿してくれないか」
刹那が冷めた声と共ににこりとこちらを見てくるが、顔は一切笑っておらず、目は真っ黒である。
これは、相当妬いてらっしゃる。
確かに彼氏が教室で女子と2人きりで話していたり、一緒に帰り家まで送ってしまったとはいえ、これの発端は刹那が俺を責任者になることを認めたのが原因なので十中八九刹那が悪いのだが。
「そんなに嫉妬するくらいならなんで俺をクラスに引き渡したりなんかしたんだよ」とでも帰ってから愚痴の1つでも言ってやろうと思っていたのだが刹那の怒っているようで実は内心とても寂しそうな顔でそんな気は失せてしまった。
「刹那」
名前を呼び引き寄せる。「あっ」という声が刹那から漏れる。一瞬体を強ばれせた刹那だがすぐにその力が抜け俺にぐっと体を預けてくる。
「刹那。俺は大丈夫。刹那のことが好きなのは変わらないし、他の女子と一緒になることはあるかもだけど、刹那がやっぱり一番だよ」
刹那をぎゅっと抱き締める。相変わらず刹那の体は細くて下手に触ったら簡単に折れてしまいそうなんじゃないかと思い優しく力を込める。
「ありがとう。私も永遠のことが一番好きごめんね、私が自分でやったことでこうなったのに、一人で勝手に自爆して嫉妬しちゃって」
そう言いながら俺にもたれかかったまま上を見上げてくる刹那の目にはちゃんと光が入っており、声も温かみのある優しいいつもの声だった。
「ううん、そこまで気にすることはないよ。責任者になることを許可したのは俺のためにやってくれたんだよな」
刹那の頭を撫でながらそんなことを言うと、刹那が「へっ!?」と驚いているのか目を真ん丸にさせている。
「多分だけど、俺が人との関わりを他に持たせることで俺の克服に付き合ってくれてるのだろう?」
「まぁっ、やり方は強引だけどな」とだけ最後に付け加えておく。
俺のトラウマ・・・家族を事故で亡くし、大切な者を失う恐怖、辛さ。それをもう経験したくないという俺は逃げまくって人との関わりを極力避けるという選択肢を取ってきた。
今まではこの選択に刹那やそれでも俺に関わってくれる愛華や晴生に甘えてきた。だけど、この前のお泊まり会のときに決めたのだ。前に進むことを。そのためには、大切な者を失う恐怖や辛さを内包した上で人と関わっていかなければいけない。
なかなかの荒治療ではあるものの、結局はこれは自分の気持ちをちゃんと整理し、人と関わるようにしていくことでしかきっと克服することができないのだろう。
それを理解し、本当だったら俺ともっと一緒にいたかったであろう時間も削って俺のために人と関わる機会を作ってくれたのだろう。
「気づいてたの?」
俺を見上げながら問い返す刹那の顔がだんだん紅潮していく。
「うん、刹那は優しいから」
「じゃっ、じゃあ!私が永遠のためにやったってこともバレてて・・・・だけど沙月と2人きりで話し合いや帰ったりしているすることに胸が苦しくなって・・ヤキモキして、全部・・・私の自爆だったってことに気づいてたと・・・!?」
刹那の顔は完全に真っ赤になってしまい、目をうるうるさせながら視線をさまよわせている。
俺は恥ずかしがる刹那に、俺が刹那で弄んだかのような気持ちと錯覚してしまい、申し訳なくなって顔を背けながら「そういうことになるな」と顔を背けた。
しかし、その言葉で恥ずかしさが頂点に達したのか、
「うわあああぁ!永遠のいじわるー!」
と顔を俺の胸に埋めながら、ポコスカと俺の肩を叩いてくる。まぁ本気で叩かれているわけではないためそこまで痛くはないのだが。かわいいすぎて別の意味で俺の心臓が危なかった。
一通り俺をポコポコし続けて刹那が落ち着き、瞳を潤わせながら恥ずかしそうに見上げてくるので俺は、刹那の黒い瞳を見据えて、
「さっきも言ったけど、俺のためにしてくれてありがとうな。ただ今度はそういったことは事前に相談してくれると助かる」
「うっ、そうだね。次からは気をつける。ちゃんと相談をするね」
恥ずかしさがまだ残っているのか申し訳なさが少しだけ雰囲気を漂わせながらも下を俯きながら言うのでつい俺のいたずら心が刺激されてしまい、刹那の耳にそっと近づいて、
「ちゃんと相談してからじゃないと、今回みたいに刹那が辛い思いをしちゃうから・・・・・・ね」
それだけ言い切ると刹那の頭がボンッとでも言ってそうな程恥ずかしがりながら顔を押しつけてきてグリグリしてきた。
「ばかぁ」とだけ小さく呟いたのが聞こえたが、これ以上突っ込むと刹那が死にそうになるのでやめておいた。
再度刹那を落ち着かせて、文化祭のクラスでどう動くかや、部活はどうするか。後はおまけ程度に沙月からは「ふゆ君」と呼ばれていることについて話した。「ふゆ君」と呼ばれていることについて話したら、刹那が慌てて『わっ、私も何か考えたほうがいいのかな!?』とビクビクしてたので、
『刹那が呼びたい言い方ならどれでもいいけど、好きな人からはやっぱり名前で呼ばれたいな』とだけ伝えたら嬉しそうにはみかみながら、『永遠!』と名前を呼んでくれた。
ていうかこの呼び名の話が個人的には一番どうでもよかった話な気がしたのだがこの話が今日一番に刹那が荒れてしまったために短くまとめたものの実はそれなりに時間をかけてしまい俺は少し疲れてしまった。
とはいえ、決まったことはたったの1つ、部活の時間にはちゃんと来れるように!だけである。
なんだか急に慌ただしくなってしまった新学期始めだが、クラスでも部活でも文化祭を頑張っていこうと隣に座っている刹那の笑顔を見ながらそう思った。
読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします!
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新作を短編として出しました!ジャンルはローファンタジーです、たぶん内容的には。
ファンタジーと称しておきながら、日常と戦闘の比率は7:3です。
幼い少女(小学生低学年)黒華と刀哉のほのぼのとした日常を過ごしながら、戦いが入り混じる話となっています!
【短編】 戦いの時だけロリっ娘(マジの幼女)が武器に変化するのですが!?
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