7.そろそろ説明を
あの後俺は30分程仮眠をし、刹那が作ってくれたオムライスを食べた。
うん、やはり刹那の料理はおいしかった。
ケチャップライスは程よくパラパラしており、オムレツもふわふわで切り開くとバターの香りとともに、半熟上のトロトロ卵が現れる。
俺なんかには、一生作ることのできない代物である。
その後は、うとうとしていた刹那が後片付けをしようとしたので、さすがに限界を感じ、
夕飯になったら起こすから、それまで寝ろと言い聞かせ、
少々強引に部屋に連れて行きベッドに寝かせた。
なぜか、手首をつかまれ部屋から出してくれなかったが、すぐに眠ったのを確認して、
刹那を起こさないように静かに部屋を出た。
そして今は昼飯の後片付けをし終えたところである。
ソファに座り、夕飯を考える。今日はあっさりしたものがいいかな・・・・
とまぁなんだかんだですぐに決まり、食材も家にあったので買い出しに行く必要はなかった。
さて、そろそろ説明することにしよう。
なぜ、家族でもなく、付き合っているわけでもない思春期真っ最中の2人が同じ家に住んでいるのか?
親はどうした?と色々でてくることだろう。今、答えられる限りを答えよう。
まず、この家は刹那の、夏山家のものである。
そして、刹那の両親2人とも現在海外出張中である。
なので、先の事故ではこちらに来ることはできなかったのだ。
次に俺だが、おそらく夏山家の養子となっていると思われる。今の俺には家族がいない。
中学1年のこの時期に父、母、弟が交通事故に遭ってしまい、亡くなってしまった。
祖父母も既に他界しており、俺を引き取ってくれる親戚もおらず、
このまま施設に送られそうになった俺を夏山家が向かい入れてくれたのだ。
夏山家とは、家も元々隣同士で親同士もかなり仲が良く、小4の時夏山家が引っ越して来て以来、
仕事で忙しかった刹那の両親に代わって冬海家で刹那の面倒を見るぐらいである。
俺の受け入れはもともと刹那が言い出したらしく、初めは両親もさすがに反対していたが、
刹那の強い希望で、最終的に認めたようだ。
まぁ、もともと、仕事で家にいることが少ない両親にとっては誰かいてくれた方が安心だし、
刹那にも今まで寂しい思いもさせてきたからなのか、刹那には少し過保護過ぎないかと思うぐらい元から甘かった所もあった。
なんで刹那が俺を受け入れることを、そんなに望んだのかは未だに謎である。
もちろん当人に聞こうとするとなぜか逃げられ、両親もそのうちわかるとニヤニヤして教えてくれない。
話を戻すと、事故後の俺は、自暴自棄で生きる希望も見いだせず、もうどうでもよかったが、
両親は忙しい仕事の合間を縫って世話をしてくれたし、我が子のように、大切に育ててくれた。
なにより、刹那はどんな時でも笑顔で明るく俺に話しかけて励まそうとしてくれたり、
家事もやり出した。
しかし、俺は事故から立ち直ることができてなかった。
俺は中学校にも行かず、両親、そして、刹那がこんなにも自分を犠牲にしているのに、
俺はコミュニケーションも一切取らず、話し掛けられてもずっと、自室に閉じこもり、無視し続けた。
今思えば、この時期の俺は本当に最低最悪のクズだ。
そんな生活が3ヶ月間続いた。
そして、7月初め俺に転機が訪れる。
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次回からは永遠の過去編です。