67.私だけに触れてほしくて
「まぁ、そうなんだよ。俺もたまに作ってみたりしてるんだ。だからけっこう覚えてきちゃってハハハ・・・」
背中で汗が滴るのを感じながらも晴生に合わせるように笑い飛ばす。
「そうそう、この前なんかはね朝ご・・」
「あああああ!」
朝ご飯というワードを出そうとした刹那を止めるためわざとらしく大声を出す。この状況で朝飯も作ってますなんて言ったらさらに疑われる。
「そっ、そういえば風呂に入らないとだな、というわけでどうする?」
俺は無理矢理ではあるが話題を逸らす。そして女子2人の後男子2人が入るという結論になった。
「じゃあ、俺は風呂に行ってじゅんびを・・・」
「わああああ!」
お風呂の準備に行こうとしたら刹那に遮られてしまった。
「私が今から準備してくるから、永遠は片付けをお願いね」
言われてから気づいた。そうだよな、風呂の準備方法を知ってたり抵抗なく入っていくのはやばいよな。刹那が止めてくれて助かった。
「わかった、こっちで片付けておくよ。後で風呂の使い方も教えてな」
今さらではあるものの一応使ったことありませんアピールを周囲にちらつかせておく。
「それじゃあ先に案内するね」
風呂場に案内され、なぜかずっと使ってきた風呂の説明を聞くことになったのだった。
その後、女子達が風呂を済ませた後、男子も風呂に入ろうとしたのだが、
俺達が入る前に、
「風呂に浸かったのは刹那だけだから、入りたかったら永遠は入っても良いんだよ」とか
「湯上がりの刹那はかわいいでしょ」
と調子に乗ってからかってきたので軽く頭に手刀を加えてやった。
ぶっちゃけた話いつものことで湯上がりの刹那が色ぽっく見えてさらにかわいいなんて当たり前だろう。
風呂も別に浸かったりしてるし、今さら言われたところでそこまで激しく動揺することはない。
しかし、刹那が物欲しそうに上目で見つめてきて「愛華だけずるい」と頭を差し出された俺はなんでかよくわからないまま刹那の頭をそっと撫でた。髪が揺れる度に良い匂いがして、風呂上がりの髪もしっかりとドライヤーなどで乾かしており一本一本が綺麗でさらさらしておりすごく気持ちよかったのだが、「これでいいか?」聞くと、
「嬉しいけど、違う。さっき愛華にやったやつをやってほしい」
さっきって・・・・まさかの手刀!?
「えっと、手刀の件です?」
と確認すると、恥ずかしそうにモジモジさせながら、
「うん」
と言われたのだが、俺は悩んでしまった。正直なところ刹那にはそういったことはしたくない。たとえ軽くやると言われても俺が刹那を傷つけるといったことはしたくない。俺がそう渋っていると、我慢できなくなったのか、
「だって、永遠が先に愛華の髪に触ったから、すごく嫌な気持ちになった。愛華にもできることをせめて私にももっとしてほしい」
と胸の前で手をギュッとさせて苦しそうに呟く刹那。
なるほど、どうやら俺が完璧に悪かったようだ。普通に考えれば当然だった、彼女の前で彼氏が別の女子の髪を手刀とはいえ触るのは嫌に違いない、だから刹那も欲したのだとそう思った。
俺は刹那を抱き寄せて、頭の上に優しく手を当て、ぎゅっと抱き締めた。
「ごめんな、刹那の気持ちまた考えられていなかった。だけど刹那には手刀なんかはできないよ。せめてものだけどこれで許してはもらえないか」
「ううん、わかってくれたならいいよ。私も永遠に他意がないのはわかっていたのにだけどどうしても抑えられなくって。責めてごめん」
風呂上がりの刹那は肌がいつにもましてすべすべで柔らかくて、体が火照っているのか温かく感じた。
刹那も俺の背中に腕を回して抱き締め返してくれる。
「やっぱり、私って意地悪?」
「何をいまさら」
と近くでぼやく愛華と晴生の声にハッとし、体を離す・・・・のだが俺の体は離れなかった。
俺は離したのだが、刹那が離してくれなかった。
「もうちょっとぉ」といいながらグリグリと頭を俺の胸に押しつけてくる。
「なんでこんな惚気を見せられてるんだろ私達」
「お前のせいだ」
俺は他2人の呆れたぼやきと視線はシャットダウンすることにし、ひたすらに刹那の温もりを感じているのだった。
ご機嫌回復した刹那を愛華に預け、男子2人で風呂に入った。時間もそれなりに経過していたためか浸かった湯は少しぬるかった。
その後は、軽く夜の勉強を済ませて、23時になったところで寝た。刹那と愛華は刹那の部屋で、俺と晴生はお義父さんの部屋で寝た。
そして、翌朝。なんだか騒がしくて大声で名前を呼ばれてうるさいなぁと思いつつ目を開けると、真っ青な顔をした愛華が俺をはたき起こしていた。
「永遠、やっと起きた。刹那がいないの!」
「はあっ!?」
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