64.バレないように・・・
「おい、刹那どうするんだよ」
お泊まり会の実施が計画された後、家に帰宅してきた俺はすぐに刹那に尋ねる。
「っ!・・・」
と俺が怒っていると勘違いしてしまったのか申し訳なさそうに顔を伏せる刹那。
「あっ、その悪い。別に怒っているわけじゃないから」
俺は下を俯く刹那に怒ってないよという意味を込めて頭を撫でる。
「ほんとに?」と不安げに顔を上げる刹那に「ほんとに」と優しく微笑み笑い返す。
すると刹那はニコリと明るい笑顔を浮かべながら、
「永遠の荷物を全部片付けちゃえばいいんだよ」
と自信満々に言う刹那に、俺は、
「だよな~」
と溜息をつきながら天井を見上げるしかなかった。
翌朝、インターホンが鳴った。俺はインターホンに出る前に改めてリビングを見渡す。
昨日、夜遅くまで時間をかけたかいもあり俺がいる痕跡は全て消すことができただろう。目の前に広がっている物は全て刹那の私物と元から家にあったものだけだ。リビングだけじゃない、外に置いてある自転車も、俺の靴も全て俺の部屋に放り込んである(もちろん綺麗に拭いた)。
そして俺がこのお泊まり会で必要な分だけボストンバッグに衣類なども詰めておき、勉強道具やその他必要な物も全てリュックに詰め込んだ。その上で俺の部屋は物置として進入できないように封鎖した。おかげで俺の部屋は3日間入れなくなってしまったが、お義父さんの部屋を俺と晴生でそして刹那の部屋を刹那と愛華で使えばいいだろう。
一応両親にも許可を取ったから部屋の使用も大丈夫だ。
刹那にインターホンに出てもらい、愛華を向かい入れた。後ろにはいつの間に着いていたのか晴生もついており、家をぐるぐると見渡している。
「いらっしゃい」
「「おじゃましまーす」」
叫びながらリビングに入ると同時に愛華も晴生もリビングを物色し始めた。
そんな簡単にバレるような痕跡は残していないとはいえそんなに探されても困るので2人に制止をかける。
「おいおい、人ん家着いていきなり物色しない。刹那に失礼だぞ」
と睨みつけながら言ったのだが、
「いいでしょ、初めて刹那の家に来たんだからしっかりと目に焼き付けておかないと」
「そうだぞ、永遠の物とか置かれてないかとかもチェックしないとな」
話を聞かずにテレビの裏や机の下などそんなところには隠さないだろっと思うところまで探す2人。それでも一応常識は持ち合わせているのか引き出しは開けることはなかった。
というか晴生は俺にどんなイメージを抱いているんだ、刹那の家に来て最初に探すものが俺の私物って・・・。
「はい、そこまでだよ」
刹那の手によるパンパンと乾いた音がリビングに響き、2人の動きが止まり刹那に注目する。そして笑顔で
「愛華、今回の目的は?」
「課題を終わらせることです」
「晴生くんは?」
「勉強して成績をのばすことです」
「それじゃあ、さっそく机に座ろうか」
「「はい」」
そう言って2人を席に着かせる刹那。先程まで調子に乗りまくっていた2人が嘘みたいに大人しくなっている。
それもそのはずだ。だって今の刹那は笑ってはいるが不気味なオーラがにじみ出ているのだから。俺はまだ標的になっていないのが唯一の救いだった。
「永遠も早く」と促されたので俺も席に着く。座る配置は、隣に晴生、向かい側に刹那と愛華である。
愛華は課題を俺と晴生と刹那はそれぞれの学習を進めていく。
先程までの騒がしい雰囲気は消え去り、シャーペンやボールペンが書かれていく音だけが残る。そして愛華を中心に1人ではわからなくなってしまった問題を4人で考え合うという時間が続いた。
どうなることかと思ったが、本来の目的は遂行できてるようだ。いつもとは違った環境ではあるものの俺も集中して勉強に取り組むことができた。
「うーん、疲れたぁ」
とのびをしながらしゃべり出す愛華。完全に集中が切れてしまったらしい。
俺も時計を確認すると、既に12時を過ぎており、勉強を初めてから3時間が経過していた。
「うん、ちょうどいい時間だし一旦昼飯を挟んで休憩するか」
という俺の提案に他3人も賛成する。
「じゃあ、ちょっと待っててね。昼ご飯を朝のうちに作っておいたから、取ってくるね」
そう言い残し、席を立つ刹那に、
「俺も手伝うよ」
と冷蔵庫に向かう。
2人で冷蔵庫から料理を取りだして戻ってくると、愛華と晴生が机の上を片付けてくれていた。
そして席に座り直し、ラップを外していく。
「おおっ、これが刹那の手料理か、うまそうだな」
と晴生が驚きの声を漏らす。
「こんなにたくさん朝から作ってくれたの?大変じゃなかった?」
と心配する愛華だったが、
「大丈夫、誰かさんとは違って課題は終わってますから」
と胸を張る刹那。
対する愛華はグサッと急所で突かれたかのように机の上に突っ伏している。晴生はそれを見ながらケラケラと笑っている。
「とりあえず早く食べようぜ」
これだといつまで経っても食べ出さないと判断した俺が食べるように促す。
「「「「いただきます」」」」
今日の昼飯はおにぎりに大きな皿に盛られたサラダ、甘い卵焼きにウインナー、唐揚げである。買いに行く時間がもったいないということで朝、俺と刹那で作った。
とはいえ、俺はひたすらおにぎりを握っていただけなのだが、上手く綺麗な形に仕上げることができたので満足のできである。とはいえ炊けたばかりの熱々のご飯を触ってしまい軽く火傷しそうになったが。
皆おいしく食べていき、気づけば皿の上は空っぽになっていた。
「おいしかったあ、こんなにたくさん作ってくれてありがとね、刹那」
と愛華がお礼を告げる。
「ありがとう、だけど永遠も手伝ってくれたから・・・ちゃんと永遠にも・・・・・・・・・・・・・・あっ・・」
余計なことを言ってしまったと口を押さえたが時既に遅し。愛華と晴生がこちらに驚きと疑いの目を向けていた。
背中が冷や汗で止まらないほど焦っているがそれを隠しながら言い訳を用意しようとするのだが頭が真っ白になってしまい何も思いつかない。
「あぁ、ごめんね2人とも。永遠には愛華たちよりも早く来てもらって昼ご飯を作るのを手伝ってもらうようお願いしたんだ」
という刹那の咄嗟の回収に2人はなるほどなと納得してもらえてこの場は凌いだ。
皿を片付けながら刹那と2人で台所に向かう際、小声で他には聞こえないように、
「危ないだろ、感づかれるような発言には気をつけてくれよ。まぁ、上手く回避できたからいいけども」
流しに皿を置き、水に浸けていく。そして持ってきた全ての皿に軽く水を浸けた後、
刹那が水を止めて、隣の俺だけにしか聞こえないであろう声量で、胸の前に手をぎゅっとしながら、
「だって、永遠も頑張ってたということを知ってほしかったんだもん・・・だからつい」
とまさかの自分だけの功績になっていて俺の頑張りを見てくれてないから気に入らなかったという刹那らしい優しさに心が温かくなる。
俺は感無量になり優しく笑いかけて刹那の頭を撫でながら、
「ありがとな、だけど今回は我慢してくれ」
にしても危なかった。愛華達が来てなかったら絶対ハグしてた。
だが、俺はなんとか頭を撫でるだけで踏みとどまれた。こんなにも想ってもらえて愛しさが増さない彼氏がいるだろうか?俺は今すぐにでも抱き締めたい。
そんな溢れる衝動を抑えながらも、刹那の頭を撫で続ける。
「うん」とすごく気持ちよさそうな顔を浮かべる。そんな刹那がかわいいなと撫でていると、
「そんなところでイチャついてないでくれません?」
という声にハッと手を離し、互いに声のした方に目線をやると、ニヤニヤとこちらを見つめてくる愛華と晴生がいたのであった。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします!
「はぁ、面白そうだから来てみたはいいものの・・・ああやってイチャつかれる日々が3日もあるのか」
「そう思うなら帰れ、今すぐ」
「2人の時間を邪魔されたからってそうカッカするな、ハハハっ!」
「そうじゃねえ!」




