61.膝枕・・今度は意識して・・
晴生の案に皆が一気に賛同し、気づけば皆納得しており、後は俺の意思次第になってしまった。
てか!なんで刹那も地味に賛成してるんだよ。よくないだろ部長として。
「というわけで皆賛成しているんだが、お前はどうするんだ?もちろん無理にとは言わないが」
と真剣な眼差しで晴生がこちらを見つめてくる。決してふざけて言っていることではないというのはすぐにわかった。
「その、なんだ・・・部長と副部長がそういう関係なのはまずくないか?俺だって部活には迷惑かけたくないし」
と反論するのだが、
「そこはあまり関係ないだろう。だってお前ら基本真面目だし、部活のことを投げ出してイチャつくなんてことしないだろう。
それに無愛想であるかのように振る舞っているがなんだかんだちゃんと周りのことを見ているし、ちゃんとそれに対応した行動をとれるのは今後にも必要になってくる。
それに見合うほどの信頼性も十分に得ているのは今までの通りだ。というわけで俺は永遠を推薦させてもらう」
最後に『別にイチャついてもらっても支障をきたさない程度なら構わんから』という一言を添えて席に座った。
余計なことを残しやがって。と心の中で毒づいておきながらもこれからどうするか考えた。
なるか、ならないか。正直なことを言うと、ここまで皆の信頼性を獲得していたのは意外だった。
愛華と晴生は同じパートなのでわかったが、他の部員達とは喋り掛けられたらそれに返すだけしかしてこなかったんだけど。自分が思っていたよりも評価が高くてだいぶビビった。
だけど、そこまで皆に言われたならやるしかないだろう。こうすることが部活のため、そして刹那のためになるのならば、
「わかった、やるよ。やらせてほしい」
と頭を下げると、周りからパチパチと拍手された。
その後も役職決めはスムーズに進んでいき、俺の副部長就任や今日決まったことなども顧問や1年生にも納得してもらえた。
頑張ろう。素直にそう思った。
「ふわー、疲れた」
と家に着いた俺はソファにもたれながら言う。
「ふぅー、お疲れだね。永遠副部長としてもこれからもよろしくね」
と隣に座る刹那。
「まず今日は話し合い上手く進んでよかったな。流石刹那だよ」
「ふふっ、ありがとう。永遠のおかげだよ」
と優しく微笑む刹那。
あの後個人練やパート練で部活を終えた後、俺と刹那、晴生と愛華の4人で昼飯を済ませて家に帰ってきた。
休みやデートのことを根掘り葉掘り聞かれて違う意味で疲れた。終始ニヤニヤしやがってあいつら。
俺が晴生に相談していたように刹那も愛華に相談していたんだなと知った。
後はひたすら恥ずかしそうにあわわっと小さく答える刹那がかわいかったということだけだ・・・・いや、すまん当たり前だったな、刹那はかわいい。
今も帰ってきたばかりではあるが、ソファーに隣り合わせに座り、互いの手を重ね合わせながらのんびりと過ごしている。
にしても少し眠いかもしれない。だんだんと重たくなってきた瞼をなんとかこじ開けていようとするのだが、眠気が襲ってきて抵抗しきれない。
顔がウトウトしていたのを刹那が気づいたのか、
「大丈夫、永遠?疲れてる?」
と顔を斜めに傾けながら心配そうな顔をして尋ねてくる。
「うん、今日は色々なことがあったから少し疲れたかも」
と刹那に返し、寝るよと自室に戻ろうとしたとき、俺の頭が引き寄せられてやわらかいものが後頭部に触れた。
「せっ、刹那!?」
いきなりの行動に驚きつつも顔を見上げるとそこには少し頬を赤く染めながら優しい笑顔だけどどこか憂いさが残っている見ていて少し苦しくなる顔だった。
「ごめんね、私が部長として頼りないばかりに永遠に負担を押しつけることになって」
と目を潤わせながら謝ってくる。
そっか、自分の力不足のせいで俺が副部長になってしまったのだと責めているのだろう。
もともと俺はそういう代表者的な役職は就こうなんて考えてなかったしな。そんな俺の気持ちも刹那は把握してたし。
俺はただ、部活や刹那のためになにかできればいいなと思ったからなんだけどな。
だからさ、そんな顔しないでくれよ。
俺は刹那の頬にそっと手を伸ばす。
「俺は大丈夫だ。確かに慣れないことばかりではあったが、俺が純粋に部活や刹那のためにできることならばって。だからけっして刹那のせいとかそういうわけじゃない。俺がやりたいからこうしただけだ」
そう言いながら刹那の頬をすっと撫でる。少し頬が赤くなっているがそのつやつやとした綺麗な肌には何回も見せられても決して飽きることはない。むしろますます愛らしくなる。
そうしていると、だんだん刹那の顔から憂いさが消えて、明るい爽やかな、あどけない笑顔になっていくのを見て安心するとともにますます愛らしく、気持ちが胸いっぱいになって溢れる。
「ありがとう、やっぱり優しいね、永遠は」
とそう言いながら俺の頭をそっと撫でてくる。
俺の頭に細くて小さな指がそっと絡まってきて、くすぐったいと思いながらもどこか気持ちよい。
それに後頭部にはやわらかい感触が・・・・・って!?刹那の太ももじゃないか!?
焦ってばっと起き上がろうとしたのだが、
『急に起き上がらない』と押さえつけられてしまった。
だってこれ膝枕じゃないか?着ている制服のスカートのために直接肌が当たっているのだからかすごく温かくてやわらかい。非常に嬉しいのだが、やはり疲れないのだろうか。
「いいのか?足しんどくないか?」
そう聞くと、
「うん、気にしないで。私も永遠にしてあげたいことをしているだけだから。だからおやすみ永遠」
と優しい笑みを浮かべながら、その言葉に落ち着いた俺は瞼を閉じ刹那に身を預けた。
思えばこれが俺が起きている間では初の膝枕である。恥ずかしかったがそれ以上にすごく安心できて気持ちよく眠れそうだった。今度刹那にもやってあげたいな。
・・・・あっ、そういえば今日の夕飯は焼き魚だったよな。茶碗蒸しとか出てきたら最高だなぁ・・・・
「刹那、おやすみ」
そう言い残して俺は意識を手放した。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします!
膝枕っていいなぁ・・・(泣)




