番外編1.在りし日の誕生日
夏休みの続きの前に過去編を1話だけ。
「永遠!今日は私の家で遊ぶんだからね!ちゃんと覚えてる!?」
小学校のガヤガヤとした昼休みの最中、俺はグラウンドに行ってサッカーをして遊ぼうと教室から駆け出そうとしたとき、刹那に声を掛けられた。
「はいはい、ちゃんと覚えてるから!ということで遊びに行ってくるから!」
「あっ!もう!永遠ってばぁ!」
俺は早くグラウンドに行って遊びたかったので、まだ何か言いたそうな刹那を振り切って廊下に出て行った。
ここ最近ずっと刹那は同じ事を確認ばかりしてくる。ここ一週間は毎朝一緒に登校するときも下校するときも、挙げ句の果てにはこうやって暇な時もずっと言ってきて刹那とはいえ少々うるさい。
にしても、刹那がこの小学校に転校してきてかなり時間が経った。初めはなかなかクラスにもなじめてない様子だったが、元々の刹那の性格の良さもあり、俺がちょっとだけ関わるきっかけをつくってあげただけですぐに皆と仲良くなった。
そして今日、12月4日に至るまで楽しい小学校生活を送っている。
刹那は両親が仕事で忙しいことが多いので、俺の家で宿題を終わらせて夕ご飯まで食べていくことが多い。
しかし今日は珍しく刹那の家で夕ご飯を食べる予定になっているのである。そのことがよほど楽しみらしい。別に食べる場所がいつもと違うだけだというのに。
だが、刹那があまりにも楽しそうにニコニコしてくるので、確認ばかりでくどいと思ってもすぐに浄化されてしまう。
俺は下駄箱で靴に履き替えて友達が待つグラウンドに走る。
「お待たせ!」
「おっ!来たな!早く始めようぜ!」
とボールを持っているやつが声を張り上げて叫び、今日も楽しく皆と遊ぶのだった。
「んじゃあ、またな!」
「バイバイ!」
「はぜろぉー」
「?ほいじゃ!」
といった感じで同じ通学班の挨拶を受けた後それぞれの家に向かって別れて、今日も刹那と一緒に帰る。
今日は部活はない曜日なので早く帰れた。まぁ、部活があっても帰る時間は皆一緒だから帰るメンツはいつも同じだ。
しかしその中でもただ1人毎回去り際に「はぜろぉ!」と言ってくるのが意味がわからない。俺は一種の挨拶表現なのだなと思って返事をしている。
今の季節は冬となり早い帰宅とはいえ既に日は傾いており暗くなり始めている。
「にしても今日さ、昼休みにサッカーをしたときに、思いっきり蹴っ飛ばしたやつがいてボールが学校外に飛んで行っちまったんだよ、ゴリラか!っての」
「あぁあ~、だから5時間目の授業に永遠達は間に合わなかったんだね、私はてっきり授業のこと忘れてサッカーしてるのかと思ってた」
「なっ!?・・・だからお前らはクスクスしてたんだな?教室に戻ってきた時からずっとニヤついてやがって」
「だって面白かったんだもん!先生にも怒られて授業でめっちゃ当てられてたじゃん」
「人の苦労を笑いやがって・・・」
と俺が握りこぶしを作り上に掲げると、刹那は「きゃっ!」とわざとらしく大げさに声を上げて頭を守る。
俺はその上から軽くトンと触る。
「女の子にぶっちゃいけないんだぞぉ」とろくに叩かれてもないくせに頭を抑えて痛がっているふりをしているので、
「痛がってるやつが、そんなニッコニコな顔で言うな」
と俺は刹那の頬をつつく。するといきなり
「へっ!?・・・」といった感じで気の抜けた声を漏らし、静かになってしまった。後なぜか顔も赤い。なんで急に赤くなったのかわからなかった俺は、
「いきなり、どうした?」と刹那に問いかけたのだが、
「なっ、なんでもない!早く帰るよ!」
とだけ言って、俺の手を掴み先頭に立ってグイグイ引っ張っていった。
よくわからなかったが寒いからバカやってないで早く帰ろうという意味だったのだろうか?まぁこれから冬も本番になっていき寒さも日に日に増していっている。こうして夕方に帰るだけでもかなり気温が低いのが体感でもよくわかる。
とはいえ今も無理矢理連れられる俺の右手には刹那の手が強く握られており、その握られている右手だけはとても温かいものだった。
そのまま家に帰ってきたのだが、かくいう俺は刹那の家のまで中に入れさせてもらえずドアの前に座り続けていた。
よくわからないが、刹那曰く「ご飯の準備をするから外で待ってて」だそうだ。だというのに俺の両親はすでに刹那の家にお邪魔してるのになんで俺だけ入れてもらえないんだ。どんどん冷え込んできて俺の体も寒さにさらされており、先程まで温かかった右手もすっかり冷えてしまった。
「早くしてくれ・・・」
と愚痴をこぼしていると、背後でドアの鍵ががちゃりと開く音がした。俺はその音で振り返ったのだが一向に誰かが出てくる様子はない。
俺がなんで誰も来ないんだよ?入って良いのか?と疑問に思っていると、
インターホンから『永遠!入ってきていいよ!リビングまで来て!』と言う刹那の声が聞こえたので、「わかった」とだけ返事をしてドアを開ける。
ところがドアを開けても真っ暗でやけに静かだった。リビングがあるはずの方からは薄暗い赤い光が僅かにこぼれているのがわかる。ここに来いということなのだろう。俺は靴を脱いでリビングへ続く道を歩きリビングの扉を開ける。
「あれは・・・」
俺は驚きの余り体が固まってしまった。なぜなら目の前には白いホイップクリームで覆われた上に赤いイチゴがのっており、つまるところショートケーキの上に10本の火のついたろうそくが立っていたのだ。
ここにいたってようやく俺は理解できた。その瞬間さっきまで凍えるほど冷えていたはずの体がとても温かくなっているのがわかった。
自分の中で心がじーんときて満たされて、言うなればこれを幸せと呼ぶのだろうそんな気持ちを胸に抱きながら、俺は「ふうぅー」と一息でろうそくの火を消した。
その瞬間部屋の明かりがパッと白く明るくなり、まぶしさのあまり目を閉じてしまったが、目を開けると目の前には顔を赤く染めてどこか恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうにそして飛びっ切りの笑顔で白い包装に青いリボンで結ばれたものを腕いっぱいに伸ばして俺の目の前に差し出しながら、
「誕生日、おめでとう!永遠!」
と俺の誕生日を元気に祝ってくれる刹那がいたのであった。
刹那からもらったプレゼントは内側が青く、外側が黒い布で作られた細長い筆箱と、小学生が使うには早すぎるシャーペンが入っていた。
翌日から俺は筆箱をもらったものに変えて、シャーペンは流石に小学校では使えなかったので家で、中学校になってからは学校でも使うようになった。俺が筆箱を変えたのを見るだけで刹那はとても嬉しそうな様子だった。そして今では色はすっかりと落ちてしまっているが今も大切に使っている。
ありがとうな、刹那。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします!
小4の設定のはずなのに、明らかに小4じゃない気がする・・・




