6.ただいま、なんか近いんだけど
「ただいまー」
「はいはい、『おかえり』なんて言ってくれる人はいませんよー」
「別にいいじゃん」
と刹那がムスッとした表情でこちらを見てくる。
「そんな顔してないで、とっととあがるぞー」
靴を脱いで、玄関からリビングへ向かう。
「ふわぁ、疲れた。なんか久しぶりに帰ってきた感がするなぁ」
と俺はソファーに座る。うん、ふかふかで良い座り心地である。
ぐったりしていると刹那が隣に座ってきて、
「何言ってるの?たった1日家を空けてただけだよ」
「・・・」
「?どうかしたの?」
「あっ、いやなんでもない」
・・やばい、いつものことなのにまだドキドキする・・。
刹那はもう落ち着きを取り戻したみたいだし。
てか、これがいつも通りだったんだな、今までそんなに気にしてこなかったけど、めっちゃ近いじゃん!
「・・永遠・・永遠?」
名前が呼ばれ、刹那の方を向く。えっ、顔ちか。
「ぼぉっとしてどうしたの?やっぱり疲れてる?1日寝てたんだし、無理しないでね。」
と刹那が不安そうにこちらを見てくる。
「大丈夫、疲れてないから。それより、そっちこそ大丈夫なのか?1日看病してくれてたみたいだし、座ったまま寝てたから、ちゃんと休めてないんじゃないのか?」
確実に刹那のほうが、精神的にも、肉体的にも疲れているはずだ。
「大丈夫!私は永遠とは違っておじいちゃんじゃないから。あっ、まだ昼ご飯食べてないね、
私作ろっか?」
そう言って立ち上がる刹那。
「なんだよ、俺はちゃんとした高校2年生だぞ。てか、俺が作るよ。順番的にもおれだし。」
「いいの、いいの。私に任せて!」
と俺が立ち上がろうとしたのを押し戻される・・・・?
実際、今は事故とは別の疲労感がたまっているのでありがたいが、やはりすごく申し訳ない。
しかし、刹那は自分でやると言ったら聞かないので、
昼飯はお願いすることにしよう。代わりに今日の夕飯は俺が作ろう。
「じゃあ、昼飯はお願いするかな。その代わり夕飯は俺が作るよ」
「いやいや、夕ご飯も作れるよ」
と言われる。
やはりというか、相変わらず本当に優しいな、刹那は。
いつもそうやって、自分のことを後回しにして、他の人のために動く・・・。
しかし、さすがにそこまで無理をさせるわけにはいかないので、先程の違和感と共にちゃんと伝える。
「だめだ。夕飯は俺が作る。さっき、俺を押し戻した時全然力が入ってなかったぞ。俺のことを気遣ってくれるのはありがたいが、刹那も少しは自分のことを大切にしてくれ。そんな状態で無理されるとこっちがヒヤヒヤでたまらん。それで倒れられたらほんとに心配すんだからな」
「・・・」
返答がない。
「どうした?」
そこで、刹那ははっと気づいた様子
「えっと、その~・・じゃあ、夕ご飯はお願いするね。・・・ありがとう・・」
「ん?」
最後がよく聞こえなかった。
「ううん、なんでもない。じゃあ少し待っててね」
そう言って、なぜかそそくさと台所に向かう。
しかも、なんか顔も赤かった気がする。やはり無理してたのだろうか。
考え直してもう一度刹那の方を向くと、なんだか嬉しそうにしている。まあいっか。
顔を前に向き直し、ソファに座り直すと、眠たくなってきた。
睡魔に抗おうとしたが、抗えずそのまま眠ってしまった。
読んでくださりありがとうございます。
今日は朝に投稿しました。