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56.水族館だ!

 あれから、互いにあーんし合いながら長い昼飯を終えた俺達は少し休憩した後、ショッピングモールを出て少し歩いた先にある海辺の水族館に向かった。中に入ったのは16時辺りかな。


夏休みということもあって人はそれなりにいたが混んでいるという感じではなかった。むしろこれから混んでいくのだろう。この水族館は夜の部があり、そちらのほうが人気である。だから水族館としてはこれからが本番なのだろう。


夜も十分魅力的ではあったが、2人で落ち着いた時間を過ごしたい気持ちが一致し、昼間にした。

プランが逆転したために夕方になってしまったが客は少なかったので助かった。


「にしても、来ない間にだいぶ変わったね」


「そうだな、昔来たときはこんな有名じゃなかったし、規模も小さかったもんな」


そう、俺達は昔ここに家族皆で来たことがあった。もちろん俺の両親が生きているときで刹那の家族とも一緒に。そしてここが皆で最後に訪れた場所である。3年前の中学生に上がる前の春休み、つまり家族が事故に遭うほんの少し前だ。


そんなことを思い返してしまい、気持ちが少し暗くなる。

そんな俺を察知したのか、顔に出ていたのかは知らないが、


「ごめんね、思い出させるようなことを言っちゃって」

と申し訳なさそうに見つめてくる。


「ううん、確かに思い出しちゃったけど、刹那のせいじゃないよ。ここは俺達にとっても大事な思い出の場所だし。それよりも今は楽しもう!」

と湧き出てきた影をかき消すように明るく声をかける。


そんな俺の様子に一瞬憂いの表情を見せたがすぐにニコッと笑って、


「だね!よぉーしたくさん回るよ!ほら」

と言って手を差し出された刹那の手を握り、奥に入っていくのだった。






「見て!これ」


「なんだこれ、地面に埋まってるんだが」

と地面を眺めていると、いきなり砂埃が巻き上がりニョキッと細長い体が姿を現した。


「うお!、なんか出てきた!」


「はは!なにそんな驚いてるの。チンアナゴだよ。シマシマ模様のくりくりお目々でかわいいじゃん」


「へぇ、そんな名前なのか・・・・って!びびってないし!」


「はーい、そうかもねえ」


「そうかもじゃない、そうなの!」


「ふふっ、じゃあ次はこれだよ」

と言われて隣の水槽に目をやると、クラゲがふわふわしてた。


「うわっ!てかクラゲかよ」


「ふふっ、永遠のビビりぃー」

とからかわれる。このぉ~。口元に手を当てながら目を細めてニヤニヤとしている。


そう俺は小さくて奇妙な生物が苦手なのだ。なんか背筋がさゾッとしない?逆に刹那はこういうのが好きでよくからかってくる。


だが、このままからかわれ続けるのは癪だ。もう少しすれば刹那の余裕の表情が崩れるからそんときにやり返してやろう。


とはいえ刹那は水槽をキョロキョロしながら楽しそうに声を漏らしたり、俺と水槽をあっちこっちと笑顔で見てきてこっちも癒やされる気分であります。


苦手なものは苦手だが、こうやって刹那と過ごせて楽しいし、苦手な生き物も少しはマシに見えるかも。


「じゃあ、次これね!」


「うわっ!」

そんなことはないようだ。







「ねえ、ほんとにこの先にいくの?」


「そうだぞ、怖いなら俺が一人で行ってくるけど」


「こっ、怖くないし!てか私を置いてかないでよぉ永遠ぁ」


先程までの刹那とは打って変わりわずかなツンが混じった怯えあまあまモードに入ってしまった。

そう、刹那はとても大きい魚が苦手なのである。本人曰く「食べられちゃう」だそうだ。


かわいくないか?


この角を曲がれば大きな水槽に大きな魚とご対面だ。

「絶対、離さないでね」

と手をギュッと握られる。


「離さないって、ほら行くぞ」

と固まる刹那を連れて行く。


そうして巨大な水槽の前にたどり着く。

「おぉ、やっぱでかいなぁ、刹那も見てみろよ」


俺の背中に隠れる刹那に促す。これもまた幼くてかわいい。


「う、うん。はい、ちょっと見た。これでOK」

と顔をひょっこり出してはすぐに隠れてしまう。


というかさっきから腕にしがみつかれてなんというかそのぉ当たってるんですけど。

俺としては喜ばしいこと限りなしなのだが、怖がらせていることが原因であるため背徳感が凄まじい。

やわらかいなぁと思いつつ、


いつもだったらこの辺でやめるのだが、今日の俺はもう少しだけいじめたくなってしまった。そこで俺は


「刹那、目を瞑ってもいいから隣においで」

と優しく声をかける。


「うん、見なくていいなら」

そう言って俺の隣に来た。刹那の瞳は瞼でぎゅっと固く閉じられている。


よし。後は・・・水槽の中を見渡しながら目標を補足する。ちょうどこちらに近づいてくれてありがたい。

俺は接近してくる魚に合わせて水槽のガラスに刹那の手を押しつけた。


「きゃぁああああ!?」


と悲鳴を上げる刹那。刹那からすると目を開けたらいきなりでかい魚が目の前にあったのだ。


へへっ、さっきまでの仕返しだ!これで少しはビビる俺のきも・・ち・が・・・

と刹那の顔を見たのだが、


「うわぁああああん!」

と声を上げて泣き出してしまった。


やばいやり過ぎた。冷たい周囲の視線を浴びながらも俺は急いで刹那をこの場から引き離して休憩スペースのイスに座らせながら刹那をなだめる。


「ごめん!刹那もう大丈夫だから」


俺は今も肩を震わせてすすり泣く刹那を抱き締めながら右手で背中をさすりながら左手で頭を撫でた。


「もう、大丈夫。怖くないから」


「怖いよぉ、とわぁ。ギュッとしてぇ」


「よしよし」


「ううっ、ぐすん・・・」


とあまあまに懇願する刹那に一瞬戸惑ったが、刹那をなだめるには従うしかないのでそれに従う。

外だから恥ずかしいなこれ。

今回も読んでいただきありがとうございます。

今後もよろしくお願いします!


「なるほどね、刹那はあれが苦手なのね。今後に使えるわ・・・・てかやらかしやがったな」

「永遠のからかうネタゲットぉ!・・・・だな、やらかしたな」

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