54.手をにぎにぎ
「いらっしゃいませー」
という声と共に店内に入り、定員に案内されて俺達は席に着いた。注文やら色々と済ませて店員が立ち去る。
ここは今回の刹那とのデートで俺が行きたいと言ったところだ。ショッピングモールの中においしそうなパスタ屋があったのでここにした。
店の雰囲気も活気あふれるショッピングモールとは打って変わり、落ち着いた雰囲気が出ている。
刹那と一緒にショッピングをして少し遅めの昼食となってしまったが、結果として腹はちゃんと空かせたのでよしとしよう。
「永遠、なんでこの店にしたの?」
「いきなりどうした?」
「いや、あのね。一緒に決めるときに私が永遠に決めさせるようなことを強要したから」
と少し不安そうな顔で尋ねてくる。
先日のことをまだ気に懸けていたようだ。あれに関して言えば俺が確実に悪いんだから気にしなくてもいいのにな。
「パスタ専門店って書いてあったから一度は行ってみたいと思ってな。ちょっとお店のことも調べたら、評価はある程度あったし、価格も高校生でも払える値段だったし。それにこの落ち着いた雰囲気だったら、刹那との時間を大切に過ごせるかなって思った」
と言うとさっきまでの陰る表情が消えて、
「そこまで、考えてくれて嬉しいな」
と笑みをこぼす。
「今度はちゃんと俺も考えるよ。刹那との大切な時間の過ごし方を」
「うん、私も」
俺は両手で机の上に置かれている刹那の片手を優しくそっと包む。
すると、今度はそのまま覆う俺の両手の上に空いているもう片方の手をのせて撫でてくる。
「永遠の手ってちゃんと大きくて、ゴツゴツしているわけじゃないけど男の子の手なんだなって」
そう言いながら、楽しそうに刹那の細い指先が俺の両手をなぞるようにしてきて、なんかすごくくすぐったい。
やめてほしいんだけど、それ以上にやめてほしくなくなる。って、俺は断じてMじゃない。
くうぅ~、なんか悔しいなぁ。こうなったらこっちも仕返しだ!
俺は覆っている刹那の手を指で撫でた。
すると、刹那が肩をびくんとさせて俺の手を撫でるのが止まった。
「刹那の手はすごく綺麗だな。色も白くて、細い指で華奢な手・・」
そう俺に言われて口をパクパクさせながらどんどん顔が赤く染まっていく。刹那が恥ずかしさに耐えきれないのか手を引っ込めようとするのだが、その手を掴み、阻止する。
「だけど、ただ綺麗なだけじゃない、ところどころ肌が荒れているところがあるのも日頃から頑張っている手なんだなって実感する。いつもありがとうな刹那」
「んん~!」
と首をブンブン横に振りながら、手を引っ込めようと奮闘する刹那だが、俺はきっちりとそれを抑えて、刹那の華奢な手をそっと指先で撫でたり、触ったりする。そこまで肉があるわけではないがそれでもフニフニしていて触っていると気持ちよくなってますます触りたくなってしまう。
にしてもさっきから顔をトマトのように真っ赤にしながら恥ずかしさと喜びが混ざったような顔で左右に振り振りする刹那もかわいい。
手を引こうとしているのに、嬉しくて引けないことの葛藤に困惑している様子がますますかわいさを引き立てる。
あまりのかわいさについ、
「かわいいよ」
「ふぁっ!?」
と口に出てしまった。一瞬刹那は固まったが、すぐに刹那の頭の上でプシューと音を立てていた、そんな気がする。
刹那が下を向いて大人しくなってしまったが、俺はしばらく刹那の手を堪能するのであった。
「ふぅー、こんなもんかな」
と十分に堪能できたぞと思い手を離そうとしたのだが、その手ががっちりと掴まれてしまい、今度は刹那の手の指が俺の指との間に絡み込んできたり、俺の手を触ってきたりしてきてそのあまりの勢いに思わず恥ずかしくなりたじろいでしまう。
「仕返し!永遠の手も大好きだから」
いつの間にか顔を上げていた刹那がニヤニヤ顔を浮かべながら、指を絡ませてくる。
「ふふっ、顔が真っ赤だよ永遠。これで形勢逆転だね」
「なっ!」
自覚させられ、ますます鼓動が加速する。
だが、なんとか落ち着かせ(落ち着いてない)、俺も負けじと刹那の手をいじり返した。
「へっ!?・・今は私の番なの!」
「そんなの知るか」
「あうぅ、私だって」
とお互いに手をいじり続ける時間が続いた。
「お客様・・・お持ちしてきたのですが・・・」
「「すみません・・」」
今回も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします!
「早く料理が届いてしまえ!」
「さっきからあっちを見てないで頼むものを決めてくれ」




