53.たどり着くところ
「じゃあ、見せ合いっこしようか!」
「はいはい」
と、やけにテンションが高ぶっている刹那。
たいして俺は若干テンションが低い、というより不安だ。
刹那が気に入ってくれる物を俺が選べたのだろうかと、刹那の反応が楽しみでもあり、不安でもある。
というか不安の方が大きいかもしれない。
「せーの!」
刹那のかけ声を合図にして、互いの選んだコップを見せ合う。
俺が刹那のために選んだコップは、マグカップや植物の葉がプリントされたオレンジ色のコップを選んだ。
なんで、これにしたのかは自分でもよくわからない。あえて一言で片付けるなら直感で選んだ。
刹那のコップを見る。
「えっ・・」
思わず言葉が詰まってしまう。
刹那の選んだコップは、マグカップや植物の葉がプリントされた淡い水色のコップを選んだ。
つまり、俺が選んだコップの色違いである。
「ふふっ」
「ははっ」
とお互い思わずクスクスしてしまう。ここが店内だから笑いをなんとか抑えられているが、家の中だったら声をあげて笑っていたに違いない。
「まさかの色違いのものを選ぶとはな」
「私もまさかここまで揃うとは思ってなかったよ」
「俺もだ。ちなみに刹那はなんでそれにしたんだ?」
と俺が尋ねると、珍しく刹那がうーんと悩ませながら、
「なんでなんだろう、私自身でもよくわかってないんだけどね。売り場に行ってこれを見つけたらなんかこれが目に入って、なんかそれ以外のものは特に気にならなかったからなんだけど」
「えっ・・」
俺がまさか選んだ経緯まで同じだったということに驚いていると、
「ああっ、っごめんね。こんな適当な理由で永遠のことちゃんと考えられてなくて」
何も言わない俺が怒っていると勘違いしたのか、しゅんとしながら申し訳なさそうに謝ってくる。
「違うよ刹那、別に怒っているわけじゃないから」
「・・・ほんと?」
「ああ、ていうか俺が選んだ理由が全く刹那と同じだったことに驚いてたんだ」
「えっ・・」
「俺もただ、なんかこれだけが気になったからこれにしたんだ。俺こそごめんな、ちゃんと刹那のこと考えられていなくて」
と説明と軽く謝ると、
「なーんだ、私達って似たもの同士なんだね」
「そうだな、俺は別に好きな人同士といえども、わざわざ好きなところが似る必要はないと思ってるけど。それでもやっぱり好きな人と好みが合うていうのはやっぱり嬉しいなぁって」
「私も、大事なのはどれだけ互いを想い合えているかだとは思うけど、やっぱり好きな感性が一緒なのは嬉しい」
と言いながら感極まったのか刹那が急に抱きついてきた。
いきなりのことだったが、しっかりと支えて受けとめたのだが、俺は今猛烈に恥ずかしい。
だってここ店内なんですけど、今はまだ人が近くにいる様子はないがこんなの見られたらたまったもんじゃない。
「せっ、刹那!ここ店内だよ。他の人に見られたらまずいって」
「いいの!なんか感極まっちゃって、永遠のことぎゅっとしたくなったの」
そう言って甘えて抱き締めてくる刹那。女の子特有なのだろうか、とてもやわらかくてすごく安心した。そしてそんなかわいい刹那にお願いされては突き放すことなんかできるはずもなく、
「しょうがないな・・もう少しだけだぞ」
「へへっ、ありがとう」
俺も刹那の背中に手を回して抱き寄せる。俺ももうちょっとだけこの時間を堪能することにする。
「ねぇ、ママ!あのふたり、なかがとてもいいんだね。うちのママとパパみたいだね!」
「こらっ、外でそんな恥ずかしいこと言わないの。ほら行くよ」
「はーい!」
!?
そんな話し声が聞こえたので俺達はパッと体を離した。やばい、見られた。めっちゃ恥ずかしい。
顔が熱くなっているのわかる。きっと今頃俺の顔は真っ赤になっていることに違いない。
刹那も顔を伏せている。そのおかげで表情は見えないのだが、髪の間から見える耳が真っ赤なことからおそらく今の俺と同じだろう。
声のした方に目線をやると既に人影すらなかった。しかし先程の会話から見られたのは確実であり、恥ずかしさでいっぱいである。
やばい、穴があったら入りてえー。
ていうかあの家族も仲いいんだなって。パパとママみたいか・・・
って!何を考えてるんだ。俺と刹那はまだ・・・
って!まだってなんでこれからを考えてるんだ!?・・・そりゃあ、できるならなりたいけど・・・
と1人で広がる妄想を止めようとする。
刹那の方を見るとなぜか終始首を左右にブンブンしてた。
「刹那?とりあえずコップを買って、そろそろ昼飯にしよう。確認だけど、刹那はこれでいい?俺は刹那が選んだやつでいいけど」
と尋ねると、
「へっ!まだ、早いんじゃないかな!?」
「はっ・・・?」
と言ったところで刹那がハッと我に返って、慌てた様子で
「いいや!なんでもないない!・・・・そうだね、これ買って、私も満足だよ。お会計済ませたらお昼にしようか!」
「じゃあ、刹那のも一緒に買ってくるね」
と言い刹那の持つコップを回収し、レジに向かうのだが、一つ気になったことがあったので俺はそれを尋ねる。
「刹那?さっきの『何が』早かったんだ?」
「あっいいや、本当に何でもないよ!待ってるからほら早く行ってきて!」
と背中を無理矢理押されてしまった。
まあ気にすることでもないかと結論付け俺と刹那のコップを持ってレジに向かうのであった。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします!
「ここって、どこだっけ?家だったけ?」
「んなわけねぇだろ。店内だけども」




