49.守ること
それから、その後の話を聞いた。志穂さんとそのお腹にいた赤ちゃんは亡くなってしまったこと。
それでも、2人のために警察を続け生きていくことを誓ったことなど、俺達には重すぎた。
「とまぁ、こんな話だ。すまないね暗い話を聞かせてしまって」
と悲しそうな笑顔を浮かべる竜治さん。
刹那は目を赤く腫らすほど涙を流していた。俺は刹那にハンカチを渡して、
「・・・なんで、・・その・話を俺達に・・」
と辛うじて口を動かした。
すると、竜治さんは真剣な瞳でこちらを見つめてくる。
「君たちの目が私達にとても似ていたんだ。互いを大切に想い合い、自分を懸けてでも相手を守りたいというそういう目だ。相手のためならば、自分のことはたやすく傷つけられる・・・そう感じたんだ」
その言葉に思わずハッとなる俺達、お互いに自覚があった。刹那がこれまでやってきたこともそうだし、なによりも俺の能力もそれに当てはまるものだった。
刹那と握っている手がさらに強くなるのを感じた。
「もちろん、その気持ちが悪いとは言わない。むしろこれからもその気持ちを大切にしてほしい。2人ともが幸せになってほしい。だが、相手のために自分を傷つけてでも守るという行為は必ずしもその人を救えるということは限らない。逆にその人の心に深い傷を残すことにもなるかもしれない・・・・。
これが、守りたかった愛する人に守られた1人の男の話だ」
と涙を流しながら、優しく微笑んでくれる竜治さん。そこには、初対面の怖面の印象はなく、人を想う優しい顔があった。
「いえっ、話していただきありがとうございました。俺は自分がどうなってでも刹那には幸せでいてほしかった。だけど、その後の刹那の気持ちまで考えられていませんでした」
「私も永遠には何度も救われて、元気をもらって、たくさん幸せにしてもらいました。だからこそ私も永遠を守りたかった」
と涙ぐみながらも話してくれる刹那。
「今日は本当に話を聞いてくれてありがとう。私は先に失礼させてもらうよ。会計は済ませておくから落ち着いたら店を出てくれ」
と言い席を立ち上がる竜治さん。
「あっ、あの!」
と刹那が声をかける。竜治さんの動きがピタリと止まった。
「それでも、私は、志穂さんは竜治さんに生きて欲しかったんだと思います。だから志穂さんも赤ちゃんの分まで生きて、竜治さんが幸せにこれからを生きてほしいと、きっと志穂さんは今も願っています」
その言葉に目を開く竜治さん。
「私は志穂を守れなかった。それでも・・私は幸せに生きて良いというのか・・」
とさっきよりも涙を流しながらそう竜治さんが尋ねる。
「はい、俺もそう思います。志穂さんは誰よりも竜治さんの幸せを願ってると思います。だからこそ、幸せを掴んで欲しいです」
「そうか・・」
と天井を見上げる竜治さん。その視線の先には天井を越え、空を越えた先にいる志穂さんを見つめている。そんな目だった。
「永遠君、刹那君。本当にありがとう。今日2人に会えてよかった。生きるよ、幸せになろうと思う。志穂が望むように」
その新たな決意に俺達は首をゆっくりと頷く。
「それでは、失礼するよ。君たちの幸せを願っているよ」
そう言って、会計を済ませ店から出て行った。
最後に見せた竜治さんの笑顔は悲しさを残してはいたものの、晴れ渡るような笑顔だった。
そして、2人席に残された俺達は、
「刹那、ごめん。刹那を守れれば俺はどうなってもいいってそう思ってた。だけど、俺が刹那が傷つくのが辛いように、刹那も俺が傷ついてて辛い気持ちになるというのをわかってなかった」
「ううん、それは私も。私も・永遠の気持ち全然考えられて・・・なかっ・・た」
と涙をこぼす刹那。俺は刹那の肩を引き寄せ抱き締めながら頭を撫でる。
「俺は刹那を大切にする。そして自分も大切にする」
「私も」
と俺の胸で涙を流す。
「今、この刹那と過ごす一瞬一瞬をもっと大事にしていこう。だからこれからも一緒にいてくれる?」
「うん、大切にしていこうね!絶対に離さないから、離れないでね」
俺の服を強く掴みながら顔を埋めてくる刹那。俺もぎゅっと抱き締め続けた。
「落ち着くまで、こうしていようか」
「うん、永遠とこうしていれば安心できる」
としばらく互いの存在を確かめ合う2人だった。
次からちゃんとデートが始まります!
そういえば、まだこれデート前でした・・・・。




